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第15話 二つの自分

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 私は、お兄様にお姉様のことを相談していた。
 結局、私はお姉様を助けたいという結論を出せなかった。
 私の心の中には、彼女がいなくなればいいのにという感情が消えないのだ。そんな自分が、私はどうしようもなく嫌なのである。

「……ミリティアは、マーティアのことが嫌いなのかな?」
「え?」
「マーティアのことが憎くて仕方ない。嫌いで仕方なくて、消えてしまえばいいと思っているのかな?」

 そこで、お兄様はそのようなことを聞いてきた。
 私が、お姉様をどう思っているか。その質問は、好きか嫌いかで答えられるようなものではない。

「嫌い……という訳ではありません。ただ、あの人が優秀だったから、私は不当な扱いを受けてきました。だから、お姉様に対して、私はいい思いを持っていません。それでお姉様を恨むのがお門違いだとわかっていても……私は、どうすることもできないのです」
「そうか……」

 私にとって、お姉様は複雑な存在だった。
 私が不当な扱いを受けてきたのは、彼女が優秀だったからである。だが、そのことに対して、彼女に一切非はない。ただ、優秀だっただけ。悪いとしたら、周りの人達の方である。

 それがわかっていでも、私はお姉様を恨まずにはいられない。
 彼女のせいで、私は虐げられてきた。そのように考えてしまうのだ。

「……ミリティアが考えていることは、別におかしいことではないよ。僕だって、そんな風に考えることがない訳じゃない」
「お兄様も?」
「マーティアが優秀でなければ、情けない兄だとか、不甲斐ない兄だとか、そういうことは言われなかった。マーティアがいなければ、そう考えたことは何度もあるよ」

 私が考えていたことは、お兄様も考えたことがあることであるらしい。
 しかし、お兄様はその考えを捨てることができる人だ。お姉様を迷わず助けたいと、考えられるような人なのである。
 だから、私とは根本的に違う。そう思ってしまう。

「でも、そんな自分というのは、なんだか嫌なんだ」
「嫌……」
「マーティアに対して、そういう感情を抱く自分が嫌だった。そんなことを思いたくないと、そう考えるんだ」

 しかし、お兄様が言ってきたことは、私にとってとても理解できることだった。
 お姉様を嫌う自分が嫌になる。それは、何度も感じてきたことだ。

「それで、僕は気づいたよ。そんな自分が嫌な自分もいるのだと」
「嫌な自分もいる?」
「ああ、嫌なことを思う自分ばかりに気を取られているかもしれないけど、それを否定しようとする自分もいるんだ。そのどちらも僕であることに変わりはない。だから、僕は後者の方を優先できる僕であろうと思っている」

 お兄様の言葉に、私は驚いた。
 そのような考え方など、したことがなかったからだ。
 その考え方に、私は改めて自分を考えるのだった。
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