短歌集『虚仮の轍』

凛七星

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『Early80s 異人の夢、或いは蒼の時代』歌誌月光85~88号連載60首

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連作『Early80s 異人いりびとかこ、或いは蒼の時代』



大統領チョンドゥファン勅令臨時パスポートもどれぬかもと不安のぬかるみ



일본日本から初出国の搭乗に空あわつけし屈託のなさ



アンカレッジのうどんを啜る束の間のトランジットに端白星あり



到着す西ドイツには初夏の風そこもまた분단의음봉分断の陰翳



留学はルートヴィヒの名を掲ぐ威圧の巨影ミュンヘン校



Sind Sie ein Koreaner aus Japan?日本から来たコリアン?」の歴史経緯いきさつは煩わしくて작약이피는芍薬の咲く



、髪、肌…たがう学生らの話わかりえること모르는것わからぬこと



リフレイン 傷あるレコードのごとIch komme aus Kyotoわたしは京都からやって来ました



濃密なカリキュラムにも馴染めずに置き去る時の背작아지는것을小さくなりぬ



講義には出ない初冬の夕暮れの傭兵募る文字に射抜かれ



ぬけぬけとジャーナリズムの学生と騙り帯同されゆくアフリカ



戦場で身を守るのは自身のみに渡されしくろがねの銃



撃鉄に発砲されたあの弾丸たまは灼熱に溶け滅すを願う



少年兵! 一瞬の惑い! 銃口! 撃たれる! 断片となる瞬間とき



四方へとなづき手脚は飛び散ってゼラチン質の眼球は何を見る



辛酸と恐怖に痺れた神経を麻薬と酒が誑かす夜



さらばアフリカ悲劇に満ちた大陸よ蹉跌の味の砂ざらつく



帰還した学生寮を繭にして무위로지내는無為に過ごせり 차가운봄을冷たい春を



図書館で遭難の身は救助され친구が誘いしユングフラウへ



寒村が須賀子を重ね見て詠んだアルプスの山あゝ美しく



暖春はアレッチ氷河と絶巓のまみに潤みを渺茫と生み



雪原の乱反射する陽光はつまびらかに問う
Warum bist du so weit gekommen?なぜここへ?」と



つつがなき日々重くなる鳩尾に連夜ポテトとソーセージの餉



東欧の民主化の波いかほどか아버지의소식이父の便りの격렬한 외침激し裂帛



バルカンの虎と呼ばれし民主化の雄に会いたし아버지 동지의父の同志の



ベルリンの壁は高くて厚すぎて周囲にかどある鋭利なまなこ



休学の届けを出すも計画は驚愕を呼ぶ危険な匂い



乗りこんだバスは日本のツーリスト東欧行きの車内の牧歌



マシンガン手に尖るかおした兵と緑の丘のイミグレーション



困惑のアテンダントにアイコンタクトvorbereitet覚悟はできた陽まさびし



拘束の跡をベッドで確かめて尋問までの長き眈々



革命は裏切られるが宿命か自問自答は苦悶の呪文



ポーランド訛りの問いは二階から目薬をさし月は痩せゆく



スパイとかテロリストとか瀝青の苛烈に歪む幻燈の罪



痕跡は残さぬような拷問は凡庸ゆえの醜さ酷さ



冷えびえと蒼いほむらは覚醒し狂気と恐怖の円舞曲ワルツに踊る



朦朧に血の微笑みはあまねかる悪魔の肝臓レバー食らう奴らの



ランボオの永遠とわの詩よぎる蹌踉の脳裏に時の熟れふつふつと



権謀の暗渠の流れ晦冥に敵も味方も奔のさわだち



この命散らざる理由わけ우리 아버지의わが父の 인텔리전스 インテリジェンス사상과신조思想と信条



救われて治療す身へ帰れとは口にせぬ부모の長距離電話



病室の窓の遠見の瘦身の老女の碧眼かぎろいしず



退学を甘受し旅券の期限見て残日録はパリにて漫ろ



襤褸たる日々を安酒ワインと街並みに浸し赫きに染めし嗜虐を



さもあらば流連の七曜한국인はらから令嬢むすめと出逢う夏のルーヴル



ユトリロの切実の白すでになくラパンアジール窓の人影



たどりゆくモンマルトルの石畳埋まらぬパズルの欠片さがし



淫蕩のあとのmon chériモンシェリ耳を噛み見えない明日を描く口紅



きぬぎぬのセーヌの伽藍さにつらう傴僂くるの悲恋は現にあらぬ



さなきだに恋うたかたと覚えまし白磁の蜾蠃まがなし昨夜きぞ



ムーランド・ギャレットの廻らぬ風車よ時計を進められぬ吾と似て



拉致とゆう疑惑の影は此の身にも迫る気配の街の其処此処



令嬢たおやめの宴ディケムの黄金の甘露に幽か苦みきざせり



いざ進まんDuntonダントンごとくcarrefour十字路を!ギロチンが待つ先であろうと



たんぽぽのサンドウィッチと置手紙당신을彼女を追わずにいたサンヴァンサン



須臾の恋au revoirいざ、さらばパリ蒼然と燈火を飾る綺羅の貴婦人



車窓からソーダ缶のだいオブジェ濡らす銀雨に晩夏の渇く



名を叫び駆け寄る令嬢ひとに背を向けたままで手を振るシャルル・ドゴール



追憶のパリでの別れ鮮やかなプラザ・アテネの赤いファサード



まだかこは突如さわだちノックせず汗ばむ扉こじあけんとす


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