短歌集『虚仮の轍』

凛七星

文字の大きさ
3 / 17

病葉ゆれる (雑誌『抗路』掲載作品を含む)

しおりを挟む



ためらいを見せつつきみの手を取れば
寒三日月のような指して



どちらでもよし両切りのゴロワーズ
勝手にしやがれ燐寸すり寄せ



ひとが好きだけどひとが大嫌い
胸の奥ではぎったんばっこん



清潔と誠実だけでは生きづらい
アレルギーでは息もしづらい



早朝の病棟ぬけて煙草呑む
カテーテルをタールで汚し



いまは住むひとを失くした洋館の
窓の硝子に白き顔あり



やつれ果て夜を渡りゆく恋猫に
たどりつけよと無言の励まし



伝えたいおもいを解いて放せずに
凍夜をにぎりつぶして明ける



二月逝く生ぬるい風いやらしい
生きたくない気をたぶらかすよで



あざやかな最期を見せる落椿 
春の盛りを知ることもなく



この身を縛る重い枷ほどこうと
詠んで夜の深みで喘ぐ



ひまわりの黄色の尖り神経を
刺してゴッホも苛立ったのか



亡きひとの姿をおもい蚊遣火の
煙一筋末をながめる



光る風ひとつ病葉落としけり
ゆきさきどこか気にもしないで



※過去に詠んだ歌から選んだものです。

凛七星(りん しちせい)
京都生まれ。在日朝鮮人三世。
祖父は在日本朝鮮人連盟、在日本朝鮮人総聯合会で中央委員、京都本部長を歴任。父は左派哲学者の立場で1970年代から祖国・朝鮮民主主義人民共和国の主席・金日成崇拝と独裁政治体制を批判し数々の著書を出す。
作者は近年、日本各地の路上にあふれ出た劣悪な差別行動やヘイトスピーチに対するカウンターを起こし活動をしてきた中で、短歌や和歌を詠み始める。
過去に角川全国短歌大賞、全日本短歌大会、NHK全国短歌大会、天神祭献詠短歌大賞、和歌の浦短歌賞、後鳥羽院和歌大賞・短歌大賞、蒲郡俊成短歌大会、古今伝授の里短歌大会などで受賞。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

おめでとう。社会貢献指数が上がりました。

水井伸輔(Mizui Shinsuke)
SF
「正しく」生きれば、どこまでも優しいこの国。 17歳のシュウは、社会貢献指数を高め、平穏な未来を手に入れようとしていた。しかし、システムに疑問を抱く父のランクは最低の「D」。 国家機能維持条項が発令された夜、シュウの端末に現れたのは、父の全権利を支配するための「同意」ボタンだった。 支配か、追放か。指先ひとつで決まる、親子の、そして人間の尊厳の行方。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

サインポールの下で、彼女は髪を切った

S.H.L
青春
長年連れ添った長い髪と、絡みつく過去の自分に別れを告げるため、女性は町の床屋の扉を開けた。華やかな美容院ではなく、男性客ばかりの昔ながらの「タケシ理容室」を選んだのは、半端な変化では満足できなかったから。 腰まであった豊かな黒髪が、ベテラン理容師の手によって、躊躇なく、そして丁寧に刈り上げられていく。ハサミの音、バリカンの振動、床に積もる髪の感触。鏡に映る自分のシルエットがみるみるうちに変わり果てていく様を見つめながら、彼女の心にも劇的な変化が訪れる。 失恋か、転職か、それとも──。具体的な理由は語られないまま、髪が短くなるにつれて剥き出しになっていくのは、髪に隠されていた頭の形だけではない。社会的な役割や、「女性らしさ」という鎧を脱ぎ捨て、ありのままの自分と向き合う過程が、五感を刺激する詳細な描写と内面の吐露と共に描かれる。 髪と共に過去を床に落とし、新しい自分としてサインポールの下から一歩踏み出す女性の、解放と再生の物語。

処理中です...