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19.元婚約者の来訪
私は、シェリダン様とともにラメルトン伯爵家の外に出て来ていた。
門の前には、薄汚れたロンベルト様がいる。ディレイル伯爵家から追い出された後、苦労したということだろうか。彼はボロボロであった。
「ロンベルト様、一体何をしに来たのですか?」
「アレシア……君に頼みたいことがあるんだ」
私が近寄ると、ロンベルト様は縋りつくような視線を向けてきた。
その視線は、正直言って不愉快である。私は彼から、散々な扱いを受けてきた。それなのにどうして今更、そんな顔ができるのだろうか。
「頼みたいこと? 一体何ですか?」
「……イネリアのことだ」
「イネリアのこと?」
「ああ、彼女はラメルトン伯爵家から追い出されて、ひどく落ちぶれているそうじゃないか。それはあんまりと言えばあんまりだ。僕は愛する彼女が苦労しているのを見ていられない。彼女はこのラメルトン伯爵家の子女だろう? 姉としてなんとかしたいとは思わないか?」
ロンベルト様は、いきなりイネリアのことを言ってきた。
その言葉に、私は訝しむ。急にやって来て、何を言い出すのだろうか。
なんというか、彼の所作は怪しかった。何か裏がありそうだ。
「ロンベルト様、あなたは何が言いたいのですか?」
「支援をしてあげて欲しいんだ。もちろん、内密である必要はあるかもしれないが、その辺りは僕が担うとしよう。イネリアにこっそりと受け渡せるように手配する」
「……あなたはイネリアと会わないのですか?」
「え? ああ、いや……」
私の質問に対して、ロンベルト様は言葉を詰まらせた。
その言葉によって、私は悟る。彼はイネリアのことを言い訳にして、ラメルトン伯爵家からお金をせしめるつもりなのだと。
それはなんともみっともない行いである。追い詰められているとはいえ、嘘をついてお金を取ろうなんて、彼に誇りというものはないのだろうか。
「本当に妹を愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきではありませんか?」
「ぼ、僕も今は苦しい立場にある。そんな僕が傍にいた所で、イネリアの足手纏いになるだけだ」
「……みっともない真似をするな」
「な、何?」
私の言葉に対して尚も縋りつくロンベルト様に声をかけたのは、シェリダン様である。
彼はその目を細めて、ロンベルト様を睨みつけている。私の今の婚約者のその視線に、元婚約者はかなり怯んでいるようだ。
「お前には貴族としての誇りというものがないのか?」
「な、なんだと、元はと言えばお前が……」
「例え追放されていたとしても、貴族の血が流れる者としての誇りを忘れるなど、あり得ないことだ。お前のように信念のない者が、このラメルトン伯爵家の敷地を跨ぐことなど、俺が許さない」
「なっ……!」
ゆっくりとシェルダン様が近づくと、ロンベルト様は後退った。
彼は怯えている。シェリダン様の迫力というものに、打ちのめされているようだ。
そして彼は、ゆっくりと私達に背を向けた。そのまま彼は、走り出した。シェリダン様の言葉によって、彼は敗走したのである。
門の前には、薄汚れたロンベルト様がいる。ディレイル伯爵家から追い出された後、苦労したということだろうか。彼はボロボロであった。
「ロンベルト様、一体何をしに来たのですか?」
「アレシア……君に頼みたいことがあるんだ」
私が近寄ると、ロンベルト様は縋りつくような視線を向けてきた。
その視線は、正直言って不愉快である。私は彼から、散々な扱いを受けてきた。それなのにどうして今更、そんな顔ができるのだろうか。
「頼みたいこと? 一体何ですか?」
「……イネリアのことだ」
「イネリアのこと?」
「ああ、彼女はラメルトン伯爵家から追い出されて、ひどく落ちぶれているそうじゃないか。それはあんまりと言えばあんまりだ。僕は愛する彼女が苦労しているのを見ていられない。彼女はこのラメルトン伯爵家の子女だろう? 姉としてなんとかしたいとは思わないか?」
ロンベルト様は、いきなりイネリアのことを言ってきた。
その言葉に、私は訝しむ。急にやって来て、何を言い出すのだろうか。
なんというか、彼の所作は怪しかった。何か裏がありそうだ。
「ロンベルト様、あなたは何が言いたいのですか?」
「支援をしてあげて欲しいんだ。もちろん、内密である必要はあるかもしれないが、その辺りは僕が担うとしよう。イネリアにこっそりと受け渡せるように手配する」
「……あなたはイネリアと会わないのですか?」
「え? ああ、いや……」
私の質問に対して、ロンベルト様は言葉を詰まらせた。
その言葉によって、私は悟る。彼はイネリアのことを言い訳にして、ラメルトン伯爵家からお金をせしめるつもりなのだと。
それはなんともみっともない行いである。追い詰められているとはいえ、嘘をついてお金を取ろうなんて、彼に誇りというものはないのだろうか。
「本当に妹を愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきではありませんか?」
「ぼ、僕も今は苦しい立場にある。そんな僕が傍にいた所で、イネリアの足手纏いになるだけだ」
「……みっともない真似をするな」
「な、何?」
私の言葉に対して尚も縋りつくロンベルト様に声をかけたのは、シェリダン様である。
彼はその目を細めて、ロンベルト様を睨みつけている。私の今の婚約者のその視線に、元婚約者はかなり怯んでいるようだ。
「お前には貴族としての誇りというものがないのか?」
「な、なんだと、元はと言えばお前が……」
「例え追放されていたとしても、貴族の血が流れる者としての誇りを忘れるなど、あり得ないことだ。お前のように信念のない者が、このラメルトン伯爵家の敷地を跨ぐことなど、俺が許さない」
「なっ……!」
ゆっくりとシェルダン様が近づくと、ロンベルト様は後退った。
彼は怯えている。シェリダン様の迫力というものに、打ちのめされているようだ。
そして彼は、ゆっくりと私達に背を向けた。そのまま彼は、走り出した。シェリダン様の言葉によって、彼は敗走したのである。
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