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10.生粋の騎士
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出戻りというかなんというか、私はマークス侯爵家の自室に戻ってきていた。
部屋の中は、出て行く前とほとんど変わっていない。荷物は後で送ってもらう手筈だったのだ。ダンカー子爵家の様子が一早く知りたいから、私は最低限のものだけしか持って帰らなかった。
「レディオル様、助けていただき、本当にありがとうございます」
「いえ、私は騎士として当然のことをしたまでですから……」
私は部屋に招いたレディオル様に、お礼を伝えていた。
彼によってマルガン様と野盗が逃げ出した後、すぐに近くの町から救援がやってきた。町の近くでかなり大きな襲撃が起こっていため、駆けつけてくれたそうだ。
それでその場は何とか収まった。被害は甚大であったが、それでもケイティアといった女性の使用人達が無事だったことは、不幸中の幸いだったといえる。
「それに私は、今回の件に関して十全の働きだったとは言えません。マルガン侯爵令息など野盗達を逃がし、そもそも他の野盗を切り捨てました。本来なら捕まえるべき者達をです」
「それについては仕方ないことです。あの状況で私達を守るためにはああするしかなかったのではありませんか?」
「……さらに言えば、私がもっと早くに駆けつけていれば、被害を出さずに済みました。亡くなった方々のご冥福をお祈ります」
レディオル様は、今回の件に関してかなり心を痛めているようだった。騎士というだけあって、やはり人命といったものに関しては人一倍敏感なのだろうか。
それを見ていると、自分が少し情けなくなってくる。亡くなった人達のことは一応悼んでいるが、私は既に割り切っている所があるからだ。
ダンカー子爵家に属する中で、私の味方といえるのはディオン様とケイティアくらいのものである。
嫁入りにあたって同行してきた使用人達は父の手のもので、はっきりと言ってそれ程良い印象はない。中には私を罵倒してきた者もいる。その者達の死を引きずるということはできない。
強いて言うなら、御者や護衛については可哀想だという気持ちが強い。
彼らは最寄りの町で雇った者達だ。護衛などは特に危険がつきものの職業であるが、それでも今回は悲惨だったとしか言いようがない。
「それにしても、レディオル様はどうしてあそこに? 騎士団の装束でしたし、任務だったということでしょうか?」
「いえ、どちらかというと私用です。急なことでしたから、任務からそのままに目的地に向かうことになりましたが……」
「なるほど、その用は大丈夫なのですか?」
「このような事態の中で、優先するようなことではありません」
生粋の騎士であるレディオル様が、あの場に駆けつけてくれて本当に良かった。
もし彼が来なかったら、私の命はなかっただろう。ケイティア達も、野盗に好きなようにされていたかもしれない。今考えてみると、恐ろしい話だ。
いやその恐怖の原因は、未だ片付いていない。そのことについて私は、少なからず考えておく必要があるといえるだろう。
「マルガン様のことですが……」
「それについては、この後マークス侯爵家の方々と話すことになっています」
「これは大きな問題……ですよね?」
「そうなります。マークス侯爵にとっては酷な話ですが……仕方ありません」
マルガン様の行いは、マークス侯爵家にとって大きな痛手となるだろう。
夫妻やミルティア嬢のことを知っているが故、私としては心が痛い所だ。
本当にマルガン様は、余計なことしかしていないといえる。そういう意味では、彼を追い出したマークス侯爵家の判断は正しかったのだが。
部屋の中は、出て行く前とほとんど変わっていない。荷物は後で送ってもらう手筈だったのだ。ダンカー子爵家の様子が一早く知りたいから、私は最低限のものだけしか持って帰らなかった。
「レディオル様、助けていただき、本当にありがとうございます」
「いえ、私は騎士として当然のことをしたまでですから……」
私は部屋に招いたレディオル様に、お礼を伝えていた。
彼によってマルガン様と野盗が逃げ出した後、すぐに近くの町から救援がやってきた。町の近くでかなり大きな襲撃が起こっていため、駆けつけてくれたそうだ。
それでその場は何とか収まった。被害は甚大であったが、それでもケイティアといった女性の使用人達が無事だったことは、不幸中の幸いだったといえる。
「それに私は、今回の件に関して十全の働きだったとは言えません。マルガン侯爵令息など野盗達を逃がし、そもそも他の野盗を切り捨てました。本来なら捕まえるべき者達をです」
「それについては仕方ないことです。あの状況で私達を守るためにはああするしかなかったのではありませんか?」
「……さらに言えば、私がもっと早くに駆けつけていれば、被害を出さずに済みました。亡くなった方々のご冥福をお祈ります」
レディオル様は、今回の件に関してかなり心を痛めているようだった。騎士というだけあって、やはり人命といったものに関しては人一倍敏感なのだろうか。
それを見ていると、自分が少し情けなくなってくる。亡くなった人達のことは一応悼んでいるが、私は既に割り切っている所があるからだ。
ダンカー子爵家に属する中で、私の味方といえるのはディオン様とケイティアくらいのものである。
嫁入りにあたって同行してきた使用人達は父の手のもので、はっきりと言ってそれ程良い印象はない。中には私を罵倒してきた者もいる。その者達の死を引きずるということはできない。
強いて言うなら、御者や護衛については可哀想だという気持ちが強い。
彼らは最寄りの町で雇った者達だ。護衛などは特に危険がつきものの職業であるが、それでも今回は悲惨だったとしか言いようがない。
「それにしても、レディオル様はどうしてあそこに? 騎士団の装束でしたし、任務だったということでしょうか?」
「いえ、どちらかというと私用です。急なことでしたから、任務からそのままに目的地に向かうことになりましたが……」
「なるほど、その用は大丈夫なのですか?」
「このような事態の中で、優先するようなことではありません」
生粋の騎士であるレディオル様が、あの場に駆けつけてくれて本当に良かった。
もし彼が来なかったら、私の命はなかっただろう。ケイティア達も、野盗に好きなようにされていたかもしれない。今考えてみると、恐ろしい話だ。
いやその恐怖の原因は、未だ片付いていない。そのことについて私は、少なからず考えておく必要があるといえるだろう。
「マルガン様のことですが……」
「それについては、この後マークス侯爵家の方々と話すことになっています」
「これは大きな問題……ですよね?」
「そうなります。マークス侯爵にとっては酷な話ですが……仕方ありません」
マルガン様の行いは、マークス侯爵家にとって大きな痛手となるだろう。
夫妻やミルティア嬢のことを知っているが故、私としては心が痛い所だ。
本当にマルガン様は、余計なことしかしていないといえる。そういう意味では、彼を追い出したマークス侯爵家の判断は正しかったのだが。
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