怠惰な聖女の代わりに業務を担っていた私は、たまの気まぐれで働いた聖女の失敗を押し付けられて追放されました。

２１

　私は、とある事情から、前線まで出てきていた。

「イルアナさん、すみませんね、わざわざ前線まで来てもらって……」
「いえ、問題ありません」

　前線では、リルガー様が迎えてくれた。
　彼は、他国の兵達がいる中でも前線に立つことをやめていない。それは、ラルーグ様の指示であるようだ。
　他国の兵がいるため、王子である彼が、前線に立つ必要はないはずである。だが、これも何かの意図があるのだろう。その辺りは、私にもリルガー様にもわからないことだ。

「それにしても、あなたに会うのも随分と久し振りなような気がしますね……」
「そうですね……まあ、リルガー様が前線に出る前は、毎日会っていましたからね」
「ええ、その頃が少し懐かしいですね」
「そうですね……」

　私とリルガー様は、久し振りの再会を喜んでいた。
　彼とは、しばらく会っていない。魔法による通信で顔は見られていたが、こうして実際に会うとなんだか感慨深いものがある。

　リルガー様は私を助けてくれてから、毎日会いに来てくれた。異国で厳しい立場にある私を心配して、様子を見に来てくれていたのだ。
　忙しい王子の身でありながら、私に会いに来てくれるなど、大変なことだっただろう。本当に、彼は優しい人である。

　そんな彼の優しさは、私にとってとてもありがたいものだった。
　だからこそ、この再会がこんなにも嬉しいのかもしれない。

「さて、色々と話したい所ですが、あまりそうも言っていられません。早速、問題の対処に当たってもらえますか？」
「ええ、もちろんです」

　リルガー様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
　いつまでも再会を喜んでいる場合ではない。問題の対処に当たらなければならないのだ。

「あれが、例の結界ですか？」
「ええ、あの結界はかなり強力で、こちらの術師達も対処しているのですが、中々破ることができないのです」
「それで、私ですか……」
「ええ、あなたなら、あちらの結界をよく知っています。何か対処できるのではないか。兄上は、そう思ったようですね」

　私がここに来た目的は、レパイア王国が作り出した新たな結界を破るためである。
　かつて、あちらの王国の結界を張っていた私なら、この結界にも対処できるとラルーグ様が判断したのだ。
　実際、内情を知っている私なら対処できる可能性は高いだろう。もっとも、まったく違うものになっているかもしれないので、絶対とは言い切れないのだが。
　こうして、私は前線で結界の対処をすることになるのだった。