怠惰な聖女の代わりに業務を担っていた私は、たまの気まぐれで働いた聖女の失敗を押し付けられて追放されました。

木山楽斗

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 私は、リルガー様とともに野営地から馬車で、エルグレンド王国の王都に向かっていた。
 王子であるリルガー様は、現場の様子を見に来ただけだったらしい。王子が来たことで、現場の士気は大いに上がっただろう。

「僕なんかが来て、本当に士気が上がるのかは、少し疑問なんですけどね……」
「そうなのですか?」
「だって、王子が来て嬉しいものですかね? 緊張したり、余計な心配を与えていたりしてしまうだけなのではないでしょうか?」

 リルガー様自身は、あまり自分が来た意味を理解していなかった。
 だが、王子の来訪は確実に現場の士気を上げただろう。王族が激励に来てくれるなど、騎士達にとってはとても喜ばしいことであるはずだ。

「そんなことは、ありませんよ。皆さん、喜んでいたはずです」
「そうなのでしょうか……? よくわかりませんね……」

 リルガー様は、少し考えるような仕草を見せた。
 どうやら、本当に理解できていないようである。王族本人からすれば、わからないものなのだろうか。

「兄上はこういうことが得意なのですが、僕には未だによくわかりません。やはり、戦術面は兄上に任せた方がいいですね」
「え? お兄様は、そういうことが得意なのですか?」
「ええ、そうなのです」

 リルガー様のお兄様は、そういうことが得意であるらしい。
 ということは、単純に彼があまり理解していないだけのようだ。
 ここまで接してきて、リルガー様は色々と判断力がある人だと思っていた。だが、案外そういう面は弱いようである。

「兄上は、僕に比べて頭がいいのです。どうも、僕は頭脳戦が苦手で……もちろん、改善しなければならないとは思っているのですが……」
「苦手……?」

 彼の言葉に、私は少し疑問を覚えた。
 私を説得する際、彼は上手く誘導していたはずである。それなのに、頭脳戦が苦手といえるのだろうか。
 いや、それよりもお兄様がすごいということなのかもしれない。比較して、苦手と言っているのではないだろうか。

「……ということは、リルガー様は、体を動かす方が得意なのですか?」
「ええ、どちらかというとそちらの方が得意ですね。逆に、兄上はそれがとても苦手です。僕がここに来たのも、兄上が動くのが辛いと言ったからですし……」
「それは、それでどうかと思いますけど……」

 リルガー様のお兄様は、彼とは逆に肉体労働が辛いようだ。
 だが、動くのが辛いから現場に行かないというのは、かなり怠惰なように思える。
 しかし、上手く分担できているなら、それでいいのかもしれない。お兄様は頭脳で、リルガー様は肉体面で。案外、いい兄弟なのかも知れない。
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