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結界がなくなり慌てふためくレパイア王国に、エルグレンド王国は容赦ない攻撃を仕掛けていった。
防衛の要を失っているため、レパイア王国はかなり窮地に立たされているといえる。
「ふむ……」
私は、ラルーグ様とともに王城の一室にいた。
ここは、指令室である。魔法によって、前線と繋がっており、作戦会議をしたり、指示を出したりする場所だ。
『レパイア王国のゲルード辺境伯が、降伏したいそうです』
「なるほど、そうなりましたか」
その指令室に、前線のリルガー様からとある一報が入った。
ゲルード辺境伯の降伏。それは、驚くべき報告である。
『どうやら、結界がなくなったため、そのように判断したようです。王国側からの支援もなく、切り捨てられたようですから、もう勝てないと思ったのでしょう』
「なるほど、レパイア王国側は、多少の犠牲は最早必然と判断したのですか」
『ええ、恐らく、この先もしばらくは見捨てられた貴族達がいるのではないでしょうか』
「ひどい人達ですね……」
リルガー様の言葉に、ラルーグ様は笑っていた。
あまり、レパイア王国の判断をひどいと思っていないような顔だ。
『兄上が同じ立場なら、同じようなことをするのではありませんか?』
「さて、どうでしょう?」
『兄上は、いつも通りですね……』
「さて、それは置いておいて、降伏するなら受け入れてあげましょう。もちろん、それなりに要求はさせてもらいますが……」
『まあ、そうなりますよね……』
エルグレンド王国は、ゲルード辺境伯の降伏を受け入れるつもりらしい。
特に不利益もないので、それは当然の判断である。
だが、無条件で降伏させる訳ではないだろう。ラルーグ様の表情からして、ある条件を出すはずである。
「そうですね……ゲルード辺境伯の元にいる兵達は、先陣を切って戦ってもらうことにしましょうか」
『そうなりますか……』
「ええ、そうなります。当然、戦力として使わせてもらいます」
ラルーグ様は、ゲルード辺境伯の兵を戦力として使うつもりのようだ。
それは、別におかしくない判断である。自国の兵よりも、そちらの兵を使う方が、エルグレンド王国としてはいいのだ。
「もちろん、念のため、人質はとらせてもらいます。ゲルード辺境伯とその領地の人々ということでいいでしょう」
『それでは、兵を配備しましょう』
「人質は丁重に扱ってください。裏切った場合は、わかっていますね?」
『ええ、もちろんです』
ゲルード辺境伯の兵達は、裏切ることはできないだろう。
主と家族を人質にとられるのだ。そんなことはできるはずはない。
こうして、エルグレンド王国は戦いを有利に進めるのだった。
防衛の要を失っているため、レパイア王国はかなり窮地に立たされているといえる。
「ふむ……」
私は、ラルーグ様とともに王城の一室にいた。
ここは、指令室である。魔法によって、前線と繋がっており、作戦会議をしたり、指示を出したりする場所だ。
『レパイア王国のゲルード辺境伯が、降伏したいそうです』
「なるほど、そうなりましたか」
その指令室に、前線のリルガー様からとある一報が入った。
ゲルード辺境伯の降伏。それは、驚くべき報告である。
『どうやら、結界がなくなったため、そのように判断したようです。王国側からの支援もなく、切り捨てられたようですから、もう勝てないと思ったのでしょう』
「なるほど、レパイア王国側は、多少の犠牲は最早必然と判断したのですか」
『ええ、恐らく、この先もしばらくは見捨てられた貴族達がいるのではないでしょうか』
「ひどい人達ですね……」
リルガー様の言葉に、ラルーグ様は笑っていた。
あまり、レパイア王国の判断をひどいと思っていないような顔だ。
『兄上が同じ立場なら、同じようなことをするのではありませんか?』
「さて、どうでしょう?」
『兄上は、いつも通りですね……』
「さて、それは置いておいて、降伏するなら受け入れてあげましょう。もちろん、それなりに要求はさせてもらいますが……」
『まあ、そうなりますよね……』
エルグレンド王国は、ゲルード辺境伯の降伏を受け入れるつもりらしい。
特に不利益もないので、それは当然の判断である。
だが、無条件で降伏させる訳ではないだろう。ラルーグ様の表情からして、ある条件を出すはずである。
「そうですね……ゲルード辺境伯の元にいる兵達は、先陣を切って戦ってもらうことにしましょうか」
『そうなりますか……』
「ええ、そうなります。当然、戦力として使わせてもらいます」
ラルーグ様は、ゲルード辺境伯の兵を戦力として使うつもりのようだ。
それは、別におかしくない判断である。自国の兵よりも、そちらの兵を使う方が、エルグレンド王国としてはいいのだ。
「もちろん、念のため、人質はとらせてもらいます。ゲルード辺境伯とその領地の人々ということでいいでしょう」
『それでは、兵を配備しましょう』
「人質は丁重に扱ってください。裏切った場合は、わかっていますね?」
『ええ、もちろんです』
ゲルード辺境伯の兵達は、裏切ることはできないだろう。
主と家族を人質にとられるのだ。そんなことはできるはずはない。
こうして、エルグレンド王国は戦いを有利に進めるのだった。
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