平民だからと婚約破棄された聖女は、実は公爵家の人間でした。復縁を迫られましたが、お断りします。

木山楽斗

文字の大きさ
75 / 84

第75話 仕方がないこと

しおりを挟む
 私とロクス様は、アモルの村で出会ったドルスという少年とともに、ムルルの家の中に入らせてもらっていた。
 家の中は、とても綺麗にしてある。ただ、あまり物が置かれていない。
 なんというか、生活できる最低限の物しかないような印象を受ける。平民であっても、流石にもう少し色々と置いてあるのが普通であるはずだ。
 まるで、他に物があったら不都合であるかのように、この家には物がない。もしかしたら、それもこの歪な村の体制が関係しているのだろうか。

「えっと……申し訳ありませんが、どこでもいいので座ってもらえますか? 椅子も座布団もないので、少し辛いかもしれませんが……」
「大丈夫、全然平気だよ」

 ムルルに促されて、私とロクス様は適当な場所に座った。
 すると、その正面に、ムルルとドルスが座る。椅子も座布団もないため、固い地べたに座ることになったが、それは特に気にならない。
 気になるのは、そういうものがないというこの家の状況である。普通の村なら、子供が一人暮らしをしていて、そういうものがないなら、分け与えるくらいのことはするはずだ。
 それをしない程、この村の人間は、ムルルのことを疎んでいるということである。その現状に、私は嫌悪感を覚えずにいられない。

「率直に聞かせてもらうけど、あなたとこの村には何が起こっているの? 明らかに、歪な村だと思うけど、何かあったのかな?」
「歪な村……確かに、外から見れば、そう見えるかもしれません。ただ、それは仕方がないことなんです」
「仕方がないこと?」

 ムルルの言葉に、私は驚いた。
 何故かわからないが、ムルルはこの歪んだ状況を受け入れているのだ。
 村人に対して、恨みや妬みの一つでも持っていいはずの彼女からは、負の感情を一切感じないのである。

「私は、今のこの現状を仕方ないものだと思っています。だから、聖女様が思っているようなことはありません。この村の人達がおかしいだとか、そういうことではないんです」
「それは……」

 ムルルは、一切表情を変えなかった。
 笑顔のまま、村人達を擁護したのである。
 その言葉は、私にとっては信じられないものだ。あのような村人達を、何故彼女が擁護するのだろうか。
 それが不思議で仕方ない。だが、ムルルがそう言う以上、あの村人達はおかしくないという前提を持っておくことは大切だろう。
 それなら、何故、あのような態度をとるのか。それを確かめるには、この場にいるもう一人に話を聞いた方が良さそうだ。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―

鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。 泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。 まだ八歳。 それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。 並ぶのは、かわいい雑貨。 そして、かわいい魔法の雑貨。 お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、 冷めないティーカップ、 時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。 静かに広がる評判の裏で、 かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。 ざまぁは控えめ、日常はやさしく。 かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。 --- この文面は ✔ アルファポリス向け文字数 ✔ 女子読者に刺さるワード配置 ✔ ネタバレしすぎない ✔ ほのぼの感キープ を全部満たしています。 次は 👉 タグ案 👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字) どちらにしますか?

聖女でなくなったので婚約破棄されましたが、幸せになります。

ユウ
恋愛
四人の聖女が守る大国にて北の聖女として祈りを捧げるジュリエット。 他の聖女の筆頭聖女だったが、若い聖女が修行を怠け祈らなくななった事から一人で結界を敷くことになったが、一人では維持できなくなった。 その所為で西の地方に瘴気が流れ出す。 聖女としての役目を怠った責任を他の聖女に責められ王太子殿下から責任を取るように命じられる。 「お前には聖女の資格はない!聖女を名乗るな」 「承知しました。すべての責任を取り、王宮を去ります」 「は…何を」 「祈り力が弱まった私の所為です」 貴族令嬢としても聖女としても完璧だったジュリエットだが完璧すぎるジュリエットを面白くおもわなかった王太子殿下はしおらしくなると思ったが。 「皆の聖女でなくなったのなら私だけの聖女になってください」 「なっ…」 「王太子殿下と婚約破棄されたのなら私と婚約してください」 大胆にも元聖女に婚約を申し込む貴族が現れた。

【完結】魔力の見えない公爵令嬢は、王国最強の魔術師でした

er
恋愛
「魔力がない」と婚約破棄された公爵令嬢リーナ。だが真実は逆だった――純粋魔力を持つ規格外の天才魔術師! 王立試験で元婚約者を圧倒し首席合格、宮廷魔術師団長すら降参させる。王宮を救う活躍で副団長に昇進、イケメン公爵様からの求愛も!? 一方、元婚約者は没落し後悔の日々……。見る目のなかった男たちへの完全勝利と、新たな恋の物語。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます

香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。 どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。 「私は聖女になりたくてたまらないのに!」 ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。 けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。 ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに…… なんて心配していたのに。 「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」 第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。 本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

処理中です...