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夢追い編
第39話、作られた夢、叶えたい夢
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時間だけが過ぎ、数々の両生徒の歌を流す中ふと今回の目的と話を聞いていたアイドル科の教師が口を開いた。
「学園長、この中に本当にあの幻の『虹の歌姫』がいるのですか?」
「私の目と耳に狂いはない」
そう断言する学園長に教師とDropsの三人が息を呑むと
「何故なら……私は虹の歌姫の歌を目の前で聞いたことがあるからだ」
「な……それは……?」
「まだ私がここの学園長だけではなく京進プロダクションの社長と兼任していた頃、ある番組で彼女と話したことがあるのだ」
「学園長が?」
Dropsの一人が問いかけると彼は話し始めた。
偶然同じ番組に出演し、その時の幼い彼女にある質問をしたという。
「その内容は何故君は歌うのか、何の為に歌というものを歌うのか」
それに返ってきた答えは『歌うのが好きで楽しいから』だった。
共演した番組はゴールデンタイムに全国的に放送されるバラエティ番組で、話題性に上がってから最後に彼女を見た番組だった。
至ってどこでも聞くような答えをし、その番組でも彼女は歌を披露した。
「その歌を聞いた時、とても素晴らしいと思うと同時にもし彼女を育てれば世界にも認められる歌手になれるだろう、と確信した」
「しかし、彼女はそのままどこの事務所に所属することも、歌手としてデビューすることもなく姿を消した……」
やがて学園長は時計の針を見ると
「さて、そろそろ時間も迫っている。最終手段に移るとしよう」
「そろそろ行かないと。みんな、ガンバ!」
と集計準備の為夏目と晴俊が去り、残り二十分に迫る中京進学園側の生徒会から放送がかかった。
『皆さんにお知らせです。残り二十分となりました。両チームの点差は僅か、まだまだ勝敗は分かりません』
そんな放送の最中部屋の扉が開き、京進学園の生徒会のが顔を出しながら
「すみません、集計の手伝いに数人来てくれませんか?」
「わかりました」
その姿に亜理紗と結希が出ていき、夢と彩音が残された中続けて聞こえた放送に言葉を失った。
『そこで、少し休憩がてら私達の用意した企画に耳を傾けてみるのはどうでしょう? 名付けて両生徒会カラオケ合戦~!』
「はっ……?」
『皆さんご存知の通り、このイベントには両校の生徒会も参加しています。そこで、生徒会の歌……聞いてみたくありません?』
瞬く間に彩音と夢の表情が変わり、唖然とする間にも放送は続いていく。
『そこで、それぞれ各三曲ずつ披露して頂きたく思います! これは勝負でも点数加算もされないのでご安心を!』
唖然としたまま唯一残っていた夢に視線を向け
『ではまず京進学園の生徒会から~。選曲次第始まりますので、興味のある生徒は操作パネルから右下にあるイベント用ページに切り替えて下さい!』
「……ど、どうしましょう?」
困惑のまま夢に投げかけると彼女は開いたソファに寝転び
「私は夏目先輩の無茶ぶりに歌いすぎて喉が……」
「ですよね……城島先輩達は閉会式の為に行っちゃったし、他の人も集計の為に行っちゃったし……!」
そもそもそんな話は聞いてない、と困惑していた時連絡用の受話器がかかり京進学園が歌っている間に選曲予約をしておいて欲しいと連絡が入る。
「…………」
急かされていることもあり、今から呼びに行くことも出来ず黙り込むと夢は起き上がり
「……そんなに歌うの嫌い?」
「えっ? いえ、そういう訳じゃ」
と反射的に答えそれは本心である。
しかしこの合同企画の最中、一曲も歌わなかった彩音に対して心配の目を向けると
「ただ、誰かに聞かれたり、人前で歌うのがあまり……」
「…………」
「…………」
やがて、黙り込んでいた彩音が操作機に手を伸ばし、その姿に夢は目を丸くしながら問いかける。
「私が歌おうか?」
「……いえ、ずっと歌わせてしまいましたし、歌うのは、嫌いではないので……」
と三曲入れると京進学園生徒会の三曲目も最後のサビに入る。曲が終わるのを待ちながら、彩音は手に持ったマイクをグッと握り込む。
やがて、視界の端で動きを見せた姿に視線を向けると夢が扉に向かっており、寸前で振り返ると
「分かっていればもう少し考えて歌ったんだけど。あまり意味は無いかもしれないけど、私も集計の手伝いに行ってくるね」
「……!」
それは、自分がいては歌いづらいだろうという彼女なりに気を使っての事だと察し目を丸くすると
「ありがとう。例えどんな歌でも生徒会の皆は笑ったりしないと思う」
彼女が去り、間もなく放送が入ると
『それでは次は桜丘高校生徒会の皆さん、お願いします!』
イントロが流れ出し、やがて歌が聞こえると参加していた紫音が反応しながらスピーカーへと視線を向け
「この声は……」
「この歌は確か……SORAの」
そして同じく、学園長達のいる部屋も言葉を交わしており
「五年ほど前に放送したドラマの主題歌ですね」
「今歌っているのが、例の……?」
歌を聴きながら笑みを浮かべた学園長を見るとDropsの一人が投げかけ
「声がよく通っていて、聞き取りやすくて力強い……でも、一体どうやって」
「なに、彼女を歌わせることくらい簡単さ。何せ彼女自身『歌』が好きなのだから」
そして京進学園生徒会に負けないほどの歌声に、生徒会合戦を聞いていた生徒たちもまた思わず聞き入る程で
「誰が歌ってるんだろう。凄く上手……」
「今って桜丘の番だよね?」
一曲目が終わり、二曲目へと入るとまた別の曲を歌い始める。
そして三曲目に入り、再びイントロが流れ始めると聞き覚えのある音に紫音やDropsの三人は再び表情を変える。
「この曲は……!」
そして、歌に入ると再び声を上げ
「この声……!」
「この曲がどうかしたのですか?」
Dropsの声に教師たちが反応し、学園長に視線を向けると彼らは教師の言葉が耳に入らぬように聴き込んでおり、その姿に教師達の言葉は止まる。
それは以前学園長から見せられた番組の中で虹の歌姫が歌ったメドレーの中にあった曲であり、あの夏祭りで歌われた曲でもある。
そして、一曲目はしっとりとしたバラード、二曲目はロック、三曲目はポップスとそれぞれ違うジャンルの歌を雰囲気に沿った歌い方で歌ってみせた。
「一曲目と三曲目を歌った人も二曲目の人もめちゃくちゃ上手かったなあ」
そう多くの生徒が思い、あの三曲はどこかの区切りで別の人が歌っていると自然と判断されている。
しかし、実際に歌っていたのは一人。
それはあの正体を確信めいたものにするには十分だった。
合同イベントは無事終わりを迎え、彩音がカラオケルームを出た時廊下で待っていた紫音の姿に立ち止まる。
「紫音、紫音も参加していたの?」
「ええ。勇気を出して……クラスメイトを誘ってみたのです」
そして数秒間が開いた後、紫音の口から出た言葉に彩音は目を丸くする。
「……貴方は『虹の歌姫』だそうですね」
「虹の歌姫?」
深刻そうな表情で確かめる紫音に対して彩音はきょとんとしており、二人の間に妙な差が生まれる。
しかし長い沈黙の後、思い出すように声を上げ
「……あぁ! 最初何のことを言ってるのかと思ったら」
「……! やはり、貴方が」
確信を持ち、紫音は俯きながらぐっと手を握り込むと
「そんなこともあったような気がするけど、そんなもう誰も覚えてないようなことを紫音が知ってるなんて」
「学園長からお聞きしたのです」
そう告げる声に彩音の表情が変わると
「かつて私の学校の学園長は貴方と共演した事があるそうです。あれほどの歌唱力がありながら……歌手やアイドルを目指さないのですか?」
その問いに黙り込む彩音に紫音は握っていた手をさらに強く握り、彩音に真剣な眼差しを向けると
「何故あれほどの話題を生みながらすぐ消えてしまったのですか? 彩音ならトップアイドルになれると思うのです」
やがて、黙り続けていた彩音が口を開くと紫音は視線を上げ目を丸くした。
「確かに歌うのは好きだし、小さい頃は歌手になりたいって思ったこともあった。でも職業としてじゃなく歌が好きだから歌いたいんだ」
「……そう、なんですか」
時の流れと共に虹の歌姫という伝説は幻となり人々の記憶から消え、一過性の流行りや噂なんてそんなもの。
「虹の歌姫は、七歳にも関わらず大人顔負けの歌唱力と、その歌い分けによってつけられたものだよ」
と彩音は肩を竦めながら話し
「どんなに歌が上手いと言われても、私は人と話すのがずっと苦手なんだ。言っちゃえば……ただ歌が歌えるだけなんだ」
芸能界という世界はキラキラしていて、容姿と才に恵まれた人だけが辿り着ける世界であり、そんな人達の血の滲む努力の果てに掴める世界なんだと京進学園に通う生徒を見て改めて思ったと語り
「アイドルや歌手ってさ、沢山の人が夢に見てなりたいって思う職業だと思うんだ」
スポーツ選手とか、歌手とか、パティシエとか小さい頃はそんなものを夢にして、現に彩音も小さな頃将来の夢を書く欄には歌手と書いていたと言う。
「紫音みたいな人はともかく、殆どの人の夢ってそんなもんなんだ。漠然とした……でもそれはまだ将来とか良く分かってなくて、ただそれを書かなきゃいけない時があったから書いただけの夢」
狭い世界で生きてる中、知るものから書かされた夢でしかない。でも、と話を続ける彩音に紫音が顔を上げ視線を向けると
「でも、今の私は書かされた夢じゃなくて自らの意思でこうしたいってものがある。それが叶えられるかは別としてね」
「…………」
やがて紫音は俯き、目を伏せながら胸に握った手を当てると
(少し……残念です。もし彩音と共に共演できたらどんなに楽しそうか)
ユニットを組んで同じ歌を歌ったり、時に同じ音楽番組に共演したり……彩音の歌に奮い立たされたり。
少し想像すれば、より一層輝いた未来が待っていそうでこんなにも胸が弾むのにと思っていた時ふと声が聞こえた。
「紫音の活躍、楽しみにしてるよ」
「え……?」
その声に顔を上げると、唖然とした紫音を前に彩音はまるで夢を語るように語っていき
「もし紫音が有名なアイドルになった時、そんな紫音の曲を作った事があるって凄いことだと思うの」
「……!」
「それに、こうして仲良くなった友達がアイドル界に入ってテレビに出るなんて凄くない? 今のうちにサイン貰っておくべきかな」
「……ふふ、そうですわね」
思わず綻ばせ、そう紫音は笑っていた。
「もー。散々な目に合ったよ」
「こちらも皆さん楽しんでおられましたよ」
帰宅するなり嘆く彩音に対して啓は笑いながら返し、そのまま発せられた声に彩音は視線を向ける。
啓は安心したような笑みを浮かべながら
「お嬢様も……生徒会として参加なされていたのですよね。お疲れ様でした」
(啓は気づいたんだろうか)
そう思いながら目を細めると
「交換留学が終わり、ライブの仕事も終わりこの交流会も無事終え……ひとまずここ最近の忙しなさも一段落して安心しています」
「何言ってんのさ」
そう返ってきた言葉に啓が目を丸くすると彩音は呆れるように息を吐き
「本来、ここまであったあれこれはこの学校だからこそあったイレギュラーなものだけど……本来この二学期は忙しいことが確定してる時期なんだからね」
そう説明するように話を続ければ
「というのも、この秋には体育祭やら文化祭って言う一年でも一、二を争う大きなイベントがあるんだから」
「確か、始業式の時に後藤先生も仰られていましたが、体育祭や文化祭とは一体何なのですか……?」
「ほら、五月に球技大会があったでしょ。あれは主に球技を競技にした大会だけど……体育祭って言うのは体育祭ならではの競技で競う大会みたいなものなの」
どの学校でもあると思われる代表的なものは玉入れやリレー。そう語る彼女がふと微かに心を弾ませるような表情でいることに気づくと
「高校の体育祭だし、パン食い競走とか障害物リレーとか借り物競争とか夢のある競技がないかと期待してるんだけど」
そして、文化祭はそんな体育祭の後に行われる学校単位でのお祭りであると説明する。
簡単に説明すると、クラスや部活動単位で出し物を決め、それらを披露しながら自身も客として他クラスなどの出し物を見て回るお祭りだと話すと
「学校生活でもほぼ全員がこの文化祭を一番楽しみにしてると言っても過言ではない!」
「つまり、お嬢様も楽しみにされていると言うことですか?」
「まあね。なんて言ったって高校の文化祭だし! 東京の学校の文化祭だし、これだけクラスも敷地も広くて部活も多かったら期待しないわけがないよ!」
そう語る彩音は珍しくも目を輝かせており、啓は目を丸くしながらそんな彩音を見ていた。
「お嬢様がそれほどまでに楽しみにされているなんて……」
「多分、予言しとくけど君はクラス中の女子から文化祭の時一緒に見て回ろうと誘われまくるだろうね。下手したら他のクラスからも話が来る可能性も……」
しかし、生徒会に関わりだしてしまった以上彩音は生徒会としての何かがある可能性があると語る。
「主軸は第一生徒会とは言え、文化祭みたいな大きな行事の時には第三生徒会にも手伝ってもらうって話は聞いてたからねー」
「やけに嬉しそうですね」
「それはそうよ。なんたって仕事を理由にあんたと別行動が堂々と出来るんだから!」
そうキッパリ言い切った彩音に啓の表情が微かに曇り
「うちのクラスが何をすることになるのかは知らないけど、好きなだけクラスや他のクラスの女子と見て回っていいからね! 生徒会の仕事も喜んで引き受けるつもりだし!」
「……そんなに私と行動を共にするのが嫌なのですか?」
「そりゃそうよ。あんたといると目立つんだもん」
現にそれは事実である為言い返せないものの
「特に目立つような事はしていないつもりなのですが……何故あそこまで注目を集めるのでしょう」
「そりゃただでさえ帰国子女ってだけで目立つ要素があるのに成績はいいし、運動も出来るし見た目もよくて誰それ構わず親切心振りまいてりゃね」
カラオケ大会から二日後の放課後。
ボールをバットで打つ音や生徒の声が聞こえる中、バスケ部が休部だった翔太は屋上から街並みを見つめていた。
あのブレスレットの一件以来、更に深まるばかりの溝にどうすればいいのか葛藤していても正しい答えは見つからない。
(このままじゃまた動かないまま……)
奇跡的な運命か、残酷的な運命か、後悔の先に再び巡り会えた以上もう一度後悔するようなことにはしたくないと強く下ろされていた拳を握る。
そんな時、どこからか声が聞こえたような気がして屋上へ出る扉の方へ振り返るが背後には誰もいない。
気のせいかと思った瞬間、何かが物凄い勢いで真横を突き抜け目の前にあった屋上へ出る扉のすぐ横の壁に巨大な針が突き刺さっていた。
「魔物……!?」
驚いた直後瞬く間に険しい形相に変わり、武器である刀を手に現そうとした時背後から先程微かに聞こえたような声が聞こえた。
「またこの顔を見る事になるとは……つくづく反吐が出る」
「っ!?」
聞こえた声に再度振り返った瞬間、さっきまで誰もいなかったはずの場所に誰かが立っていた。
それは魔物ではなく、形状的には人の姿。
全身は青く紺色のローブに包まれ、素顔すらもフードによって隠され見えなかった。
「運が悪い。いや、最悪だな」
「誰だ……!」
尋ねかけた後に人物はしばらく黙り込んでいたものの、やがてフードに手をかけると外し隠されていた顔が露わになった瞬間翔太は言葉を失った。
「な……」
「…………」
視界に映った少女は小柄で海のように深い青色の服を纏い、それは現代日本で身につける衣服からは程遠くどこかのゲームに出てきそうな長いフード付きのローブのよう。
翔太が言葉を失った理由はそんな現代日本離れした姿にもあるが、何よりもその姿がある人物に似ていること。
瞳は青けど鋭く、髪も深い青色ながらパーマがかってボリュームがあるように見えその長さは肩まである。
それは驚くほどよく知る姿に似ており
「…………」
「……っ!」
あの人物によく似た容姿をした少女は剣を握ったまま無言で翔太に向け飛び出し、迫り来るなり本能が危険を察知し握っていた刀で受け止めた。
「くっ……何なんだよお前は……!」
押し切られないよう押し返しながら苦い表情を浮かべ、その目に氷のように冷たく鋭い瞳が映る。
「まるであいつに似て……」
間もなく、間合いを取るよう刃が離れると青い姿をした少女は翔太を見下ろすように冷酷な視線を向けながら口を開き、聞こえた言葉に翔太は目を丸くし見上げた。
「俺はアクア。あいつの中にあった闇の心を具現化した存在」
「な……アクア……?」
体勢を整えながら見上げると、彩音によく似た姿をした少女は翔太に向けた鋭い視線をより鋭くし
「よくもぬけぬけと俺達の前に姿を現せたものだ」
そして、翔太が謎の存在と遭遇した日の夜。
部屋に戻った北条啓は机の上に置かれた手紙を手にし見つめ、それはいつも彩音を前にした時のような穏やかなものとは違う表情をしていた。
手紙の入った封筒をしばらく見つめ、引き出しからペーパーナイフを取り出すと綺麗に切っていき封を開ける。
やがて中に入っていた紙を取り出し、静寂の中僅かに険しい表情で文面を見つめていた。
「学園長、この中に本当にあの幻の『虹の歌姫』がいるのですか?」
「私の目と耳に狂いはない」
そう断言する学園長に教師とDropsの三人が息を呑むと
「何故なら……私は虹の歌姫の歌を目の前で聞いたことがあるからだ」
「な……それは……?」
「まだ私がここの学園長だけではなく京進プロダクションの社長と兼任していた頃、ある番組で彼女と話したことがあるのだ」
「学園長が?」
Dropsの一人が問いかけると彼は話し始めた。
偶然同じ番組に出演し、その時の幼い彼女にある質問をしたという。
「その内容は何故君は歌うのか、何の為に歌というものを歌うのか」
それに返ってきた答えは『歌うのが好きで楽しいから』だった。
共演した番組はゴールデンタイムに全国的に放送されるバラエティ番組で、話題性に上がってから最後に彼女を見た番組だった。
至ってどこでも聞くような答えをし、その番組でも彼女は歌を披露した。
「その歌を聞いた時、とても素晴らしいと思うと同時にもし彼女を育てれば世界にも認められる歌手になれるだろう、と確信した」
「しかし、彼女はそのままどこの事務所に所属することも、歌手としてデビューすることもなく姿を消した……」
やがて学園長は時計の針を見ると
「さて、そろそろ時間も迫っている。最終手段に移るとしよう」
「そろそろ行かないと。みんな、ガンバ!」
と集計準備の為夏目と晴俊が去り、残り二十分に迫る中京進学園側の生徒会から放送がかかった。
『皆さんにお知らせです。残り二十分となりました。両チームの点差は僅か、まだまだ勝敗は分かりません』
そんな放送の最中部屋の扉が開き、京進学園の生徒会のが顔を出しながら
「すみません、集計の手伝いに数人来てくれませんか?」
「わかりました」
その姿に亜理紗と結希が出ていき、夢と彩音が残された中続けて聞こえた放送に言葉を失った。
『そこで、少し休憩がてら私達の用意した企画に耳を傾けてみるのはどうでしょう? 名付けて両生徒会カラオケ合戦~!』
「はっ……?」
『皆さんご存知の通り、このイベントには両校の生徒会も参加しています。そこで、生徒会の歌……聞いてみたくありません?』
瞬く間に彩音と夢の表情が変わり、唖然とする間にも放送は続いていく。
『そこで、それぞれ各三曲ずつ披露して頂きたく思います! これは勝負でも点数加算もされないのでご安心を!』
唖然としたまま唯一残っていた夢に視線を向け
『ではまず京進学園の生徒会から~。選曲次第始まりますので、興味のある生徒は操作パネルから右下にあるイベント用ページに切り替えて下さい!』
「……ど、どうしましょう?」
困惑のまま夢に投げかけると彼女は開いたソファに寝転び
「私は夏目先輩の無茶ぶりに歌いすぎて喉が……」
「ですよね……城島先輩達は閉会式の為に行っちゃったし、他の人も集計の為に行っちゃったし……!」
そもそもそんな話は聞いてない、と困惑していた時連絡用の受話器がかかり京進学園が歌っている間に選曲予約をしておいて欲しいと連絡が入る。
「…………」
急かされていることもあり、今から呼びに行くことも出来ず黙り込むと夢は起き上がり
「……そんなに歌うの嫌い?」
「えっ? いえ、そういう訳じゃ」
と反射的に答えそれは本心である。
しかしこの合同企画の最中、一曲も歌わなかった彩音に対して心配の目を向けると
「ただ、誰かに聞かれたり、人前で歌うのがあまり……」
「…………」
「…………」
やがて、黙り込んでいた彩音が操作機に手を伸ばし、その姿に夢は目を丸くしながら問いかける。
「私が歌おうか?」
「……いえ、ずっと歌わせてしまいましたし、歌うのは、嫌いではないので……」
と三曲入れると京進学園生徒会の三曲目も最後のサビに入る。曲が終わるのを待ちながら、彩音は手に持ったマイクをグッと握り込む。
やがて、視界の端で動きを見せた姿に視線を向けると夢が扉に向かっており、寸前で振り返ると
「分かっていればもう少し考えて歌ったんだけど。あまり意味は無いかもしれないけど、私も集計の手伝いに行ってくるね」
「……!」
それは、自分がいては歌いづらいだろうという彼女なりに気を使っての事だと察し目を丸くすると
「ありがとう。例えどんな歌でも生徒会の皆は笑ったりしないと思う」
彼女が去り、間もなく放送が入ると
『それでは次は桜丘高校生徒会の皆さん、お願いします!』
イントロが流れ出し、やがて歌が聞こえると参加していた紫音が反応しながらスピーカーへと視線を向け
「この声は……」
「この歌は確か……SORAの」
そして同じく、学園長達のいる部屋も言葉を交わしており
「五年ほど前に放送したドラマの主題歌ですね」
「今歌っているのが、例の……?」
歌を聴きながら笑みを浮かべた学園長を見るとDropsの一人が投げかけ
「声がよく通っていて、聞き取りやすくて力強い……でも、一体どうやって」
「なに、彼女を歌わせることくらい簡単さ。何せ彼女自身『歌』が好きなのだから」
そして京進学園生徒会に負けないほどの歌声に、生徒会合戦を聞いていた生徒たちもまた思わず聞き入る程で
「誰が歌ってるんだろう。凄く上手……」
「今って桜丘の番だよね?」
一曲目が終わり、二曲目へと入るとまた別の曲を歌い始める。
そして三曲目に入り、再びイントロが流れ始めると聞き覚えのある音に紫音やDropsの三人は再び表情を変える。
「この曲は……!」
そして、歌に入ると再び声を上げ
「この声……!」
「この曲がどうかしたのですか?」
Dropsの声に教師たちが反応し、学園長に視線を向けると彼らは教師の言葉が耳に入らぬように聴き込んでおり、その姿に教師達の言葉は止まる。
それは以前学園長から見せられた番組の中で虹の歌姫が歌ったメドレーの中にあった曲であり、あの夏祭りで歌われた曲でもある。
そして、一曲目はしっとりとしたバラード、二曲目はロック、三曲目はポップスとそれぞれ違うジャンルの歌を雰囲気に沿った歌い方で歌ってみせた。
「一曲目と三曲目を歌った人も二曲目の人もめちゃくちゃ上手かったなあ」
そう多くの生徒が思い、あの三曲はどこかの区切りで別の人が歌っていると自然と判断されている。
しかし、実際に歌っていたのは一人。
それはあの正体を確信めいたものにするには十分だった。
合同イベントは無事終わりを迎え、彩音がカラオケルームを出た時廊下で待っていた紫音の姿に立ち止まる。
「紫音、紫音も参加していたの?」
「ええ。勇気を出して……クラスメイトを誘ってみたのです」
そして数秒間が開いた後、紫音の口から出た言葉に彩音は目を丸くする。
「……貴方は『虹の歌姫』だそうですね」
「虹の歌姫?」
深刻そうな表情で確かめる紫音に対して彩音はきょとんとしており、二人の間に妙な差が生まれる。
しかし長い沈黙の後、思い出すように声を上げ
「……あぁ! 最初何のことを言ってるのかと思ったら」
「……! やはり、貴方が」
確信を持ち、紫音は俯きながらぐっと手を握り込むと
「そんなこともあったような気がするけど、そんなもう誰も覚えてないようなことを紫音が知ってるなんて」
「学園長からお聞きしたのです」
そう告げる声に彩音の表情が変わると
「かつて私の学校の学園長は貴方と共演した事があるそうです。あれほどの歌唱力がありながら……歌手やアイドルを目指さないのですか?」
その問いに黙り込む彩音に紫音は握っていた手をさらに強く握り、彩音に真剣な眼差しを向けると
「何故あれほどの話題を生みながらすぐ消えてしまったのですか? 彩音ならトップアイドルになれると思うのです」
やがて、黙り続けていた彩音が口を開くと紫音は視線を上げ目を丸くした。
「確かに歌うのは好きだし、小さい頃は歌手になりたいって思ったこともあった。でも職業としてじゃなく歌が好きだから歌いたいんだ」
「……そう、なんですか」
時の流れと共に虹の歌姫という伝説は幻となり人々の記憶から消え、一過性の流行りや噂なんてそんなもの。
「虹の歌姫は、七歳にも関わらず大人顔負けの歌唱力と、その歌い分けによってつけられたものだよ」
と彩音は肩を竦めながら話し
「どんなに歌が上手いと言われても、私は人と話すのがずっと苦手なんだ。言っちゃえば……ただ歌が歌えるだけなんだ」
芸能界という世界はキラキラしていて、容姿と才に恵まれた人だけが辿り着ける世界であり、そんな人達の血の滲む努力の果てに掴める世界なんだと京進学園に通う生徒を見て改めて思ったと語り
「アイドルや歌手ってさ、沢山の人が夢に見てなりたいって思う職業だと思うんだ」
スポーツ選手とか、歌手とか、パティシエとか小さい頃はそんなものを夢にして、現に彩音も小さな頃将来の夢を書く欄には歌手と書いていたと言う。
「紫音みたいな人はともかく、殆どの人の夢ってそんなもんなんだ。漠然とした……でもそれはまだ将来とか良く分かってなくて、ただそれを書かなきゃいけない時があったから書いただけの夢」
狭い世界で生きてる中、知るものから書かされた夢でしかない。でも、と話を続ける彩音に紫音が顔を上げ視線を向けると
「でも、今の私は書かされた夢じゃなくて自らの意思でこうしたいってものがある。それが叶えられるかは別としてね」
「…………」
やがて紫音は俯き、目を伏せながら胸に握った手を当てると
(少し……残念です。もし彩音と共に共演できたらどんなに楽しそうか)
ユニットを組んで同じ歌を歌ったり、時に同じ音楽番組に共演したり……彩音の歌に奮い立たされたり。
少し想像すれば、より一層輝いた未来が待っていそうでこんなにも胸が弾むのにと思っていた時ふと声が聞こえた。
「紫音の活躍、楽しみにしてるよ」
「え……?」
その声に顔を上げると、唖然とした紫音を前に彩音はまるで夢を語るように語っていき
「もし紫音が有名なアイドルになった時、そんな紫音の曲を作った事があるって凄いことだと思うの」
「……!」
「それに、こうして仲良くなった友達がアイドル界に入ってテレビに出るなんて凄くない? 今のうちにサイン貰っておくべきかな」
「……ふふ、そうですわね」
思わず綻ばせ、そう紫音は笑っていた。
「もー。散々な目に合ったよ」
「こちらも皆さん楽しんでおられましたよ」
帰宅するなり嘆く彩音に対して啓は笑いながら返し、そのまま発せられた声に彩音は視線を向ける。
啓は安心したような笑みを浮かべながら
「お嬢様も……生徒会として参加なされていたのですよね。お疲れ様でした」
(啓は気づいたんだろうか)
そう思いながら目を細めると
「交換留学が終わり、ライブの仕事も終わりこの交流会も無事終え……ひとまずここ最近の忙しなさも一段落して安心しています」
「何言ってんのさ」
そう返ってきた言葉に啓が目を丸くすると彩音は呆れるように息を吐き
「本来、ここまであったあれこれはこの学校だからこそあったイレギュラーなものだけど……本来この二学期は忙しいことが確定してる時期なんだからね」
そう説明するように話を続ければ
「というのも、この秋には体育祭やら文化祭って言う一年でも一、二を争う大きなイベントがあるんだから」
「確か、始業式の時に後藤先生も仰られていましたが、体育祭や文化祭とは一体何なのですか……?」
「ほら、五月に球技大会があったでしょ。あれは主に球技を競技にした大会だけど……体育祭って言うのは体育祭ならではの競技で競う大会みたいなものなの」
どの学校でもあると思われる代表的なものは玉入れやリレー。そう語る彼女がふと微かに心を弾ませるような表情でいることに気づくと
「高校の体育祭だし、パン食い競走とか障害物リレーとか借り物競争とか夢のある競技がないかと期待してるんだけど」
そして、文化祭はそんな体育祭の後に行われる学校単位でのお祭りであると説明する。
簡単に説明すると、クラスや部活動単位で出し物を決め、それらを披露しながら自身も客として他クラスなどの出し物を見て回るお祭りだと話すと
「学校生活でもほぼ全員がこの文化祭を一番楽しみにしてると言っても過言ではない!」
「つまり、お嬢様も楽しみにされていると言うことですか?」
「まあね。なんて言ったって高校の文化祭だし! 東京の学校の文化祭だし、これだけクラスも敷地も広くて部活も多かったら期待しないわけがないよ!」
そう語る彩音は珍しくも目を輝かせており、啓は目を丸くしながらそんな彩音を見ていた。
「お嬢様がそれほどまでに楽しみにされているなんて……」
「多分、予言しとくけど君はクラス中の女子から文化祭の時一緒に見て回ろうと誘われまくるだろうね。下手したら他のクラスからも話が来る可能性も……」
しかし、生徒会に関わりだしてしまった以上彩音は生徒会としての何かがある可能性があると語る。
「主軸は第一生徒会とは言え、文化祭みたいな大きな行事の時には第三生徒会にも手伝ってもらうって話は聞いてたからねー」
「やけに嬉しそうですね」
「それはそうよ。なんたって仕事を理由にあんたと別行動が堂々と出来るんだから!」
そうキッパリ言い切った彩音に啓の表情が微かに曇り
「うちのクラスが何をすることになるのかは知らないけど、好きなだけクラスや他のクラスの女子と見て回っていいからね! 生徒会の仕事も喜んで引き受けるつもりだし!」
「……そんなに私と行動を共にするのが嫌なのですか?」
「そりゃそうよ。あんたといると目立つんだもん」
現にそれは事実である為言い返せないものの
「特に目立つような事はしていないつもりなのですが……何故あそこまで注目を集めるのでしょう」
「そりゃただでさえ帰国子女ってだけで目立つ要素があるのに成績はいいし、運動も出来るし見た目もよくて誰それ構わず親切心振りまいてりゃね」
カラオケ大会から二日後の放課後。
ボールをバットで打つ音や生徒の声が聞こえる中、バスケ部が休部だった翔太は屋上から街並みを見つめていた。
あのブレスレットの一件以来、更に深まるばかりの溝にどうすればいいのか葛藤していても正しい答えは見つからない。
(このままじゃまた動かないまま……)
奇跡的な運命か、残酷的な運命か、後悔の先に再び巡り会えた以上もう一度後悔するようなことにはしたくないと強く下ろされていた拳を握る。
そんな時、どこからか声が聞こえたような気がして屋上へ出る扉の方へ振り返るが背後には誰もいない。
気のせいかと思った瞬間、何かが物凄い勢いで真横を突き抜け目の前にあった屋上へ出る扉のすぐ横の壁に巨大な針が突き刺さっていた。
「魔物……!?」
驚いた直後瞬く間に険しい形相に変わり、武器である刀を手に現そうとした時背後から先程微かに聞こえたような声が聞こえた。
「またこの顔を見る事になるとは……つくづく反吐が出る」
「っ!?」
聞こえた声に再度振り返った瞬間、さっきまで誰もいなかったはずの場所に誰かが立っていた。
それは魔物ではなく、形状的には人の姿。
全身は青く紺色のローブに包まれ、素顔すらもフードによって隠され見えなかった。
「運が悪い。いや、最悪だな」
「誰だ……!」
尋ねかけた後に人物はしばらく黙り込んでいたものの、やがてフードに手をかけると外し隠されていた顔が露わになった瞬間翔太は言葉を失った。
「な……」
「…………」
視界に映った少女は小柄で海のように深い青色の服を纏い、それは現代日本で身につける衣服からは程遠くどこかのゲームに出てきそうな長いフード付きのローブのよう。
翔太が言葉を失った理由はそんな現代日本離れした姿にもあるが、何よりもその姿がある人物に似ていること。
瞳は青けど鋭く、髪も深い青色ながらパーマがかってボリュームがあるように見えその長さは肩まである。
それは驚くほどよく知る姿に似ており
「…………」
「……っ!」
あの人物によく似た容姿をした少女は剣を握ったまま無言で翔太に向け飛び出し、迫り来るなり本能が危険を察知し握っていた刀で受け止めた。
「くっ……何なんだよお前は……!」
押し切られないよう押し返しながら苦い表情を浮かべ、その目に氷のように冷たく鋭い瞳が映る。
「まるであいつに似て……」
間もなく、間合いを取るよう刃が離れると青い姿をした少女は翔太を見下ろすように冷酷な視線を向けながら口を開き、聞こえた言葉に翔太は目を丸くし見上げた。
「俺はアクア。あいつの中にあった闇の心を具現化した存在」
「な……アクア……?」
体勢を整えながら見上げると、彩音によく似た姿をした少女は翔太に向けた鋭い視線をより鋭くし
「よくもぬけぬけと俺達の前に姿を現せたものだ」
そして、翔太が謎の存在と遭遇した日の夜。
部屋に戻った北条啓は机の上に置かれた手紙を手にし見つめ、それはいつも彩音を前にした時のような穏やかなものとは違う表情をしていた。
手紙の入った封筒をしばらく見つめ、引き出しからペーパーナイフを取り出すと綺麗に切っていき封を開ける。
やがて中に入っていた紙を取り出し、静寂の中僅かに険しい表情で文面を見つめていた。
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