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 私は、リルガー様とともに玉座の間まで来ていた。
 目の前の玉座には、一人の男性が座っている。その老齢の男性が、国王様であるようだ。

「父上、この方がレパイア王国で聖女の補佐をしていたイルアナ・フォルアド様です」
「うむ、話は聞いている」

 この場には、私達と国王様の他にもう一人いる。
 その人物は、私を見定めるように眺めてくる。その視線が、少し怖い。

「ラルーグ、お前はこの女をどう見る?」
「無論、利用価値があると思います。あちらの王国の聖女の補佐。色々と有益な情報を持っているでしょう」
「うむ……」

 国王様は、近くにいたその人物に質問した。
 彼こそが、この国の第一王子であるラルーグ様なのだ。
 ラルーグ様は、とても飄々としている。あまり内面が見えてこない不思議な人だ。

「最も、彼女の言っていることが虚偽である可能性もあります。あちらの手の者という可能性も捨てることはできないでしょう」
「ほう……」
「なっ……」

 ラルーグ様は、とても冷静に私のことを判断していた。
 確かに、私がレパイア王国から送られてきたと考えることはできないことではない。
 それは、私にとっては少し痛い指摘だ。そういう可能性を考慮されると、とても困ってしまう。

「兄上、彼女は僕に色々なことを教えてくれました。それが虚偽だとは思えません」
「リルガー、お前は人を見る目がある。故に、私も信じたい。だが、これは国同士の戦いだ。念には念を入れる必要があるだろう」
「それは……」

 リルガー様は、ラルーグ様に言いくるめられてしまった。
 事前に聞いていたが、第一王子はやり手であるようだ。いや、私やリルガー様が、少し甘すぎただけなのかもしれないが。

「この女がレパイア王国のスパイかもしれない。それは、理解できた。それで、どうするというのだ?」
「無論、それは可能性の一つに過ぎません。彼女が、本当に素直に国を裏切ったという可能性もあります。状況を考えれば、そちらの方が高いでしょうね」
「ほう?」
「私が言いたいことは、彼女をこのまま開放することではできないということです。王城で監視の元暮らしてもらいましょう。彼女を解放できるとすれば、この戦いが完全に終結した時でしょうか」
「なるほど、ならば、そのように手配しよう」

 ラルーグ様は、私をこの王城に軟禁するつもりのようだ。
 それは、仕方ないことなのだろう。私は、簡単に自由を得られるような立場ではないのだ。
 こうして、私のこれからの生活の方針が決まるのだった。
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