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天界試験編
第28話、眠る芽芽生えるその日まで
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「北条くーん、ちょっと教えてほしいところがあるんだけど」
ふと聞き慣れた名を呼ぶ声が聞こえ視線を向けると北条啓に勉強の教えを乞おうとしているクラスメイトの女生徒の姿があった。
「ええと……」
囲み込む女生徒達の間から一瞬目が合い、迷いを見せている姿を目にすると彩音は小さく息を吐き鞄を肩にかけ教室から出る。
それから間もなく啓の携帯にはメールで『先に帰ってる』と一言だけ送られてくるのだった。
(そうだ。折角だしジュースでも買って)
教室の外、廊下からそうメールを送ると下り階段に向かうがその寸前でふと足を止め、隣にある登る為の階段の上へ視線を向けた。
「…………」
あの日、妙な場所で最初の試験を受けた後、見上げた時視線の先にある階段の上にその姿があった。
しかし今はその先には何もなく、ただ階段が続くだけ。
一度は足を止めたものの僅かに視線を伏せた後下り階段へ戻ると階段を下り昇降口に向かう。そのまま靴に履き替え、飲み物を買って家に帰るとベットに身を放り投げた。
(本当に一瞬の出来事で、まるで夢を見ていたような。まるで幻だったような)
そんな感覚。
(生きる為に戦って、でもそれが私に唯一出来る事なんだって気づいてからそれが唯一の存在価値のように思えるようになった)
痛いのも怖いのも嫌いだけど仕方ないじゃん。それが、それだけが私の中にあった才能なんだから。
『戦って守れば感謝される。私の存在価値が生まれる』
(だから、守護者という使命はその強制力に怖さを感じたりもしたけど私の存在価値をより確かなものにするものだった)
やがて、ベッドに寝転んだまま天井を眺めていた表情がふと変わり
(でも……。今更、戦うこと以外に私の存在価値があるとは思えないけど)
もし、少しでも変われる可能性があるのなら。
その時、ふと何かを感じたかのように身体を起こすと前方から青白い光が雪のようにゆっくりと降りてくることに気づいた。
この日本においた常識的に部屋の中で上から青い光が降ってくるはずもなく、そのまま舞い降りてくる光を見つめているとその輝きは突如強くなり咄嗟に伏せる。
「……っ!」
しばらくすると眩い光が収まっていき、完全に収まって数秒後おそるおそる目を開くと、その先視界に入ったのは視界に真っ白い翼をはためかせ、宙に浮いた人の姿だった。
「…………」
ベッドの上にいた彩音から見ても高い位置に存在し、無重力空間のように足を浮かせている。しかしそんな状況は有り得ない為つまり、目の前の存在は正真正銘身体を浮かせているということになる。
呆然と見上げていると相手もまた無言のままこちらを見つめており、宙に浮き、青いパーカーを身につけ髪はフードを被っていることでよくは見えないものの、その隙間からチラリと青い髪が見え表情を変える。
その瞬間、懐かしいものを見たような感覚に口を僅かに開き、困惑するように問いかけた。
「誰……?」
身につけていた服、頭を隠すフード、そして微かに見える青い髪。
何度見てもその姿や雰囲気はよく知っているものに似ていれど、その中でも重要な本人の姿が違っている。少なくとももっと小さかった、と思っていた所聞こえた声に反応し
『第一声が『誰』とはとんだものだな』
そう発された瞬間目を丸くし見上げると彼もまた少しだけ視線を上げ、それによって見えた黄金色の瞳が真っ直ぐこちらを捉えていた。
声を初めて聞けどやはり知る声とは異なっていて、口を開いたまま唖然と視線を向けていた彩音に対して青年は
「五日ぶりだと言うのに腑抜けた顔をして。まさか、この姿になったからといって俺が誰か分からないとでも言うつもりか?」
姿と声は違えど、その面影は確かに知る姿を残していて
「な……まさか……」
半信半疑で、指を指しながら確かめるように問いかける。
「蒼……真?」
「…………」
青い髪の青年は何も言わないまま黙り込み、そんな様子を見ながら彩音は徐々に確信に近づくような感覚に表情を変えていく。
そして何秒も経った後、再び彼は口を開き
「はぁ。いくらお前が名前を覚えられず忘れがちな人間だとしても、ほんの少し前まで共にいた存在の名まで忘れてしまったのかと少し焦った」
「……! な、な……」
向けていた指が震え、確信すると
「え……っは!?」
衝撃に混乱の声を上げながら、頭上近くに浮かぶ姿に視線を合わせるかのように勢いよく立ち上がり
「なっななななな……!? えっ!? どういうこと!?」
焦りと混乱のあまり、ベッドの上という不安定な場所に立っていたこともあって後ずさりする過程でバランスを崩すと、そのまま後ろに倒れしりもちをつく。
呆れるように小さく息を吐いた彼がフードに手をかけ取り払い露わになった青い髪。その姿はまるで蒼真そのものだった。
しかし目の前の彼は子供の姿ではなく青年の姿をしており
「だってその姿……なんでおっきく……」
「とりあえず、説明するから聞け」
天界試験後、晴れて天使としての称号を与えられ天使となった蒼真。その任命式に臨んでいた蒼真は大天使達から使命を与えられた。
そして、天使という称号を与えられる事は、その意味はそれだけに留まらない。
「天界に住む存在と言えど、お前たち人間のように時の経過と共に成長もするし歳も取る。だがその判別は……人間のように簡単にとはいかない」
人間より、下界の存在より遥かに長い時を存在する事が出来ると言われている神や天使。そして創造や転生によって生まれた天界人は赤子から始まるとは限らないというのだ。
「神によって創造された天使は存在したその時から神を守ったり、使命に貢従事出来るようある程度成長した姿で作られる場合が多い」
そして転生した天界人は更に複雑な条件があり、天界に存在した時の姿にはいくつかの場合による。
「例えば地上での生を終えた齢そのまま天界人として誕生したり、中には容姿さえも似た状態で天界人になる場合もあるらしい」
他には思い出の強い姿を強く引き継いでいたりする為、一見年老いた姿に見える天使でさえその実体はただの思い出補正によるもので天界人としては若者だったりもする。
もちろんその逆も存在はし、しかし確かに天界人もまた下界の存在より遥かに長い寿命を持てど年とともに老いていく存在故一見では老天使なのかそうでないのかは分からない。
「俺は一体どんな条件の元あの姿になったのかは分からんが……つまり、見た目はさほど実力や若さを量る上で当てにはならんということだ」
「それは何となく分かったとしても……蒼真がそんな成長してる理由は?」
「これは……俺が望んだ結果だ」
その声に彩音は反応すると蒼真は表情を変えぬまま語り始める。
「天使の称号を大天使より正式に与えられた場合……ある能力を授けられるんだ。天使の象徴純白の翼を与えられ、それを状況に応じて現したり消したり出来るようになる」
そして、同時に大天使より天使としての力を授かった影響で主に創られたり子供の姿で天使となった天使はその瞬間一定数成長した姿になる事があると言うのだ。
使命を担っていく上で解放後の姿で望む者や敢えて変わらぬ姿を望む者もいる。蒼真は肩を竦め
「一応、あの姿に戻ることも出来るには出来るがまあ戻ることは無いな」
「なっ、何で……!?」
「それは……」
と蒼真は彩音を見ていた目を細めると
「こっちの方が使命を果たす上でやりやすいと思ったからな」
「……意味が分からないよ」
そう彩音が口を開き
「蒼真は天使になったんでしょ? 天界から天使として役目を与えられて……なのになんでまた私の目の前に現れて……!? 役目はどうなったの!?」
「確かに与えられてきた」
「!」
そうキッパリ告げた蒼真に彩音は言葉を止めると僅かな沈黙が流れ、蒼真は目を伏せるとあの時起きたことを思い返した。
天界人を天使として認め、役目を与える儀式が行われる『天使の間』。
そこで蒼真は大天使からこれから果たすべき使命を受けるはずだった。
『無事試練を乗り越えたのね』
その儀式の最中、厳重な扉を抜け現れた一人の天使。
大天使達と言葉を交わしながら隣に歩み寄り、立ち並んだ所で大天使へ視線を上げると心の内の読めない笑みを浮かべながら口を開いた。
『彼の話は風の噂で聞いていたわ。初試験にも関わらずあの堅物な小隊長ローガンを関心させた天界人がいるって』
より強い威圧感を滲ませた大天使によって微動だに表情を変えない蒼真でさえ重圧感に表情を強ばらせていると、ふとピンク髪の天使から発された言葉に唖然とし視線を向ける。
『貴方や選定担当の天使達が彼に相応しい役割についてどう思ったかは分からないけれど、私から提案があるの。彼の望む役割を与えてあげたらどうかしら?』
『な……待ってくれ』
そう名も知らぬ天使に向け蒼真は声を上げると
『俺は希望の役割とか、目指していた使命があるわけではない。大天使様達の与える役割に従うつもりだ』
『あら、でも天使としての役割としてはそうかもしれないけれど、貴方には望みがあるのではなくて?』
『な……』
蒼真が声を上げる中、ピンク髪の天使の言葉に大天使達は反応を示すように蒼真へ視線を向ける。
だがその先で蒼真は唖然としながら視線を僅かに伏せると
『……だとしても、俺は天使だ。目的を達した以上、これ以上の関与は望ましくない』
『……ねえ、私の提案を言ってもいいかしら。彼に下界の監視員として任命することを提案するわ』
そう天使は険しい表情の大天使へ視線を向けると
『彼の契約者だった人間はエリア直々に見定められた、天界にとっても重要な役目を得た人間なの。他の地上の人間とは少し訳が違うわ』
『エリア様直々に見定められた……? まさか、お前が与えられた使命と何か関係しているのか』
そう聞こえる会話に蒼真がピンク髪の天使へ視線を向けると大天使は告げる。
『天使クレシス。お前に与えられた使命は我ら大天使を始めごく一部の者しか知り得ない。だが、温情を持った天使と契約者たる人間を再び引き合わせるのは』
『間違いを犯す可能性もあるから推奨されない、よね。それは私も天使の端くれだもの、よーく知ってるわ?』
『…………』
『今ここで全てを話すのはかなり長くなるけれど、彼女においてはそんな天界人と人間における過大なリスクを考慮する必要は今の所ないの』
『と、言うと?』
彼女の言葉に疑問を投げかける大天使に対して蒼真はその指しているものを何となく読み取り思わず声に上げる。
『待ってくれ。お前がどんな役割を担ってあいつを知ってるのかは知らないが……いつか必ず動き出す日は来るはずだ!』
そう投げかける声にピンク髪の天使から視線を向けられ、尚蒼真は怯むことなく告げる。
『今はまだ光も可能性も見えていない。だがそんな中でもあいつは……微かな希望を見出そうと思い始めている。その可能性を……ずっと、あいつの全てを見てきた俺は希望として信じたい』
『ずっと見てきた、ね……』
『…………』
他の天使とは違う違和感。
大天使のような威圧感や威光のようなものは感じられなくとも、その笑みは掴み所がないように感情として入ったものではなくその本心が読めない。
まるで他の天使とは違う何かが感じられた。
だが、これだけの言葉を受けどやはりピンク髪の天使は笑みを崩さぬまま笑うと
『試験で天使の何たるかは認識しているようだし、そう早々問題を起こすことはないと私が断言するわ』
『……ネオフィール、お前の判断に従う』
『!』
蒼真が大天使へ視線を向けると
『下界の監視員として役目を受けるか否か、他に望むものがあるかどうか答えよ』
『俺は……』
僅かに俯き、グッと拳を握ると意を決したように顔を上げその答えを出した。
「俺は……お前のいるこの下界……いや、この地上界において生物の迷える魂を見守り、それを悪用せんとする存在から魂を守る監視員としてその役目を、使命を与えられた」
「…………」
「今の俺はれっきとした天使だ。そして、試験を終えた今お前との契約も切れ、本来であれば導きの対象時を除いてお前の前に姿を現すことは許されない行為であったが事情が変わった」
そう目を丸くしている彩音へ視線を落とすと
「地上界の監視員を始め地上界にて使命を受けた者のみに与えられる特権……それは、人間との契約だ」
「な……」
「同じく個の持つ能力以上に力を発揮出来たり様々な利点がある。今俺とお前は契約下にはないが、もし構わないのなら……」
そう高度を落としベッド上に座り込んでいた彩音と同じ目線まで近寄り、唖然とした彩音に対して真っ直ぐ真剣な表情である提案を持ちかける。
「俺はまたお前の元でこの使命を全うしたい。だから、俺と再契約……してくれるだろうか」
硬直していた彩音から視線を逸らさず
「これまでと訳が違って俺の全ての仕事にお前が同行する必要も無い。言わばただの繋がりのような契約になるだろうが……いつかお前の出す答えを聞き届けたいんだ」
「…………」
「お前が死ぬその時まで……見守りたい」
そう手が伸ばそうとした時それまで言葉を失っていた彩音が口を開き、その言葉に伸ばしかけていた手がピタリと止まった。
「それ以上近づいたら氷漬けの刑にするよ……!」
ピタリと手を止め、目を丸くすると視線の先の彩音は不服そうにしながらその表情は赤く染まっており、そして鋭い視線を向けたまま指差し
「突然現れたと思えば訳分かんないことばっか言って……!」
「…………」
「信じないんだから! ちっちゃくて可愛くて……」
視線を泳がせ、やがて俯きながら歯を噛み締めると
「あれが最後だって思ったからあんな事言ったのに……! 残念がってた私が馬鹿みたいじゃない! 最後だから思ってた事を言って……!」
「…………」
「これ、どうしてくれるの!? 凄く馬鹿みたい!」
「あの時、これがお前と言葉を交わす最後だとは俺も思っていた」
「……っ」
それでも尚蒼真はいつものように表情を微動だにせずそう答える。
やがて、長く言葉を詰まらせていた彩音はやがて腕を組むとそっぽを向き
「っ……しょ、しょうがないなあっ。しょうがないからもう一度契約者として契約してあげるよ!」
その言葉に、彩音の気付かぬうちで蒼真は微かに笑みを浮かべた。
「おやおや、これは……」
翌日、彩音と沙織が校舎へ登校していく姿を人の見えぬ形で見送っていたハクは、やがてその視線を隣に向ける。
「その様子を見るに、無事合格出来たと言うことなのでしょうね。幾分か見た目は成長したようですが……」
と蒼真の様子を伺うと蒼真は怒りを滲ませてはいれど、かつてのように掴みかかっていくことはなくその反応にハクは感心の声を上げる。
「……ふふ、成長させたのはガワだけでは無いと言うことですか。これは今後が楽しみですねえ」
そう楽しげに笑みを浮かべながら言葉を続けているとやがて蒼真の表情が変わり
「いやはや、私もこう何百年も同じことをするのは飽きてきたので気分を一変させようと試験の監視員をやめたのですが……思わぬ偶然を生み出すものですね」
「……お前、まさか……」
「ええ。この際隠す必要もないのですが、私は元より正式なる『天使』でしてね。貴方の相手をしたローガン共々試験の監視員をしていたと言うわけです」
全ての納得いかない点が一致したかのように蒼真は表情を歪めると
「だからあれほど強大な力を……天界人にしてはバカ強いと思っていたんだ」
「まあ、私が天使と称号を与えられたのなんて五百年以上も前の話ですし、これまでも様々な役目を担ってきましたからねえ」
「……」
「ですがなるほど。つまり貴方がここにいるかつ契約者だった彼女と共に居たと言うことは、貴方の与えられた使命はこの地上界にあるということですか。もしや……私と同じ魂の監視役、とか」
「……」
「おや、もしや当たりです?」
扇子を開き口元に当てながら蒼真を見るも明らかに笑っており
「思いつきのまま行動に移してみた甲斐があったというものです。これはまた退屈しなさそうに過ごせそうですねえ」
それから放課後の帰り道。
「そんなに睨んで俺が一体何をしたと言うんだ」
「何もかもをやらかしてった!」
帰路を歩く彩音と並ぶように地に足をつけて歩く蒼真は、先日から彩音の態度について指摘すると返ってきたのはこれまでも何度も見てきた撒き散らすような声。
「かわいくない!」
「……一体俺に何を求めてるんだお前は。というより何故今とあの時でこうも態度が違うんだ?」
とふてくされたようにそっぽを向く彩音を疑問に思いながら見ていた蒼真はその視線を帰路へ戻し再び口を開いた。
「……何にせよ、俺もお前も存在は違えど与えられた使命は同じ。この世界とその命を守ること」
「…………」
「俺は天の存在である以上、如何なる理由があれ神や大天使の許可無しに導くべき対象である存在に独断で裁きを下すことは出来ない」
故に似ていれどお前の使命の中で俺の出来ることはほぼ皆無に等しい。
だが、と蒼真は顔を上げ彩音も聞こえてきた声に視線を向けると
「だが、危険に晒されたお前を助ける事くらいは出来る」
「……ふんっ」
再び視線を逸らし腕を組みながら
「そんな事されなくても私は負けたりしないし」
「まさか、蒼真くんと彩音がまたタッグを組むなんてねえ。しかも、ハクと同じこの世界の監視員になるなんて」
同時刻、帰路を進みながらそう呟く沙織を見てハクは口を開き
「沙織、何だか楽しそうですね」
「ハクの方こそ」
と互いに視線を交わし、沙織は笑みを浮かべると視線を戻し
「私みたいな変わり者はそうそう近くにはいないと思ってたけど……ここまで縁があるとこれは期待せざるを得ないよ」
ふと聞き慣れた名を呼ぶ声が聞こえ視線を向けると北条啓に勉強の教えを乞おうとしているクラスメイトの女生徒の姿があった。
「ええと……」
囲み込む女生徒達の間から一瞬目が合い、迷いを見せている姿を目にすると彩音は小さく息を吐き鞄を肩にかけ教室から出る。
それから間もなく啓の携帯にはメールで『先に帰ってる』と一言だけ送られてくるのだった。
(そうだ。折角だしジュースでも買って)
教室の外、廊下からそうメールを送ると下り階段に向かうがその寸前でふと足を止め、隣にある登る為の階段の上へ視線を向けた。
「…………」
あの日、妙な場所で最初の試験を受けた後、見上げた時視線の先にある階段の上にその姿があった。
しかし今はその先には何もなく、ただ階段が続くだけ。
一度は足を止めたものの僅かに視線を伏せた後下り階段へ戻ると階段を下り昇降口に向かう。そのまま靴に履き替え、飲み物を買って家に帰るとベットに身を放り投げた。
(本当に一瞬の出来事で、まるで夢を見ていたような。まるで幻だったような)
そんな感覚。
(生きる為に戦って、でもそれが私に唯一出来る事なんだって気づいてからそれが唯一の存在価値のように思えるようになった)
痛いのも怖いのも嫌いだけど仕方ないじゃん。それが、それだけが私の中にあった才能なんだから。
『戦って守れば感謝される。私の存在価値が生まれる』
(だから、守護者という使命はその強制力に怖さを感じたりもしたけど私の存在価値をより確かなものにするものだった)
やがて、ベッドに寝転んだまま天井を眺めていた表情がふと変わり
(でも……。今更、戦うこと以外に私の存在価値があるとは思えないけど)
もし、少しでも変われる可能性があるのなら。
その時、ふと何かを感じたかのように身体を起こすと前方から青白い光が雪のようにゆっくりと降りてくることに気づいた。
この日本においた常識的に部屋の中で上から青い光が降ってくるはずもなく、そのまま舞い降りてくる光を見つめているとその輝きは突如強くなり咄嗟に伏せる。
「……っ!」
しばらくすると眩い光が収まっていき、完全に収まって数秒後おそるおそる目を開くと、その先視界に入ったのは視界に真っ白い翼をはためかせ、宙に浮いた人の姿だった。
「…………」
ベッドの上にいた彩音から見ても高い位置に存在し、無重力空間のように足を浮かせている。しかしそんな状況は有り得ない為つまり、目の前の存在は正真正銘身体を浮かせているということになる。
呆然と見上げていると相手もまた無言のままこちらを見つめており、宙に浮き、青いパーカーを身につけ髪はフードを被っていることでよくは見えないものの、その隙間からチラリと青い髪が見え表情を変える。
その瞬間、懐かしいものを見たような感覚に口を僅かに開き、困惑するように問いかけた。
「誰……?」
身につけていた服、頭を隠すフード、そして微かに見える青い髪。
何度見てもその姿や雰囲気はよく知っているものに似ていれど、その中でも重要な本人の姿が違っている。少なくとももっと小さかった、と思っていた所聞こえた声に反応し
『第一声が『誰』とはとんだものだな』
そう発された瞬間目を丸くし見上げると彼もまた少しだけ視線を上げ、それによって見えた黄金色の瞳が真っ直ぐこちらを捉えていた。
声を初めて聞けどやはり知る声とは異なっていて、口を開いたまま唖然と視線を向けていた彩音に対して青年は
「五日ぶりだと言うのに腑抜けた顔をして。まさか、この姿になったからといって俺が誰か分からないとでも言うつもりか?」
姿と声は違えど、その面影は確かに知る姿を残していて
「な……まさか……」
半信半疑で、指を指しながら確かめるように問いかける。
「蒼……真?」
「…………」
青い髪の青年は何も言わないまま黙り込み、そんな様子を見ながら彩音は徐々に確信に近づくような感覚に表情を変えていく。
そして何秒も経った後、再び彼は口を開き
「はぁ。いくらお前が名前を覚えられず忘れがちな人間だとしても、ほんの少し前まで共にいた存在の名まで忘れてしまったのかと少し焦った」
「……! な、な……」
向けていた指が震え、確信すると
「え……っは!?」
衝撃に混乱の声を上げながら、頭上近くに浮かぶ姿に視線を合わせるかのように勢いよく立ち上がり
「なっななななな……!? えっ!? どういうこと!?」
焦りと混乱のあまり、ベッドの上という不安定な場所に立っていたこともあって後ずさりする過程でバランスを崩すと、そのまま後ろに倒れしりもちをつく。
呆れるように小さく息を吐いた彼がフードに手をかけ取り払い露わになった青い髪。その姿はまるで蒼真そのものだった。
しかし目の前の彼は子供の姿ではなく青年の姿をしており
「だってその姿……なんでおっきく……」
「とりあえず、説明するから聞け」
天界試験後、晴れて天使としての称号を与えられ天使となった蒼真。その任命式に臨んでいた蒼真は大天使達から使命を与えられた。
そして、天使という称号を与えられる事は、その意味はそれだけに留まらない。
「天界に住む存在と言えど、お前たち人間のように時の経過と共に成長もするし歳も取る。だがその判別は……人間のように簡単にとはいかない」
人間より、下界の存在より遥かに長い時を存在する事が出来ると言われている神や天使。そして創造や転生によって生まれた天界人は赤子から始まるとは限らないというのだ。
「神によって創造された天使は存在したその時から神を守ったり、使命に貢従事出来るようある程度成長した姿で作られる場合が多い」
そして転生した天界人は更に複雑な条件があり、天界に存在した時の姿にはいくつかの場合による。
「例えば地上での生を終えた齢そのまま天界人として誕生したり、中には容姿さえも似た状態で天界人になる場合もあるらしい」
他には思い出の強い姿を強く引き継いでいたりする為、一見年老いた姿に見える天使でさえその実体はただの思い出補正によるもので天界人としては若者だったりもする。
もちろんその逆も存在はし、しかし確かに天界人もまた下界の存在より遥かに長い寿命を持てど年とともに老いていく存在故一見では老天使なのかそうでないのかは分からない。
「俺は一体どんな条件の元あの姿になったのかは分からんが……つまり、見た目はさほど実力や若さを量る上で当てにはならんということだ」
「それは何となく分かったとしても……蒼真がそんな成長してる理由は?」
「これは……俺が望んだ結果だ」
その声に彩音は反応すると蒼真は表情を変えぬまま語り始める。
「天使の称号を大天使より正式に与えられた場合……ある能力を授けられるんだ。天使の象徴純白の翼を与えられ、それを状況に応じて現したり消したり出来るようになる」
そして、同時に大天使より天使としての力を授かった影響で主に創られたり子供の姿で天使となった天使はその瞬間一定数成長した姿になる事があると言うのだ。
使命を担っていく上で解放後の姿で望む者や敢えて変わらぬ姿を望む者もいる。蒼真は肩を竦め
「一応、あの姿に戻ることも出来るには出来るがまあ戻ることは無いな」
「なっ、何で……!?」
「それは……」
と蒼真は彩音を見ていた目を細めると
「こっちの方が使命を果たす上でやりやすいと思ったからな」
「……意味が分からないよ」
そう彩音が口を開き
「蒼真は天使になったんでしょ? 天界から天使として役目を与えられて……なのになんでまた私の目の前に現れて……!? 役目はどうなったの!?」
「確かに与えられてきた」
「!」
そうキッパリ告げた蒼真に彩音は言葉を止めると僅かな沈黙が流れ、蒼真は目を伏せるとあの時起きたことを思い返した。
天界人を天使として認め、役目を与える儀式が行われる『天使の間』。
そこで蒼真は大天使からこれから果たすべき使命を受けるはずだった。
『無事試練を乗り越えたのね』
その儀式の最中、厳重な扉を抜け現れた一人の天使。
大天使達と言葉を交わしながら隣に歩み寄り、立ち並んだ所で大天使へ視線を上げると心の内の読めない笑みを浮かべながら口を開いた。
『彼の話は風の噂で聞いていたわ。初試験にも関わらずあの堅物な小隊長ローガンを関心させた天界人がいるって』
より強い威圧感を滲ませた大天使によって微動だに表情を変えない蒼真でさえ重圧感に表情を強ばらせていると、ふとピンク髪の天使から発された言葉に唖然とし視線を向ける。
『貴方や選定担当の天使達が彼に相応しい役割についてどう思ったかは分からないけれど、私から提案があるの。彼の望む役割を与えてあげたらどうかしら?』
『な……待ってくれ』
そう名も知らぬ天使に向け蒼真は声を上げると
『俺は希望の役割とか、目指していた使命があるわけではない。大天使様達の与える役割に従うつもりだ』
『あら、でも天使としての役割としてはそうかもしれないけれど、貴方には望みがあるのではなくて?』
『な……』
蒼真が声を上げる中、ピンク髪の天使の言葉に大天使達は反応を示すように蒼真へ視線を向ける。
だがその先で蒼真は唖然としながら視線を僅かに伏せると
『……だとしても、俺は天使だ。目的を達した以上、これ以上の関与は望ましくない』
『……ねえ、私の提案を言ってもいいかしら。彼に下界の監視員として任命することを提案するわ』
そう天使は険しい表情の大天使へ視線を向けると
『彼の契約者だった人間はエリア直々に見定められた、天界にとっても重要な役目を得た人間なの。他の地上の人間とは少し訳が違うわ』
『エリア様直々に見定められた……? まさか、お前が与えられた使命と何か関係しているのか』
そう聞こえる会話に蒼真がピンク髪の天使へ視線を向けると大天使は告げる。
『天使クレシス。お前に与えられた使命は我ら大天使を始めごく一部の者しか知り得ない。だが、温情を持った天使と契約者たる人間を再び引き合わせるのは』
『間違いを犯す可能性もあるから推奨されない、よね。それは私も天使の端くれだもの、よーく知ってるわ?』
『…………』
『今ここで全てを話すのはかなり長くなるけれど、彼女においてはそんな天界人と人間における過大なリスクを考慮する必要は今の所ないの』
『と、言うと?』
彼女の言葉に疑問を投げかける大天使に対して蒼真はその指しているものを何となく読み取り思わず声に上げる。
『待ってくれ。お前がどんな役割を担ってあいつを知ってるのかは知らないが……いつか必ず動き出す日は来るはずだ!』
そう投げかける声にピンク髪の天使から視線を向けられ、尚蒼真は怯むことなく告げる。
『今はまだ光も可能性も見えていない。だがそんな中でもあいつは……微かな希望を見出そうと思い始めている。その可能性を……ずっと、あいつの全てを見てきた俺は希望として信じたい』
『ずっと見てきた、ね……』
『…………』
他の天使とは違う違和感。
大天使のような威圧感や威光のようなものは感じられなくとも、その笑みは掴み所がないように感情として入ったものではなくその本心が読めない。
まるで他の天使とは違う何かが感じられた。
だが、これだけの言葉を受けどやはりピンク髪の天使は笑みを崩さぬまま笑うと
『試験で天使の何たるかは認識しているようだし、そう早々問題を起こすことはないと私が断言するわ』
『……ネオフィール、お前の判断に従う』
『!』
蒼真が大天使へ視線を向けると
『下界の監視員として役目を受けるか否か、他に望むものがあるかどうか答えよ』
『俺は……』
僅かに俯き、グッと拳を握ると意を決したように顔を上げその答えを出した。
「俺は……お前のいるこの下界……いや、この地上界において生物の迷える魂を見守り、それを悪用せんとする存在から魂を守る監視員としてその役目を、使命を与えられた」
「…………」
「今の俺はれっきとした天使だ。そして、試験を終えた今お前との契約も切れ、本来であれば導きの対象時を除いてお前の前に姿を現すことは許されない行為であったが事情が変わった」
そう目を丸くしている彩音へ視線を落とすと
「地上界の監視員を始め地上界にて使命を受けた者のみに与えられる特権……それは、人間との契約だ」
「な……」
「同じく個の持つ能力以上に力を発揮出来たり様々な利点がある。今俺とお前は契約下にはないが、もし構わないのなら……」
そう高度を落としベッド上に座り込んでいた彩音と同じ目線まで近寄り、唖然とした彩音に対して真っ直ぐ真剣な表情である提案を持ちかける。
「俺はまたお前の元でこの使命を全うしたい。だから、俺と再契約……してくれるだろうか」
硬直していた彩音から視線を逸らさず
「これまでと訳が違って俺の全ての仕事にお前が同行する必要も無い。言わばただの繋がりのような契約になるだろうが……いつかお前の出す答えを聞き届けたいんだ」
「…………」
「お前が死ぬその時まで……見守りたい」
そう手が伸ばそうとした時それまで言葉を失っていた彩音が口を開き、その言葉に伸ばしかけていた手がピタリと止まった。
「それ以上近づいたら氷漬けの刑にするよ……!」
ピタリと手を止め、目を丸くすると視線の先の彩音は不服そうにしながらその表情は赤く染まっており、そして鋭い視線を向けたまま指差し
「突然現れたと思えば訳分かんないことばっか言って……!」
「…………」
「信じないんだから! ちっちゃくて可愛くて……」
視線を泳がせ、やがて俯きながら歯を噛み締めると
「あれが最後だって思ったからあんな事言ったのに……! 残念がってた私が馬鹿みたいじゃない! 最後だから思ってた事を言って……!」
「…………」
「これ、どうしてくれるの!? 凄く馬鹿みたい!」
「あの時、これがお前と言葉を交わす最後だとは俺も思っていた」
「……っ」
それでも尚蒼真はいつものように表情を微動だにせずそう答える。
やがて、長く言葉を詰まらせていた彩音はやがて腕を組むとそっぽを向き
「っ……しょ、しょうがないなあっ。しょうがないからもう一度契約者として契約してあげるよ!」
その言葉に、彩音の気付かぬうちで蒼真は微かに笑みを浮かべた。
「おやおや、これは……」
翌日、彩音と沙織が校舎へ登校していく姿を人の見えぬ形で見送っていたハクは、やがてその視線を隣に向ける。
「その様子を見るに、無事合格出来たと言うことなのでしょうね。幾分か見た目は成長したようですが……」
と蒼真の様子を伺うと蒼真は怒りを滲ませてはいれど、かつてのように掴みかかっていくことはなくその反応にハクは感心の声を上げる。
「……ふふ、成長させたのはガワだけでは無いと言うことですか。これは今後が楽しみですねえ」
そう楽しげに笑みを浮かべながら言葉を続けているとやがて蒼真の表情が変わり
「いやはや、私もこう何百年も同じことをするのは飽きてきたので気分を一変させようと試験の監視員をやめたのですが……思わぬ偶然を生み出すものですね」
「……お前、まさか……」
「ええ。この際隠す必要もないのですが、私は元より正式なる『天使』でしてね。貴方の相手をしたローガン共々試験の監視員をしていたと言うわけです」
全ての納得いかない点が一致したかのように蒼真は表情を歪めると
「だからあれほど強大な力を……天界人にしてはバカ強いと思っていたんだ」
「まあ、私が天使と称号を与えられたのなんて五百年以上も前の話ですし、これまでも様々な役目を担ってきましたからねえ」
「……」
「ですがなるほど。つまり貴方がここにいるかつ契約者だった彼女と共に居たと言うことは、貴方の与えられた使命はこの地上界にあるということですか。もしや……私と同じ魂の監視役、とか」
「……」
「おや、もしや当たりです?」
扇子を開き口元に当てながら蒼真を見るも明らかに笑っており
「思いつきのまま行動に移してみた甲斐があったというものです。これはまた退屈しなさそうに過ごせそうですねえ」
それから放課後の帰り道。
「そんなに睨んで俺が一体何をしたと言うんだ」
「何もかもをやらかしてった!」
帰路を歩く彩音と並ぶように地に足をつけて歩く蒼真は、先日から彩音の態度について指摘すると返ってきたのはこれまでも何度も見てきた撒き散らすような声。
「かわいくない!」
「……一体俺に何を求めてるんだお前は。というより何故今とあの時でこうも態度が違うんだ?」
とふてくされたようにそっぽを向く彩音を疑問に思いながら見ていた蒼真はその視線を帰路へ戻し再び口を開いた。
「……何にせよ、俺もお前も存在は違えど与えられた使命は同じ。この世界とその命を守ること」
「…………」
「俺は天の存在である以上、如何なる理由があれ神や大天使の許可無しに導くべき対象である存在に独断で裁きを下すことは出来ない」
故に似ていれどお前の使命の中で俺の出来ることはほぼ皆無に等しい。
だが、と蒼真は顔を上げ彩音も聞こえてきた声に視線を向けると
「だが、危険に晒されたお前を助ける事くらいは出来る」
「……ふんっ」
再び視線を逸らし腕を組みながら
「そんな事されなくても私は負けたりしないし」
「まさか、蒼真くんと彩音がまたタッグを組むなんてねえ。しかも、ハクと同じこの世界の監視員になるなんて」
同時刻、帰路を進みながらそう呟く沙織を見てハクは口を開き
「沙織、何だか楽しそうですね」
「ハクの方こそ」
と互いに視線を交わし、沙織は笑みを浮かべると視線を戻し
「私みたいな変わり者はそうそう近くにはいないと思ってたけど……ここまで縁があるとこれは期待せざるを得ないよ」
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