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32.出された声明

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「思っていたよりも、上手くいくものだな……」
「ええ、そうですね……」

 ロナード様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 カルランド公爵家は、声明を出してきた。それは、私が公爵家の一員ではないという声明である。

「私の母が不義理を働いた結果生まれたのが私ですか……」
「ああ、俺の作戦通りに動いてくれたようだな」
「ゴドルスさんが上手く取り入ったのでしょうね……」
「まあ、エリクシスが信頼している男だからな……そういう風に懐に入るのが上手い奴なのだろうさ」

 カルランド公爵家のこの動きは、ロナード様の掌の上であった。
 私はどこまでいってもカルランド公爵家の一員である。一員である限り、彼らと関わり続けなければならないのだ。
 それをロナード様は断ち切ろうとしている。私に公爵家の血が流れていない。そんな理論を用いて。

「これで言質は取ることができた。あなたは、カルランド公爵家の血を引いてはいない」
「それをこちらは利用するのですよね?」
「ああ、あちらはあなたの身分を都合のいいように書き換えた訳だが、今度はこちらが書き換える番だ」

 ロナード様は、机の上にある書類のいくつかを見ていた。
 そこには、王家の家系図などが記されている。今回は、それを使うということだろうか。

「この辺りが、最適か……」
「えっと……私が、そこに入るんですか?」
「ああ、俺と兄上の代以外の王族は謎な面が多いからな。ここにあなたが入っていても、まったくおかしくはない」
「本当に大丈夫なんですか? もしも、王家の血筋だと主張する者が現れたら……」
「今回の出来事は、王族が厳正な審査を行った結果、判明したことだ。しかも、カルランド公爵家もそれを証明してくれている。そんな風に全てが固まることなんて早々ないさ」

 王家とカルランド公爵家の調査の結果、それはとても信頼できるものだろう。
 本当は、両家とも真っ赤な嘘ではあるが、権力を持った二つの家が同じ主張をしているというのは大きなことであるはずだ。
 そして、これは外部からみればカルランド公爵家には何のメリットもない主張である。王家の妻となった娘をわざわざ血の繋がりがなかったなんて、普通は明かさない。
 そのため、外部から見れば、これは真実であると考えられる可能性が高いということだろう。

「あっちも大体的に声明を出してきたからな。これを覆すのは難しいだろう。あなたが王家の一員であるはずがないという主張をするかもしれないが、まあその辺りは上手くやるとしようか」

 ロナード様は、少し悪い顔をしながら笑っていた。
 彼は思っていた以上に恐ろしい人である。その表情を見ながら、私はそんなことを思うのだった。
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