聖女の代わりがいくらでもいるなら、私がやめても構いませんよね?

木山楽斗

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 私とレイグスは、すぐに宿の外に出て行った。
 外にいる第二王子のヘルゼン様と会うためである。

「あなたは……」

 私達が出て行くと、ヘルゼン様はすぐに気づいた。
 私は、聖女として顔が知れている。彼も、だからわかったのだろう。

「ヘルゼン様、お久し振りです」
「アルメアさん……まさか、聖女であるあなたに、この町で出会うとは思っていませんでしたよ」
「ヘルゼン様、私はもう聖女ではありません。色々と事情があって、聖女をやめました」
「ほう……聖女をやめた。なるほど、なんとなく事情が見えてきましたね」

 私の言葉に、ヘルゼン様は少し真剣な顔になった。
 双子であるため、彼はビクトンとそっくりだ。だが、その顔つきは大きく違う。
 彼は、とても凛々しいのだ。あの情けない王子と顔は似ていても、内面は全く違うということがよくわかる。

「大方、ビクトンが何かやらかしたということですか?」
「そういうことです」
「なるほど、まったく、まさか、そこまで不甲斐ないとは……」

 ヘルゼン様は、私が聖女をやめた原因がビクトンであるとすぐに感づいた。
 それは、当然のことである。彼は、ビクトンが業務を始めた時に、王都から旅立った。その前は、私が普通に聖女を務めていたので、やめた原因は大方予想できるだろう。

「ヘルゼン様は、未踏の地の調査が終わったのですか?」
「ええ、いい成果は得られましたよ。自ら立候補した甲斐があったというものです」

 ヘルゼン様は、この王国の領土でもない地を探索する役目を担っていた。
 勇気ある彼は、自ら指揮を執り、未踏の地を探索していたのである。
 そのため、彼はこの国の内情をよく知らないのだ。恐らく、彼は普通に王都に戻ろうとしているだけだろう。

「しかし、あなたが元聖女であっても、どうしてこのような町にいるのでしょうか? 旅行というなら、わざわざ私に話しかけてきませんよね?」
「ヘルゼン様、あなたは今この国で何が起こっているのかご存知ですか?」
「……何か、起こっているようですね」

 私の質問に、ヘルゼン様は顔を歪めた。
 話が早くて、とても助かる。余計なことを説明する手間が省けるからだ。

「おかしいとは思っていました。この町にやけに人が多いのには、何か理由があるのですね?」
「ええ……最も、私もそれを完全に理解している訳ではありません。私の推測も混ざっていますが、構いませんか?」
「ええ、構いません。聞かせてください」

 私の言葉に、ヘルゼン様はゆっくりと頷いた。
 こうして、私は彼に色々な事情を説明するのだった。
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