誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗

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10.聞こえてきた足音

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 ルーミルでの暮らしは、順調であるといえた。
 バランド商会での仕事もこなせている。結構評価もされているし、そのお陰もあって生活も特に困っていない。

「ふう……なんだかんだ、一人は久し振りだなぁ」

 仕事が休みの日、私はベッドの上で寝転がっていた。
 今日はリエネッタさんが所用があるため、私の部屋に来ていない。だからだろうか、もうすぐお昼だというのに、私は寛いでいた。

 それは怠惰な生活といえるかもしれない。しかし体は、動いてくれなかった。それなりに疲労が溜まっているということだろうか。あまり自覚はないのだが。

「ああ、でもそろそろお昼にしないと駄目か」

 昼食はきちんと取っておかなければならない。明日からも、バランド商会での仕事は続く。稼ぐためにも、健康には気を付けておくべきだろう。

「……足音?」

 私がやっとベッドの上から起き上がった瞬間、足音が聞こえてきた。
 集合住宅は、音が響いてくることがある。普通にしていたらそうではないが、大きな音などを防げる程ではないのだ。

 足音がこれ程響いてくるということは、急いでいるということだろう。
 そういった音を聞くと、少し不安になってくる。自分とは無関係なことかもしれないが、ここの住人とは既に顔見知りなので心配だ。

「……ここですか?」
「あ、あの……まずどうか、落ち着いてください」
「私は落ち着いています」
「……うん?」

 足音が止まったと思ったら、今度は声が聞こえてきた。
 その声には、聞き覚えがある。二人くらいの声が聞こえるが、そのどちらとも、だ。

 一つは、リエネッタさんの声である。彼女は珍しく焦ったような声で、もう一人に呼びかけているといった感じだ。
 そしてもう一つは、妹のメセリアの声のように聞こえた。しかし彼女が、こんな所にいる訳はない。これはきっと、聞き間違いであるだろう。

「お姉様、いるんでしょう? 開けてください」
「……いや」

 戸を叩く音とともに、私に呼びかけてくる声が聞こえてきた。
 それは否定しようがない程に、妹の声であった。どうやら、訪問者がメセリアであることは間違いないようだ。

 それを理解した瞬間、頭の中には多くの疑問が浮かんできた。
 何故、彼女がここにいるのか、リエネッタさんの用とはこれに関係することだったのか、色々と思う所はある。

 ただまずは、妹を部屋に招き入れるべきだろう。ここは壁がそこまで厚くない。このままでは騒ぎになって、他の住人に迷惑をかけてしまう。
 それは当然、避けたい所だ。私が貴族だとばれるのもまずいし、とにかく腹を括るとしよう。
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