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22.守りたいもの

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「………………」
「あら?」
「ああ、君か……」

 庭で天を仰ぐマグナス様を見つけて、私は思わず声をかけていた。
 彼がどうしてそんなことをしているのかは、わかっている。とある事実を知ったからだろう。

「悩んでいるの? 今回のことで……」
「いや、そういう訳ではない。進むべき道は決まっている。迷いはない……ただ、険しい道になる故に、少々怖気づいている」
「それは、少し驚きね。あなたでも、そういうことがあるなんて……」

 マグナス様は、凛々しく勇猛な人であると思っていた。
 そんな彼が、恐れを抱いているというのは意外である。それだけ今回の戦いが、厳しいものだということだろうか。

「俺はそんなに強い人間であるという訳ではない。だが、逃げるつもりはない。必ず、俺は母上の悪事を暴く。ラナーシャを守るためにも、それは必要なことだ」

 マグナス様は、私の目を真っ直ぐに見てそう言ってきた。
 それによって理解する。やはり彼は、強い人間であるということを。
 恐れを抱いていても、進んでいける。それはすごいことだろう。やはり彼は、尊敬できる人だ。

「……そして俺は、君も守ってみせる」
「……え?」

 そこで私は、一瞬固まってしまった。
 マグナス様が、思ってもいなかったことを言ってきたからだ。

「それは一体、どういう意味なのかしら?」
「言葉のままの意味だ。ずっと思っていたんだ。君が何かを抱えていると」
「それは……」
「それを知って、俺は改めて理解した。君が過酷な運命と戦っているのだということを。そんな君を、俺は守りたいと思っている」

 マグナス様の真っ直ぐな言葉に、私は思わず彼から目をそらしてしまった。
 なんというか、恥ずかしかったのだ。その言葉は嬉しかったのだが、マグナス様の顔を真っ直ぐに見られない。

「さて、まあまずは兄上からの返答を待たなければならないな……こちらでも調査をしていきたいが、まずは足並みを揃えなければ」
「ハワード様は、協力してくれるのよね?」
「それは間違いないことだ。ただ、兄上の傍には父上や母上がいる。そこが少々心配な点だ」
「派手に動くことはできないということね。こちらも、そんなに人手がある訳ではないのでしょう?」
「ああ、長い戦いになるだろうな。だが、それでもいい。ばれてしまうよりはいいからな」

 事件の調査は、長い目で見ることになるだろう。仕方ないことではあるが、それは中々にもどかしいことである。
 ただ私達が最も気を付けるべきことは、ばれないことだ。水面下で動いて、確証が得られてから大胆に動く。今の私達は、そのように戦わなければならないのだ。
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