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2.元婚約者の兄と
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私は力なくディレイル伯爵家の屋敷を歩いていた。
ロンベルト様から婚約破棄を告げられて、これ以上ここに留まる必要性があるとも思えなくなっていた。ラメルトン伯爵家の屋敷に、帰りたい。それが今の私の素直な気持ちだ。
「……おや、あなたは」
「え?」
「アレシア嬢、ですよね?」
そんな私は、声をかけられて少し驚いた。
声がした方向に目を向けると、そこには二人の男性が立っている。
その内一人は、よく知っていた。彼はロンベルト様の兄であるレヴォード様だ。
ただ、もう一人のことはよく知らない。身なりからして貴族ではあると思うが、レヴォード様のご友人だろうか。彼と同じくらいに背が高い端正な顔立ちの男性だ。どこかで見覚えがあるような気もする。
「今日は屋敷に来られていたのですね。知りませんでした。ロンベルトも言えば良かったというのに……」
「あ、えっと……」
今レヴォード様と顔を合わせるというのは、少々ばつが悪かった。
どのような顔をしていいか、正直よくわからない。なまじレヴォード様が友好的な態度であるというのもきつかった。先程話していたロンベルト様との落差に、気が参ってしまう。
「……レヴォード、少し落ち着け」
「うん? どうかしたのかい? シェリダン?」
「アレシア嬢は、何か訳アリのようだぞ?」
「訳アリ?」
そんな私を助けてくれたのは、レヴォード様の隣にいる男性だった。
彼は、私の方に視線を向けてくる。その鋭い目には多少の威圧感はあるものの、今はありがたかった。
「おや、何かあったのでしょうか?」
「何もなければ、そのような表情はしていないだろう」
「そういうものですか。すみません、気付かなくて。僕はそういった感性というものが、とことん鈍いようです。こっちのシェリダン・サンダイン侯爵令息は僕の友人なのですが、色男なんです。女性の些細な変化にも気付くことができるのです」
「その趣味の悪いジョークはお前の悪い癖だな、レヴォード……」
レヴォード様が名前を出してくれたお陰で、私は目の前にいる男性が誰であるかを理解した。
シェリダン様とは、舞踏会などの会場で何度か一緒したことがある気がする。親しくしていた訳ではないため、すぐには思い出せなかったが、今顔と名前が一致した。
「それで一体、何があったのでしょうか?」
「あ、えっと、実は……」
私はとりあえず、二人に事情を話すことにした。
レヴォード様にも、何れは伝わることだ。それなら今話しておいた方が話も早いと思ったのである。もっとも、シェリダン様に伝えてもいいかは微妙な所ではあるのだが。
ロンベルト様から婚約破棄を告げられて、これ以上ここに留まる必要性があるとも思えなくなっていた。ラメルトン伯爵家の屋敷に、帰りたい。それが今の私の素直な気持ちだ。
「……おや、あなたは」
「え?」
「アレシア嬢、ですよね?」
そんな私は、声をかけられて少し驚いた。
声がした方向に目を向けると、そこには二人の男性が立っている。
その内一人は、よく知っていた。彼はロンベルト様の兄であるレヴォード様だ。
ただ、もう一人のことはよく知らない。身なりからして貴族ではあると思うが、レヴォード様のご友人だろうか。彼と同じくらいに背が高い端正な顔立ちの男性だ。どこかで見覚えがあるような気もする。
「今日は屋敷に来られていたのですね。知りませんでした。ロンベルトも言えば良かったというのに……」
「あ、えっと……」
今レヴォード様と顔を合わせるというのは、少々ばつが悪かった。
どのような顔をしていいか、正直よくわからない。なまじレヴォード様が友好的な態度であるというのもきつかった。先程話していたロンベルト様との落差に、気が参ってしまう。
「……レヴォード、少し落ち着け」
「うん? どうかしたのかい? シェリダン?」
「アレシア嬢は、何か訳アリのようだぞ?」
「訳アリ?」
そんな私を助けてくれたのは、レヴォード様の隣にいる男性だった。
彼は、私の方に視線を向けてくる。その鋭い目には多少の威圧感はあるものの、今はありがたかった。
「おや、何かあったのでしょうか?」
「何もなければ、そのような表情はしていないだろう」
「そういうものですか。すみません、気付かなくて。僕はそういった感性というものが、とことん鈍いようです。こっちのシェリダン・サンダイン侯爵令息は僕の友人なのですが、色男なんです。女性の些細な変化にも気付くことができるのです」
「その趣味の悪いジョークはお前の悪い癖だな、レヴォード……」
レヴォード様が名前を出してくれたお陰で、私は目の前にいる男性が誰であるかを理解した。
シェリダン様とは、舞踏会などの会場で何度か一緒したことがある気がする。親しくしていた訳ではないため、すぐには思い出せなかったが、今顔と名前が一致した。
「それで一体、何があったのでしょうか?」
「あ、えっと、実は……」
私はとりあえず、二人に事情を話すことにした。
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