本当に妹のことを愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきなのではありませんか?

木山楽斗

文字の大きさ
2 / 20

2.元婚約者の兄と

しおりを挟む
 私は力なくディレイル伯爵家の屋敷を歩いていた。
 ロンベルト様から婚約破棄を告げられて、これ以上ここに留まる必要性があるとも思えなくなっていた。ラメルトン伯爵家の屋敷に、帰りたい。それが今の私の素直な気持ちだ。

「……おや、あなたは」
「え?」
「アレシア嬢、ですよね?」

 そんな私は、声をかけられて少し驚いた。
 声がした方向に目を向けると、そこには二人の男性が立っている。

 その内一人は、よく知っていた。彼はロンベルト様の兄であるレヴォード様だ。
 ただ、もう一人のことはよく知らない。身なりからして貴族ではあると思うが、レヴォード様のご友人だろうか。彼と同じくらいに背が高い端正な顔立ちの男性だ。どこかで見覚えがあるような気もする。

「今日は屋敷に来られていたのですね。知りませんでした。ロンベルトも言えば良かったというのに……」
「あ、えっと……」

 今レヴォード様と顔を合わせるというのは、少々ばつが悪かった。
 どのような顔をしていいか、正直よくわからない。なまじレヴォード様が友好的な態度であるというのもきつかった。先程話していたロンベルト様との落差に、気が参ってしまう。

「……レヴォード、少し落ち着け」
「うん? どうかしたのかい? シェリダン?」
「アレシア嬢は、何か訳アリのようだぞ?」
「訳アリ?」

 そんな私を助けてくれたのは、レヴォード様の隣にいる男性だった。
 彼は、私の方に視線を向けてくる。その鋭い目には多少の威圧感はあるものの、今はありがたかった。

「おや、何かあったのでしょうか?」
「何もなければ、そのような表情はしていないだろう」
「そういうものですか。すみません、気付かなくて。僕はそういった感性というものが、とことん鈍いようです。こっちのシェリダン・サンダイン侯爵令息は僕の友人なのですが、色男なんです。女性の些細な変化にも気付くことができるのです」
「その趣味の悪いジョークはお前の悪い癖だな、レヴォード……」

 レヴォード様が名前を出してくれたお陰で、私は目の前にいる男性が誰であるかを理解した。
 シェリダン様とは、舞踏会などの会場で何度か一緒したことがある気がする。親しくしていた訳ではないため、すぐには思い出せなかったが、今顔と名前が一致した。

「それで一体、何があったのでしょうか?」
「あ、えっと、実は……」

 私はとりあえず、二人に事情を話すことにした。
 レヴォード様にも、何れは伝わることだ。それなら今話しておいた方が話も早いと思ったのである。もっとも、シェリダン様に伝えてもいいかは微妙な所ではあるのだが。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

平民とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の王と結婚しました

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・ベルフォード、これまでの婚約は白紙に戻す」  その言葉を聞いた瞬間、私はようやく――心のどこかで予感していた結末に、静かに息を吐いた。  王太子アルベルト殿下。金糸の髪に、これ見よがしな笑み。彼の隣には、私が知っている顔がある。  ――侯爵令嬢、ミレーユ・カスタニア。  学園で何かと殿下に寄り添い、私を「高慢な婚約者」と陰で嘲っていた令嬢だ。 「殿下、どういうことでしょう?」  私の声は驚くほど落ち着いていた。 「わたくしは、あなたの婚約者としてこれまで――」

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ

水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。 ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。 なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。 アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。 ※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います ☆HOTランキング20位(2021.6.21) 感謝です*.* HOTランキング5位(2021.6.22)

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

悪役令嬢が残した破滅の種

八代奏多
恋愛
 妹を虐げていると噂されていた公爵令嬢のクラウディア。  そんな彼女が婚約破棄され国外追放になった。  その事実に彼女を疎ましく思っていた周囲の人々は喜んだ。  しかし、その日を境に色々なことが上手く回らなくなる。  断罪した者は次々にこう口にした。 「どうか戻ってきてください」  しかし、クラウディアは既に隣国に心地よい居場所を得ていて、戻る気は全く無かった。  何も知らずに私欲のまま断罪した者達が、破滅へと向かうお話し。 ※小説家になろう様でも連載中です。  9/27 HOTランキング1位、日間小説ランキング3位に掲載されました。ありがとうございます。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

【完結】婚約破棄?勘当?私を嘲笑う人達は私が不幸になる事を望んでいましたが、残念ながら不幸になるのは貴方達ですよ♪

山葵
恋愛
「シンシア、君との婚約は破棄させてもらう。君の代わりにマリアーナと婚約する。これはジラルダ侯爵も了承している。姉妹での婚約者の交代、慰謝料は無しだ。」 「マリアーナとランバルド殿下が婚約するのだ。お前は不要、勘当とする。」 「国王陛下は承諾されているのですか?本当に良いのですか?」 「別に姉から妹に婚約者が変わっただけでジラルダ侯爵家との縁が切れたわけではない。父上も承諾するさっ。」 「お前がジラルダ侯爵家に居る事が、婿入りされるランバルド殿下を不快にするのだ。」 そう言うとお父様、いえジラルダ侯爵は、除籍届けと婚約解消届け、そしてマリアーナとランバルド殿下の婚約届けにサインした。 私を嘲笑って喜んでいる4人の声が可笑しくて笑いを堪えた。 さぁて貴方達はいつまで笑っていられるのかしらね♪

処理中です...