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夢追い編
第36話、輝きへの思い
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「貴方の仰る通り、母も父も演奏家で、私も母と同じヴァイオリニストになるべく物心つく前からレッスンを受けていました」
それは特別嫌だと思ったりもせず、この家に生まれたのだからそういうものだと日々レッスンに励んでいた。
そんな彼女がアイドルという存在に出会ったのは中学生の頃。
「中学生の頃、その頃私は毎日送迎され通っていたのですがそのある日のこと。帰りの車で信号待ちをしていた時、ふと街頭スクリーンから聞こえた音に視線を向けたのです」
その街頭スクリーンにはあるアイドルグループの映像が映っていて、一家の教育上クラシックか声楽しか聞いた事の無かった紫音にとってそれは衝撃だった。
肌を露出した衣装を身に纏いながらライトの下歌いながら踊っていて、アイドルという存在自体知らなかった紫音にとってその第一印象は異様な人達だった。
「あんな上品とは言えない衣装で歌って踊る姿に言葉を失う反面、楽しそうに歌う彼女達と……そんな彼女達の周りで輝く無数の光に心を奪われたのです」
間奏に行われる掛け合いによる会場との一体感は今まで経験してきたクラシックにはない熱狂的な空間を生み出し、音楽や声楽による演奏会とは違っていて。
披露する者も、それを聴く者と共に一つの『ステージ』を作っているあの感覚に強く胸の奥が打ち震えた。
それは、彩音や多くの人が感じるようなキラキラした空間だと彼女も感じ
「あんな衝撃は今まで受けたことがなく、私も同じように輝きを感じたい。私の歌を聞いてくださる方々と共に舞台を作り上げたい……と強く思ったのです」
「それでアイドルになろうと……?」
彼女から夢を追うきっかけを聞いた彩音が問いかけると紫音は静かに目を伏せ
「両親には当然反対され、説得の末この学園に通うことを許して頂きこうして通っているものの……力不足を痛感するばかりですね」
そう話していく彼女に対して彩音は目を伏せ
(クラシック、ヴァイオリン、お嬢様、アイドル、熱意……夢)
そうスマートフォンのメモ帳アプリに単語を打ち込んでいると聞こえてきた声に彩音は視線を向けた。
「貴方の歌、もう一度お聞かせ頂けませんか」
「えっ!?」
思わず声に出て彼女を見ると彼女はいつの間にか立ち上がっており
「何なら貴方が作られたという別の曲でも」
「えっあ、いや……。CDも渡しておいて何だけど本当お嬢様が聞くような曲じゃないのもあるから」
「今の私には一般の趣味嗜好、そのものの知識が足りなさ過ぎるのです。お嬢様らしくないというのなら尚更、私が知らなくてはならない世界でもあります」
「…………」
「ですが、単純に私が……貴方の歌を聞きたいのです」
この人は、本心をそのまま口にしているだけ。
嘘偽りのない褒め言葉は嬉しさや驚きよりも先に何故か恐怖を感じていた。
それでも彼女のその言葉の意味を考えると彩音は立ち上がり、それに気づいた紫音が視線を向けると
「作った歌はいつも誰に聞かせるでもなく一人で歌ってた」
だからこそ、褒められた事が凄く嬉しかった。
彩音は自室で鼻歌を歌っていた。
そしてそれは途中で止まると紙へペンを走らせる。
そして、それから僅か三日後、彩音からある連絡を受け取った紫音は正門で待ち合わせ現れた彩音の姿に表情を変えた。
「…………」
間もなく、渡した歌詞を見つめながら集中するようイヤホンから流れる音を聞く姿に彩音は緊張した様子で紫音が聞き終わるのを待っていた。
やがて、彼女の視線が上がり
「どう……?」
「とても、素敵な曲です」
そう残響に浸りながら紫音は告げ
「それでいて不思議な楽曲……。全体的には明るくポップな曲調のはずなのに、バラードのような儚さを感じて……」
「……」
「まさか、こんな無理難題を押し付けたにも関わらず本当に作ってきて下さるなんて……。本当に、感謝します」
その言葉に緊張するよう全身に力を入れていた彩音の表情が緩み、それを見ながら紫音もまた微笑んでいた。
彩音はひとまず安心しながら息を吐くと
「今まで作った曲の中で一番考えたと思うよ。だって今までは浮かんだものを形にした自分の為だけに作ってきたんだから」
けどこれは自分じゃなく彼女の為の歌。
「プロに比べたら素人同然の曲だけど……出来るだけの事は全部やった」
そして、彩音は一呼吸置くと再び口を開き
「……実はこれ、白桜律さんをイメージした曲なんだ」
「私を……?」
そう聞いた紫音は目を丸くし曲名を見ると同時に歌詞カードに目線を落とす。
「私は業界やアイドルの為の曲作りとしては何も知らないから色々考えて、折角誰かの為に作るのなら白桜葎さんの雰囲気そのものを伝えられる曲にしたかったんだ」
単純に思い浮かべたのはバラードだけど……と小さく笑いながら
「だって美人で綺麗で、お嬢様だって言われてもアイドルを目指してるって言われても納得出来ちゃう見た目をしていて」
でも、と彩音は紫音の持つ歌詞カードに視線を向けると語っていく言葉を追うように紫音も歌詞へ目を向け
「でも、色んな話を聞いて、この世界を知って『綺麗』なだけじゃないって思ったんだ」
確かにこの曲を初めて聞いた時、クラシック音楽のような優雅さと美しさがありながらその歌詞と音楽にはどこか『力強さ』も感じられた。
それが彼女が不思議な楽曲と言った理由でもある。
そこに彩音の声が聞こえ
「お嬢様だけどアイドルを目指していて、それだけ白桜律さんにとってアイドルは『夢』で」
不慣れな世界に飛び込んで、見知らぬ周囲との差に戸惑いながらも努力しながら追い続け彼女には夢を叶える為にかける強い情熱がある。
「だから前奏は綺麗をイメージさせるように入って、Bメロからサビに近づくにつれ力強さが増して……サビでその力強さを表してるつもり」
「……」
「サビはこの道に進んだ覚悟を……って今まで作った曲にも思いとかイメージはあるけど、それを誰かに説明することなんてないから誰かに曲に込めた意味とか解説するの凄く恥ずかしいなっ」
「私をイメージした、私だけの曲……」
紫音は歌詞カードを胸の前に抱え、彩音はそんな彼女を呆然と見ると
「この曲と歌詞にはそんな想いが込められているのですね。私も……共感できる所が沢山あります」
まるで宝物を大切にするような光景に彩音は呆然としたまま見ていると、やがて続けて彼女から発せられた言葉に表情を変え
「本当にありがとうございます。好みを知りたいと貴方から頂いたCDもどれも素敵な曲ばかりで……。……ここからは、私の努力次第ですわね」
と紫音は力強い目を彩音に向け、やがて微笑むと
「……ですから、神月さん。私の事は『紫音』と呼んで下さいませんか」
そんな切り出しに目を丸くする彩音に彼女は微笑んだまま
「貴方は私の曲を作ってくれただけでなく、私の事を知っても尚変わらぬ態度で接してくれた。私は……貴方とお友達になりたいのです」
「えっ、友達……?」
「違う学校で、目指すものが違ったとしても……私の夢を笑わず真剣に向き合ってくれた」
やがて彼女は胸に手を当てながら視線を伏せ
「ここの皆さんとどこか壁が出来てしまうのも、身分や育ってきた環境が違うのだから仕方のないことなのだとどこか思っていたのです」
「…………」
「ですが、貴方とお話して気づいたのです。努力するのは夢だけでなく他も同じで……私が皆さんの事を知ろうとすれば、きっと誤解も解けると思うのです」
夢と同じで自分から動き出さなければ何も変わらない。
そう彼女は意を決したように語り、そんか彼女を見て彩音は口は開いたまま音が消えると口を閉じ黙り込んだ。
しかしやがて下がっていた口角が上に向くと
「そういう所が凄いと思うんだよなあ」
「……?」
視線を向けられ、彩音は頬杖をつきながら笑みを浮かべるとその手を離し
「お嬢様だからとか、一般人だからとか、本当は関係ないのかもねって思っただけ。私は……そんな紫音を応援したいって思ってるよ」
「……! わ、私も!」
と目を丸くした紫音が前のめりになると
「私も彩音とお呼びしてよろしいですか……!?」
「……もちろんだよ」
その頃、廊下を歩いていた藤咲鳴海は校舎の外が騒がしい事に気づき窓から外を見ると正門前の通路に生徒達が集まっている光景が目に入った。
「あれは……?」
なぜ集まっているのか、その理由を探るよう当たりを見渡せばやがて生徒達は通路の中央を開けるよう左右に分かれていることに気づく。
そして開けられているのは、その間を通る三人の女性の為であり視線もまた三人を注目するよう向けられていることに気づいた。
そして、試験用の音源を提出し、職員室を後にした彩音と紫音もまた下校しようと廊下を歩いているとふと立ち止まり窓に目を向ける。
「彩音? どうかしましたか?」
異様な程の人だかりを見ていた彩音に紫音もまた覗き込むと
「外が何か騒がしくて……何だか人も凄くて何だろうと思って」
科を問わず生徒達に囲まれた中心にいる三人組を目にした時、目を丸くして紫音は呟いた。
「あれは……Drops?」
「Drops?」
彩音が聞き返すと、更に奥から現れた姿と共に声が聞こえ
「確か……うちの学校の有名な卒業生なんだっけ?」
その声に振り向くと藤咲鳴海がおり、二人に並ぶよう生徒達に囲まれる女性達を見て口を開く。
「確か、近年卒業した先輩達の中でも有名なのが彼女らで有名アイドルグループだとか学校パンフレットで見たような」
「ええ。全国ツアーも行った人気アイドルグループの『Drops』……それがあの方達のようですね」
近年は特に音楽番組でよく見かける程で、中でも有名な曲は彼でさえ知っているほどだとか。
それほどまでに人気のアイドルグループがこの京進学園に現れた理由は紫音も桜丘高校に戻った彩音も後日知ることになる。
彩音達が交換留学を終えてから数日経ち試験まで残り僅かとなっていたある日のこと、業務連絡を兼ねたHRで教師から伝えられた。
「ボーカル試験まで日も迫っているが、例年通り今年も合格者の中から選ばれた五組は試験の一ヶ月後に行われる定期ライブに出演できる」
そう話される言葉を生徒達が真剣に聞く中話は続き
「それには毎年ゲストも呼んで出演してもらっているんだが……今年はこの学園の卒業生でもある『Drop』のゲスト出演が決定した」
その瞬間クラス内はざわめき、今人気のアイドルグループかつこの学園の卒業生である彼女らを知らない学園生徒はそういない。
「デビュー前から人気グループと共演できる機会はそうない。一層気合を入れて試験に臨み、彼女らの技術を学ぶよう」
それを聞いた生徒達の誰もがより真剣な面持ちに変わり、教室内にはピリピリとした空気さえも流れていた。
その頃、桜丘高校に戻ってきていた彩音は沙織と話しながらある話題を出した。
「もうすぐアイドル科の人達に試験があるんだって」
審査員となる教師達の前で歌とパフォーマンスを披露し採点する形式で、色んな意味で関わった彩音としても気になることでもある。
しかし交換留学は終わりこの学校に戻ってきた為試験当日その様子を見ることは出来ない。
そして、紫音は授業に参加する傍ら放課後には彩音から託された楽曲を手に完成度を高めるべく練習を続けていた。
そして試験当日、審査員となる講師達の前に立ち一礼しながら
「白桜律紫音です。よろしくお願いします」
学園内に設立され、後に行われる定期ライブ会場にもなる多目的ホールにて紫音は顔を上げると緊張感を持ちながら会場を見渡しあの曲が流れるのを待っていた。
そしてスピーカーを通して前奏が流れ出すとマイクを握り歌いだす。
『紫音、明日は頑張って』
楽曲を手渡された後も彼女とのやりとりは続き、試験前日の夜彼女からそう短いメッセージが届く。
連絡網として、クラスメイトとの連絡先は交換してたけれど業務連絡以外に使用したことはなく誰かと業務以外のやりとりをしたのは初めてだった。
どこかに遊びに出歩いたりすることも無く、正確にはそんな考えが無かった。
「何度も何度も迷いながら、その夢を確かめるように」
違う価値観の世界で過ごしてきた人達と分かり合う事は出来ない。
こういうものなんだと折り合いをつけなければならないんだと思っていた。だけど彼女と出会い、それはやっぱり違うんだって思えた。
「もう一度あの光り輝く世界へ」
声は音となりホール中に響き渡り、桜丘高校にいた彩音もまた授業を受けながらチラりと時計を見ると心做しか落ち着かぬ様子でいた。
間もなく、一礼し舞台から捌けると紫音は小さく安堵の息を吐いた。
「ふぅ」
やりきった達成感に安心しながら振り返ればステージでは次なる生徒の披露が始まっている。
それを眺めながらグッと胸の前で手を握って
(やれるだけの事はやった。後は結果を待つだけ)
そんな数日後、彩音の元に連絡が入り送信者には紫音の名前が。
そこに表示されていた文字に彩音は言葉を失い、そこには合否を決める点数を超え試験に合格したとの報告が書かれていた。
間もなく紫音は返信の音に気づき向けると『おめでとう!』と返ってきていて、それを目にしながら笑みを浮かべたのもつかの間、そこから続けて綴られた言葉に表情を変えた。
『実は、あの曲少し何かが足りない気がしていて、藤咲くんに少しアドバイスとアレンジをしてもらったんだ』
「……藤咲さん、私の曲を作る彼女にアドバイスを下さったとは本当ですの?」
と鳴海を探し問いかけると画面を見せ、それを確認した彼は肩を竦め笑いながら答える。
「少しだけ。最初に聴かせてもらった時点で独学で作られたとは思えない程完成度が高くて驚いたよ」
やがて彼は困ったように笑いながら
「僕もさ、両親や家族、知り合いが作曲関係の仕事に就いてるわけでもないのにセンスがあるって言われても、一切この世界の事を知らなかった人間としてそう言われても不安な気持ちは少し分かるんだ」
「…………」
「僕もこの学校に来てから一生懸命音楽の事を勉強して、コンセプトを聞いた時は納得出来る説得力にびっくりしたくらいだよ」
だから結果的に彼女にアドバイスをして、少し編曲させてもらった部分もあるけれどそれは予めほとんど完成されていた彼女の曲に作曲を学ぶものとして得た技術を少し伝えただけのことだと話していった。
「僕はほんのちょっと物足りない音の味付けを手伝っただけで……あれは紛れもなく白桜葎さんの為に彼女が必死に作った曲だと思うよ」
それを聞いて画面に向き直った紫音は再び彩音に向けて文字を打ち込む。
『残念ながらライブの出場権は得られませんでしたが、これも貴方のおかげです。ありがとうございました』
そう返信し終えた時、紫音は笑っていた。
全員の披露が終わり、審査員から全体的な評価を伝えられ試験も終わり教師たちが去った後のこと。
教室に戻ろうとホールを出たアイドル、作曲科の生徒達の前にとある声とともにある三人の姿が現れる。
『貴方達のライブ……アイドルとしてはまだまだね』
「な、Drops……!?」
誰かが彼女らの名を上げ、一同が騒然とする中その中にいた紫音と鳴海も彼女らの姿に唖然としていた。
そんな三人の一人が口に入れていたロリポップを取り出し突きつけると
「一通り見させてもらったけど、言わばここはまだ入り口すら立ってないの。学内の試験なんて身内のお遊戯会よ」
そう鋭い目で突きつけられ生徒達の表情が強ばると
「その中の狭い世界での評価に満足しているようでは、この先デビューを果たしたとしても生き残ることはできない」
「……!」
その瞬間、アイドル科の生徒達の表情が変わり、そしてまた別の一人が鋭い視線を生徒達に向け
「この学校の卒業生でもあり今度学内ライブに呼ばれた私達もこの選抜試験に立ち会ったけれど、表現力や歌唱力、まだまだ荒い所が腐るほどあるという印象だった」
「試験に合格さえ出来ればいい。そんな甘い考えではアイドルなんてやっていけない。貴方達の試験を私が点数化するなら……四十点……ってところかしら」
「…………」
二人による生徒達への厳しい言葉は続き、生徒達の表情が変わっていきながらそれが止まることは無かった。
「私達でさえアイドル界にとっては珍しくも何ともない一アイドルで、私達より実力のあるアイドルなんてごまんといるわ」
そんな世界の中、業界から見たらそのアイドルの世界を目指すここの生徒はどこにでもいるアイドルを夢に見ている人でしかない。
「その程度のレベルの候補生なら腐るほどいる。ここはそういう世界なの。そんな甘い考えでアイドルになろうと思ってるのなら……悪いことは言わないわ、遊び半分でここにいるのならアイドルは諦めなさい」
「「…………」」
現実を突きつけるように容赦ない言葉を浴びせられ静まり返った中、紫音は唇を噛み痛感する。
物心ついた時から親に作法や音楽を叩き込まれ、結果母と同じヴァイオリニストになると未来は決められていた。
夢の無かった私はそれに不満はなく用意された道を、敷かれたレールの上を走っているだけだった。
何をしても褒められ、否定されなかった世界に生きて……
「……私は本気です。これは遊びではありません!」
その時、静まり返っていた部屋に声が響きDropsの三人は反応した。
周囲も視線を向け、その先にいる紫音は彼女らに向け告げた。
「実力主義だと承知の上で私はこの世界に入りました。その為には……まだまだ高みを目指しますわ!」
それは特別嫌だと思ったりもせず、この家に生まれたのだからそういうものだと日々レッスンに励んでいた。
そんな彼女がアイドルという存在に出会ったのは中学生の頃。
「中学生の頃、その頃私は毎日送迎され通っていたのですがそのある日のこと。帰りの車で信号待ちをしていた時、ふと街頭スクリーンから聞こえた音に視線を向けたのです」
その街頭スクリーンにはあるアイドルグループの映像が映っていて、一家の教育上クラシックか声楽しか聞いた事の無かった紫音にとってそれは衝撃だった。
肌を露出した衣装を身に纏いながらライトの下歌いながら踊っていて、アイドルという存在自体知らなかった紫音にとってその第一印象は異様な人達だった。
「あんな上品とは言えない衣装で歌って踊る姿に言葉を失う反面、楽しそうに歌う彼女達と……そんな彼女達の周りで輝く無数の光に心を奪われたのです」
間奏に行われる掛け合いによる会場との一体感は今まで経験してきたクラシックにはない熱狂的な空間を生み出し、音楽や声楽による演奏会とは違っていて。
披露する者も、それを聴く者と共に一つの『ステージ』を作っているあの感覚に強く胸の奥が打ち震えた。
それは、彩音や多くの人が感じるようなキラキラした空間だと彼女も感じ
「あんな衝撃は今まで受けたことがなく、私も同じように輝きを感じたい。私の歌を聞いてくださる方々と共に舞台を作り上げたい……と強く思ったのです」
「それでアイドルになろうと……?」
彼女から夢を追うきっかけを聞いた彩音が問いかけると紫音は静かに目を伏せ
「両親には当然反対され、説得の末この学園に通うことを許して頂きこうして通っているものの……力不足を痛感するばかりですね」
そう話していく彼女に対して彩音は目を伏せ
(クラシック、ヴァイオリン、お嬢様、アイドル、熱意……夢)
そうスマートフォンのメモ帳アプリに単語を打ち込んでいると聞こえてきた声に彩音は視線を向けた。
「貴方の歌、もう一度お聞かせ頂けませんか」
「えっ!?」
思わず声に出て彼女を見ると彼女はいつの間にか立ち上がっており
「何なら貴方が作られたという別の曲でも」
「えっあ、いや……。CDも渡しておいて何だけど本当お嬢様が聞くような曲じゃないのもあるから」
「今の私には一般の趣味嗜好、そのものの知識が足りなさ過ぎるのです。お嬢様らしくないというのなら尚更、私が知らなくてはならない世界でもあります」
「…………」
「ですが、単純に私が……貴方の歌を聞きたいのです」
この人は、本心をそのまま口にしているだけ。
嘘偽りのない褒め言葉は嬉しさや驚きよりも先に何故か恐怖を感じていた。
それでも彼女のその言葉の意味を考えると彩音は立ち上がり、それに気づいた紫音が視線を向けると
「作った歌はいつも誰に聞かせるでもなく一人で歌ってた」
だからこそ、褒められた事が凄く嬉しかった。
彩音は自室で鼻歌を歌っていた。
そしてそれは途中で止まると紙へペンを走らせる。
そして、それから僅か三日後、彩音からある連絡を受け取った紫音は正門で待ち合わせ現れた彩音の姿に表情を変えた。
「…………」
間もなく、渡した歌詞を見つめながら集中するようイヤホンから流れる音を聞く姿に彩音は緊張した様子で紫音が聞き終わるのを待っていた。
やがて、彼女の視線が上がり
「どう……?」
「とても、素敵な曲です」
そう残響に浸りながら紫音は告げ
「それでいて不思議な楽曲……。全体的には明るくポップな曲調のはずなのに、バラードのような儚さを感じて……」
「……」
「まさか、こんな無理難題を押し付けたにも関わらず本当に作ってきて下さるなんて……。本当に、感謝します」
その言葉に緊張するよう全身に力を入れていた彩音の表情が緩み、それを見ながら紫音もまた微笑んでいた。
彩音はひとまず安心しながら息を吐くと
「今まで作った曲の中で一番考えたと思うよ。だって今までは浮かんだものを形にした自分の為だけに作ってきたんだから」
けどこれは自分じゃなく彼女の為の歌。
「プロに比べたら素人同然の曲だけど……出来るだけの事は全部やった」
そして、彩音は一呼吸置くと再び口を開き
「……実はこれ、白桜律さんをイメージした曲なんだ」
「私を……?」
そう聞いた紫音は目を丸くし曲名を見ると同時に歌詞カードに目線を落とす。
「私は業界やアイドルの為の曲作りとしては何も知らないから色々考えて、折角誰かの為に作るのなら白桜葎さんの雰囲気そのものを伝えられる曲にしたかったんだ」
単純に思い浮かべたのはバラードだけど……と小さく笑いながら
「だって美人で綺麗で、お嬢様だって言われてもアイドルを目指してるって言われても納得出来ちゃう見た目をしていて」
でも、と彩音は紫音の持つ歌詞カードに視線を向けると語っていく言葉を追うように紫音も歌詞へ目を向け
「でも、色んな話を聞いて、この世界を知って『綺麗』なだけじゃないって思ったんだ」
確かにこの曲を初めて聞いた時、クラシック音楽のような優雅さと美しさがありながらその歌詞と音楽にはどこか『力強さ』も感じられた。
それが彼女が不思議な楽曲と言った理由でもある。
そこに彩音の声が聞こえ
「お嬢様だけどアイドルを目指していて、それだけ白桜律さんにとってアイドルは『夢』で」
不慣れな世界に飛び込んで、見知らぬ周囲との差に戸惑いながらも努力しながら追い続け彼女には夢を叶える為にかける強い情熱がある。
「だから前奏は綺麗をイメージさせるように入って、Bメロからサビに近づくにつれ力強さが増して……サビでその力強さを表してるつもり」
「……」
「サビはこの道に進んだ覚悟を……って今まで作った曲にも思いとかイメージはあるけど、それを誰かに説明することなんてないから誰かに曲に込めた意味とか解説するの凄く恥ずかしいなっ」
「私をイメージした、私だけの曲……」
紫音は歌詞カードを胸の前に抱え、彩音はそんな彼女を呆然と見ると
「この曲と歌詞にはそんな想いが込められているのですね。私も……共感できる所が沢山あります」
まるで宝物を大切にするような光景に彩音は呆然としたまま見ていると、やがて続けて彼女から発せられた言葉に表情を変え
「本当にありがとうございます。好みを知りたいと貴方から頂いたCDもどれも素敵な曲ばかりで……。……ここからは、私の努力次第ですわね」
と紫音は力強い目を彩音に向け、やがて微笑むと
「……ですから、神月さん。私の事は『紫音』と呼んで下さいませんか」
そんな切り出しに目を丸くする彩音に彼女は微笑んだまま
「貴方は私の曲を作ってくれただけでなく、私の事を知っても尚変わらぬ態度で接してくれた。私は……貴方とお友達になりたいのです」
「えっ、友達……?」
「違う学校で、目指すものが違ったとしても……私の夢を笑わず真剣に向き合ってくれた」
やがて彼女は胸に手を当てながら視線を伏せ
「ここの皆さんとどこか壁が出来てしまうのも、身分や育ってきた環境が違うのだから仕方のないことなのだとどこか思っていたのです」
「…………」
「ですが、貴方とお話して気づいたのです。努力するのは夢だけでなく他も同じで……私が皆さんの事を知ろうとすれば、きっと誤解も解けると思うのです」
夢と同じで自分から動き出さなければ何も変わらない。
そう彼女は意を決したように語り、そんか彼女を見て彩音は口は開いたまま音が消えると口を閉じ黙り込んだ。
しかしやがて下がっていた口角が上に向くと
「そういう所が凄いと思うんだよなあ」
「……?」
視線を向けられ、彩音は頬杖をつきながら笑みを浮かべるとその手を離し
「お嬢様だからとか、一般人だからとか、本当は関係ないのかもねって思っただけ。私は……そんな紫音を応援したいって思ってるよ」
「……! わ、私も!」
と目を丸くした紫音が前のめりになると
「私も彩音とお呼びしてよろしいですか……!?」
「……もちろんだよ」
その頃、廊下を歩いていた藤咲鳴海は校舎の外が騒がしい事に気づき窓から外を見ると正門前の通路に生徒達が集まっている光景が目に入った。
「あれは……?」
なぜ集まっているのか、その理由を探るよう当たりを見渡せばやがて生徒達は通路の中央を開けるよう左右に分かれていることに気づく。
そして開けられているのは、その間を通る三人の女性の為であり視線もまた三人を注目するよう向けられていることに気づいた。
そして、試験用の音源を提出し、職員室を後にした彩音と紫音もまた下校しようと廊下を歩いているとふと立ち止まり窓に目を向ける。
「彩音? どうかしましたか?」
異様な程の人だかりを見ていた彩音に紫音もまた覗き込むと
「外が何か騒がしくて……何だか人も凄くて何だろうと思って」
科を問わず生徒達に囲まれた中心にいる三人組を目にした時、目を丸くして紫音は呟いた。
「あれは……Drops?」
「Drops?」
彩音が聞き返すと、更に奥から現れた姿と共に声が聞こえ
「確か……うちの学校の有名な卒業生なんだっけ?」
その声に振り向くと藤咲鳴海がおり、二人に並ぶよう生徒達に囲まれる女性達を見て口を開く。
「確か、近年卒業した先輩達の中でも有名なのが彼女らで有名アイドルグループだとか学校パンフレットで見たような」
「ええ。全国ツアーも行った人気アイドルグループの『Drops』……それがあの方達のようですね」
近年は特に音楽番組でよく見かける程で、中でも有名な曲は彼でさえ知っているほどだとか。
それほどまでに人気のアイドルグループがこの京進学園に現れた理由は紫音も桜丘高校に戻った彩音も後日知ることになる。
彩音達が交換留学を終えてから数日経ち試験まで残り僅かとなっていたある日のこと、業務連絡を兼ねたHRで教師から伝えられた。
「ボーカル試験まで日も迫っているが、例年通り今年も合格者の中から選ばれた五組は試験の一ヶ月後に行われる定期ライブに出演できる」
そう話される言葉を生徒達が真剣に聞く中話は続き
「それには毎年ゲストも呼んで出演してもらっているんだが……今年はこの学園の卒業生でもある『Drop』のゲスト出演が決定した」
その瞬間クラス内はざわめき、今人気のアイドルグループかつこの学園の卒業生である彼女らを知らない学園生徒はそういない。
「デビュー前から人気グループと共演できる機会はそうない。一層気合を入れて試験に臨み、彼女らの技術を学ぶよう」
それを聞いた生徒達の誰もがより真剣な面持ちに変わり、教室内にはピリピリとした空気さえも流れていた。
その頃、桜丘高校に戻ってきていた彩音は沙織と話しながらある話題を出した。
「もうすぐアイドル科の人達に試験があるんだって」
審査員となる教師達の前で歌とパフォーマンスを披露し採点する形式で、色んな意味で関わった彩音としても気になることでもある。
しかし交換留学は終わりこの学校に戻ってきた為試験当日その様子を見ることは出来ない。
そして、紫音は授業に参加する傍ら放課後には彩音から託された楽曲を手に完成度を高めるべく練習を続けていた。
そして試験当日、審査員となる講師達の前に立ち一礼しながら
「白桜律紫音です。よろしくお願いします」
学園内に設立され、後に行われる定期ライブ会場にもなる多目的ホールにて紫音は顔を上げると緊張感を持ちながら会場を見渡しあの曲が流れるのを待っていた。
そしてスピーカーを通して前奏が流れ出すとマイクを握り歌いだす。
『紫音、明日は頑張って』
楽曲を手渡された後も彼女とのやりとりは続き、試験前日の夜彼女からそう短いメッセージが届く。
連絡網として、クラスメイトとの連絡先は交換してたけれど業務連絡以外に使用したことはなく誰かと業務以外のやりとりをしたのは初めてだった。
どこかに遊びに出歩いたりすることも無く、正確にはそんな考えが無かった。
「何度も何度も迷いながら、その夢を確かめるように」
違う価値観の世界で過ごしてきた人達と分かり合う事は出来ない。
こういうものなんだと折り合いをつけなければならないんだと思っていた。だけど彼女と出会い、それはやっぱり違うんだって思えた。
「もう一度あの光り輝く世界へ」
声は音となりホール中に響き渡り、桜丘高校にいた彩音もまた授業を受けながらチラりと時計を見ると心做しか落ち着かぬ様子でいた。
間もなく、一礼し舞台から捌けると紫音は小さく安堵の息を吐いた。
「ふぅ」
やりきった達成感に安心しながら振り返ればステージでは次なる生徒の披露が始まっている。
それを眺めながらグッと胸の前で手を握って
(やれるだけの事はやった。後は結果を待つだけ)
そんな数日後、彩音の元に連絡が入り送信者には紫音の名前が。
そこに表示されていた文字に彩音は言葉を失い、そこには合否を決める点数を超え試験に合格したとの報告が書かれていた。
間もなく紫音は返信の音に気づき向けると『おめでとう!』と返ってきていて、それを目にしながら笑みを浮かべたのもつかの間、そこから続けて綴られた言葉に表情を変えた。
『実は、あの曲少し何かが足りない気がしていて、藤咲くんに少しアドバイスとアレンジをしてもらったんだ』
「……藤咲さん、私の曲を作る彼女にアドバイスを下さったとは本当ですの?」
と鳴海を探し問いかけると画面を見せ、それを確認した彼は肩を竦め笑いながら答える。
「少しだけ。最初に聴かせてもらった時点で独学で作られたとは思えない程完成度が高くて驚いたよ」
やがて彼は困ったように笑いながら
「僕もさ、両親や家族、知り合いが作曲関係の仕事に就いてるわけでもないのにセンスがあるって言われても、一切この世界の事を知らなかった人間としてそう言われても不安な気持ちは少し分かるんだ」
「…………」
「僕もこの学校に来てから一生懸命音楽の事を勉強して、コンセプトを聞いた時は納得出来る説得力にびっくりしたくらいだよ」
だから結果的に彼女にアドバイスをして、少し編曲させてもらった部分もあるけれどそれは予めほとんど完成されていた彼女の曲に作曲を学ぶものとして得た技術を少し伝えただけのことだと話していった。
「僕はほんのちょっと物足りない音の味付けを手伝っただけで……あれは紛れもなく白桜葎さんの為に彼女が必死に作った曲だと思うよ」
それを聞いて画面に向き直った紫音は再び彩音に向けて文字を打ち込む。
『残念ながらライブの出場権は得られませんでしたが、これも貴方のおかげです。ありがとうございました』
そう返信し終えた時、紫音は笑っていた。
全員の披露が終わり、審査員から全体的な評価を伝えられ試験も終わり教師たちが去った後のこと。
教室に戻ろうとホールを出たアイドル、作曲科の生徒達の前にとある声とともにある三人の姿が現れる。
『貴方達のライブ……アイドルとしてはまだまだね』
「な、Drops……!?」
誰かが彼女らの名を上げ、一同が騒然とする中その中にいた紫音と鳴海も彼女らの姿に唖然としていた。
そんな三人の一人が口に入れていたロリポップを取り出し突きつけると
「一通り見させてもらったけど、言わばここはまだ入り口すら立ってないの。学内の試験なんて身内のお遊戯会よ」
そう鋭い目で突きつけられ生徒達の表情が強ばると
「その中の狭い世界での評価に満足しているようでは、この先デビューを果たしたとしても生き残ることはできない」
「……!」
その瞬間、アイドル科の生徒達の表情が変わり、そしてまた別の一人が鋭い視線を生徒達に向け
「この学校の卒業生でもあり今度学内ライブに呼ばれた私達もこの選抜試験に立ち会ったけれど、表現力や歌唱力、まだまだ荒い所が腐るほどあるという印象だった」
「試験に合格さえ出来ればいい。そんな甘い考えではアイドルなんてやっていけない。貴方達の試験を私が点数化するなら……四十点……ってところかしら」
「…………」
二人による生徒達への厳しい言葉は続き、生徒達の表情が変わっていきながらそれが止まることは無かった。
「私達でさえアイドル界にとっては珍しくも何ともない一アイドルで、私達より実力のあるアイドルなんてごまんといるわ」
そんな世界の中、業界から見たらそのアイドルの世界を目指すここの生徒はどこにでもいるアイドルを夢に見ている人でしかない。
「その程度のレベルの候補生なら腐るほどいる。ここはそういう世界なの。そんな甘い考えでアイドルになろうと思ってるのなら……悪いことは言わないわ、遊び半分でここにいるのならアイドルは諦めなさい」
「「…………」」
現実を突きつけるように容赦ない言葉を浴びせられ静まり返った中、紫音は唇を噛み痛感する。
物心ついた時から親に作法や音楽を叩き込まれ、結果母と同じヴァイオリニストになると未来は決められていた。
夢の無かった私はそれに不満はなく用意された道を、敷かれたレールの上を走っているだけだった。
何をしても褒められ、否定されなかった世界に生きて……
「……私は本気です。これは遊びではありません!」
その時、静まり返っていた部屋に声が響きDropsの三人は反応した。
周囲も視線を向け、その先にいる紫音は彼女らに向け告げた。
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