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9.家出した理由は(モブside)
メイドのリエネッタから届いた手紙を読んだことで、マートン伯爵はミリーシャの動向というものをある程度知ることになった。
彼女がマートン伯爵家から家出したこと、それは本人の意思によること、ラナフィス子爵家を頼ること、手紙にはそれが記載されていた。
それらの事実から、今回の件が危惧していたようなことではないと、マートン伯爵は理解した。ミリーシャに危険はない。それは彼にとって、とりあえず安心できる事実であった。
しかしその事実から、マートン伯爵は改めて悩むことになった。ミリーシャの家出について、彼は向き合わなければならなかったのだ。
「……居心地が悪いと思っていた、ということだろうか?」
「……そうなのかもしれませんね」
呼びかけに答えたティシアの表情が険しいことに、マートン伯爵は気付いた。
彼女もまた、ミリーシャの家出について悩んでいる。それを悟ったマートン伯爵は、ため息をつく。
「きっと、私のせいでしょう。彼女との関係は良くありませんでしたから」
「そのようなことはない。君はよくやっていた。私はそれを知っている」
「いいえ、私はあの方の代わりになることはできませんでした。それは誰よりも私がわかっています」
「以前にも言ったかもしれないが、代わりになどなる必要はない。君は君だ」
ティシアに対して励ましの言葉をかけながら、マートン伯爵は考えていた。ミリーシャが家出をした理由が、なんなのかを。
ティシアの言う通り、継母との関係に悩んでいたのか、それとも自分との関係に悩んでいたのか、あるいはその両方か、考えられることは多々あった。
結局の所、マートン伯爵は結論を出すことはできなかった。本人に聞く以外、それを知る方法はないと、そう思ったのである。
ただ、今すぐにそれができる訳ではないことをマートン伯爵は理解していた。少なくともミリーシャが話に応じてくれる気になるまで、待たなければならない。彼はそう思っていた。
「旦那様、大変です!」
「む……一体なんだ?」
そんなことを考えていると、執務室に使用人が慌てた様子で入ってきた。
それにマートン伯爵は深くため息をついた。また新たな問題が起こったことは、明らかだったからだ。
「メセリア様がミリーシャ様の元へ……」
「何?」
「置き手紙が残されて、お姉様を迎えに行くと書いてあって……」
「な、なんだと?」
「あの子……なんてことを」
メセリアの動きに、マートン伯爵もティシアもひどく動揺することになった。
長女に続いて、次女の大胆な行動、それに二人は頭を抱えるのだった。
彼女がマートン伯爵家から家出したこと、それは本人の意思によること、ラナフィス子爵家を頼ること、手紙にはそれが記載されていた。
それらの事実から、今回の件が危惧していたようなことではないと、マートン伯爵は理解した。ミリーシャに危険はない。それは彼にとって、とりあえず安心できる事実であった。
しかしその事実から、マートン伯爵は改めて悩むことになった。ミリーシャの家出について、彼は向き合わなければならなかったのだ。
「……居心地が悪いと思っていた、ということだろうか?」
「……そうなのかもしれませんね」
呼びかけに答えたティシアの表情が険しいことに、マートン伯爵は気付いた。
彼女もまた、ミリーシャの家出について悩んでいる。それを悟ったマートン伯爵は、ため息をつく。
「きっと、私のせいでしょう。彼女との関係は良くありませんでしたから」
「そのようなことはない。君はよくやっていた。私はそれを知っている」
「いいえ、私はあの方の代わりになることはできませんでした。それは誰よりも私がわかっています」
「以前にも言ったかもしれないが、代わりになどなる必要はない。君は君だ」
ティシアに対して励ましの言葉をかけながら、マートン伯爵は考えていた。ミリーシャが家出をした理由が、なんなのかを。
ティシアの言う通り、継母との関係に悩んでいたのか、それとも自分との関係に悩んでいたのか、あるいはその両方か、考えられることは多々あった。
結局の所、マートン伯爵は結論を出すことはできなかった。本人に聞く以外、それを知る方法はないと、そう思ったのである。
ただ、今すぐにそれができる訳ではないことをマートン伯爵は理解していた。少なくともミリーシャが話に応じてくれる気になるまで、待たなければならない。彼はそう思っていた。
「旦那様、大変です!」
「む……一体なんだ?」
そんなことを考えていると、執務室に使用人が慌てた様子で入ってきた。
それにマートン伯爵は深くため息をついた。また新たな問題が起こったことは、明らかだったからだ。
「メセリア様がミリーシャ様の元へ……」
「何?」
「置き手紙が残されて、お姉様を迎えに行くと書いてあって……」
「な、なんだと?」
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