ド“クズ”大公はハリボテ王太子に篭絡される

あまやどり

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敬愛賛美

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――王都に在るヴェスペルステーロ大公の邸宅。領主の寝室にて。
 隣で眠るレフィの側から離れ、アルは書斎机の傍にある椅子に腰掛ける。蝋燭の薄明かりが机の上に置かれた登録名簿を照らす。名簿を開き彼の優美な細長い指でパラパラと中を捲る。
 レフィから受け取った登録名簿には知った名前がいくつかあった。しかしアルが気になっていた情報はそこではない。
 ローデリック卿の出資しているギルドでは隣国と高額取引している商品がある。それも特級品。アルが知りたかったのは、それを卿を通して依頼をしだ。
 買い手はオルトマル国シレント座下、若くして在位した隣国の正教会大主教の名前だった。そして、その商品はディオニーゾ王国でしか流通していない天界の転移石であった。

――地上でのみ使用可能にされた一級石だ。一個一〇〇レーノするそれを三ヶ月で金五〇キロ分。

 彼は何のためにそれを定期的に買い取っているのか。アルは隣国との情勢を図るため、次に隣国からの使者が来たら主教について探りを入れようと考えた。

――転移石、彼らはそれを使って一体何をしようとしているのか……頭が冴えないな。珍しく眠い……。

 眠気が襲ってきた辺りで、白い手がナイトガウンの裾のはだけた自分の足に触れているのに気が付いた。視線を上げればそこには王太子がいた。

「トゥリプアルボ=ヴェスペルステーロ大公。まだ寝ていなかったのだな」

 音もなく王太子が目の前に現れ、すぐにこれは夢だと理解した。いつから眠ってしまったのかは定かではないが、彼が普段と同じ声量で話していてもベッドで眠っているレフィが起きないからだ。だが、現実にベッドにはレフィがいて顔をこちらに向けている。
 さらにそう実感したのは、彼に触れることもできれば、自分は思うように体を動かすことが出来たからだ。明晰夢と呼ばれる種類だ。

――明日、殿下の醜聞を造るというのに。これは、

「なんて景気のいい夢だ」
「あなたは私が夢に出てくると吉夢と考えるのだな」

 アルは彼の言葉に違和感を持つ。どうも自分の夢だというのに生々しい。

「ふん、そのような言い回し本人にそっくりだ」
「あなたが願う性格に変るか?」
「……いや、そのままでいろ。あいつの知らぬところで犯してやるのはいい気味だからな」
「そうか」
「そうだ! 夢なら、お前にアルと呼ぶことを許しやる」
「アル……ふふ、夢のようだ。私はあなたをずっとそう呼びたかった」
「ふん。そう求めてくる殿下の姿はいじらしいな」
「……殿下ではなく、ジュ―リと呼べ。アル」
「ハハ、ジューリか。悪くない」

 熱の籠った視線を向けられ、聖人君子のハリボテが崩れる瞬間を垣間見た気がした。ここで彼を犯してもそれは夢なのだから、二度愉しめるというものだと、考えた。アルは人形ジュ―リに一挙一動を糸で操るように命令する。

「裸になって、尻を突き出せ。入れてやる」
「……」
「なんだ。渋るところも現実っぽいな」

 椅子から腰を上げたアルはジュ―リの腰を抱き寄せ、彼のベルトに手をかける。しかしその手は彼の手に制された。

「チッ ヤル気がないのか、本物同様初心なのか」
「アルはそのままでいろ」
「は?」

 ジューリは膝を床につき、アルの下半身を覆う布を捲って露わにしたそれをためらわず口に含んだ。高潔な男を服従させたような高揚感と、彼の温い口内が肉を伝って中心が疼くのを感じる。

「はぁ……」

 ジューリはアルの中心の鈴口から雁のまわりを舐めて鈴口から零れた淫水を垂らさないように器用に全体を口に含む。

「クッ、……ンン」
「……ぴちゃ、ぴちゃ」
「……ふ、」
「ぴちゃ……」

 感度の強いところを執拗に刺激され、蠢く快感が腹の底から湧き上がる。
 しかし、達しそうになった瞬間ジュ―リは中心から口を離して根元を揉み始めた。
 欲望がそそり立つ姿を観察するように横から見つめる。焦れた快楽に気がおかしそうになる。

「はあ、……おい、何してる」
「アルの形を確かめているんです」
「ハハ、愛嬌のある奴だな。そうだ、それは今からお前の穴に埋めてやる肉棒だ」

 ジューリはアルの中心から顔を離し立ち上がって身体に覆いかぶった。彼に押し倒されたアルは後ろの机に背中をつける姿になった。

「なんのつもりだ。上に跨って善がるのが趣味なのか?」
「……言っただろう。まだだ、今じゃない。これは女神が魅せた夢だから」

 夢の中でも信仰深いんだなと思った。

「明日から私は三日三晩神殿に籠り祈りをあげる。遠慮せずいつでもくるがよい。アルの求める身体は神殿そこにあるぞ」

 その声と共にジュ―リの姿は泡のように空に浮かんで消えた。
 目覚めると朝になっていた。
 アルは椅子で眠っていた身体を起こし、少し気怠さを感じた。

――椅子で眠るもんじゃないな。

「アル様。ご支度に参りました」
「入れ」
 オフェレーマが扉を開け入室する。ベッドで眠るレフィの姿を一瞥し、アルに問いかける。
「……レフィ様は起こされますか?」
「いや。俺が家を出るときまでそのままにさせてろ」
「承知致しました」

 オフェレーマは眠るレフィの首元にある赤い宝石のネックレスが外れていないか確かめるように覗き込んだ。頷き、アルの方へ向き直った。

「彼の土地へ馬車で向かわれますか?」
「いや、今日は吉夢を見て清々しい気分だから」

 アルは身体の怠さは残るがそれはしばらくすればおさまるだろうと考えた。

「彼のいる神殿まで飛んでいく」


 ※一レーノ=一〇〇〇円
 金塊五〇キロ=およそ二億円
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