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30.誓いを守るために
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アルシェイド王国において、女性は爵位を継承することができなかった。
故に女子しかいない家は婿を迎えて、その婿に爵位を継承させるということに、なっていたのである。
ただそれは今や、昔の話だ。現在のローレント侯爵は、私である。
「……どうしてこんなことになったのか、未だによくわかっていないのですが」
「国王陛下は、ヴォーラスとの一件で俺に貸しを作ったと考えていた。あなたを助けたということが評価されたのだろう。故に一つ言うことを聞いてくれたというだけだ。幸いなことに、陛下も男子優先には疑問を持っておられた。やはり陛下も、俺が尊敬できると思える方だ」
「その話は、もう何度も聞きました」
夫であるジオルト様は、なんとも飄々としている。
私が執務室でお父様が座っていた当主の椅子に座っている傍らで、彼はいつもお母様が腰掛けていた椅子に悠々と座っている。
「……大体俺などは、当主の器ではない。性分と言ってもいいかもしれないが、裏でこそこそと走り回っている方がお似合いだ」
「そういうことなら私だって同じです。そもそも問題があったら、二人で走り回っているではありませんか」
「俺としてはあなたにはその椅子に腰掛けて構えていてもらいたいものなのだがな……あなたがそんな風に奔放であると、お義父上やお義母上も心配する」
「早々に隠居した二人のことなんて、知ったことではありませんよ」
お父様とお母様は、なんとも早い内に隠居することを選んだ。
それはアルシェイド王国において認められた女性の爵位継承の例を、早急に作りたかったからなのだろう。私はこの国において、最初で現在唯一の女性爵位継承者である。
我ながら、なんとも重荷を背負わされたものだ。もちろん、より良い未来を作っていくために必要なことではあるとは思っているが、釈然としない部分もある。
「お義父上やお義母上も、我々が不在の間は執務にあたってくださっている。こうして仕事をしている間、子供達の面倒も見てくれているではないか。それについては、感謝するべきことだ」
「もちろん感謝はしています。ただ子供達の面倒を見てくれていることに関しては、単に孫が可愛いだけではありませんか? 使用人に任せても良いことです」
「こういう時には、両親を立てるべきだろう」
「それはジオルト様が婿だからですね。私は娘なので、多少容赦ないことも言わせてもらいます」
かつて両親に対して啖呵を切ったジオルト様も、今は二人の肩を持つことが多い。
そもそも出会った頃と比べると丸くなった訳ではあるが、偶には昔のように一緒に両親の文句の一つでも言って欲しいのが、今の私の心情である。
「ふっ……」
「ジオルト様、何を笑っているのですか?」
「いや、俺の嫁殿は随分と可愛らしいことを言うものだと思ったまでのことだ」
「なんですか、それは……」
「称賛の言葉だ。受け取ってもらえないのか?」
「受け取りますけど、恥ずかしいんです。ジオルト様は、時々変なことを言い出しますよね……」
私とジオルト様は、そんなことを言いながら執務を進めていた。
今の私達のように幸せな時間を誰もが得られるように、これからも努めていかなければならない。それは私の使命であり、親愛なる夫と誓ったことなのだ。
END
故に女子しかいない家は婿を迎えて、その婿に爵位を継承させるということに、なっていたのである。
ただそれは今や、昔の話だ。現在のローレント侯爵は、私である。
「……どうしてこんなことになったのか、未だによくわかっていないのですが」
「国王陛下は、ヴォーラスとの一件で俺に貸しを作ったと考えていた。あなたを助けたということが評価されたのだろう。故に一つ言うことを聞いてくれたというだけだ。幸いなことに、陛下も男子優先には疑問を持っておられた。やはり陛下も、俺が尊敬できると思える方だ」
「その話は、もう何度も聞きました」
夫であるジオルト様は、なんとも飄々としている。
私が執務室でお父様が座っていた当主の椅子に座っている傍らで、彼はいつもお母様が腰掛けていた椅子に悠々と座っている。
「……大体俺などは、当主の器ではない。性分と言ってもいいかもしれないが、裏でこそこそと走り回っている方がお似合いだ」
「そういうことなら私だって同じです。そもそも問題があったら、二人で走り回っているではありませんか」
「俺としてはあなたにはその椅子に腰掛けて構えていてもらいたいものなのだがな……あなたがそんな風に奔放であると、お義父上やお義母上も心配する」
「早々に隠居した二人のことなんて、知ったことではありませんよ」
お父様とお母様は、なんとも早い内に隠居することを選んだ。
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我ながら、なんとも重荷を背負わされたものだ。もちろん、より良い未来を作っていくために必要なことではあるとは思っているが、釈然としない部分もある。
「お義父上やお義母上も、我々が不在の間は執務にあたってくださっている。こうして仕事をしている間、子供達の面倒も見てくれているではないか。それについては、感謝するべきことだ」
「もちろん感謝はしています。ただ子供達の面倒を見てくれていることに関しては、単に孫が可愛いだけではありませんか? 使用人に任せても良いことです」
「こういう時には、両親を立てるべきだろう」
「それはジオルト様が婿だからですね。私は娘なので、多少容赦ないことも言わせてもらいます」
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「ふっ……」
「ジオルト様、何を笑っているのですか?」
「いや、俺の嫁殿は随分と可愛らしいことを言うものだと思ったまでのことだ」
「なんですか、それは……」
「称賛の言葉だ。受け取ってもらえないのか?」
「受け取りますけど、恥ずかしいんです。ジオルト様は、時々変なことを言い出しますよね……」
私とジオルト様は、そんなことを言いながら執務を進めていた。
今の私達のように幸せな時間を誰もが得られるように、これからも努めていかなければならない。それは私の使命であり、親愛なる夫と誓ったことなのだ。
END
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