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65.王都にて⑦
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私とリルフは、王国の騎士団長であるローディスに連れられて王城の廊下を歩いていた。
国王様との話は、あれで終わりだった。それで、私達は帰ることになったのだ。
帰り道は、王国の騎士団の護衛がつくらしい。というか、実は行きも騎士団の護衛は密かについていたそうだ。
「王国騎士団は、強力だ。終末を望む会などに負けはしない」
「そうですか……」
護衛については、騎士団長であるローディスが抜擢した確かな実力がある者をつけてくれるらしい。
それなら安心である。そう思えれば、それ程楽だっただろうか。
「……一つ聞かせてもらってもいいですか?」
「なんだ?」
「あなたは、何を考えているんですか?」
王城の中庭近くの廊下で、私はローディスに問いかけていた。
副団長のウェルデインもそうだったが、ローディスも何か裏がある。私もリルフも、そのように感じていた。
なんとなくわかるのだが、この二人からは敵意のようなものを向けられている気がする。それが向けられているのが、私ではなくリルフであることもわかっている。
だが、国王様はあんな態度だった。リルフに敵意なんて、まずないだろう。
そこで結論はこうなる。王国の騎士団は、国王様と意見が違うのではないだろうか。
「ただの小娘という訳ではないようだな……」
「……案外、すぐに認めるんだね?」
「隠していても仕方ないことだ。恐らく、お前達はこの俺の指示通りに動くことはないだろう?」
「もちろん、あなたがつける護衛なんて、信頼できる訳がないからね」
私は、リルフを庇うように前に立った。そんな私を、ローディスはしっかりと睨みつけてくる。
その視線は、覇気に満ちていた。流石は騎士団長だ。正直言って、とても恐ろしい。
だが、私も怯んではいられない。リルフを守るためにも、私はこの男に負けられないのだ。
「おかしいとは思わないか? 我々の運命が、竜に握られているなど」
「……なんだって?」
「人間の運命は、人間が決めるべきだ。その竜の気分次第で国が揺るぐなどあってはならない。そうは思わないか?」
「竜によって、この国が繁栄したのに、そう思うの?」
「その竜が、この国を繁栄させたことは事実であるのだろう。だが、今後もずっとその竜に運命を握られているという事実に、俺は納得できない。繁栄も滅亡も、人間がもたらすべきものだろう。未来のためにも、その竜には消えてもらわなければならない」
ローディスは、私に対して堂々とそう宣言してきた。どうやら、彼はリルフがこの国の運命を握っているという事実が気に入らないらしい。
それは、わからない訳ではない。確かに、繁栄も滅亡も竜次第であるというのは、疑問を抱きたくなるものわかる気がする。
ただ、一つだけ気に入らないことがあった。それだけで彼の理論を否定する理由になる程、それは私にとって重要なことである。
「あなたの思想はわからない訳ではない」
「ならば……」
「でも、繁栄とか滅亡とか、そんなものは関係ない! あなたがリルフを傷つけるというなら、それが私の戦う理由になる!」
ローディスの言う通り、竜が人間の運命を握っているという現状はおかしいかもしれない。
だが、例えそうだったとしても、私はリルフを守る。私はただ目の前にある大切な存在を、守るだけなのだ。
国王様との話は、あれで終わりだった。それで、私達は帰ることになったのだ。
帰り道は、王国の騎士団の護衛がつくらしい。というか、実は行きも騎士団の護衛は密かについていたそうだ。
「王国騎士団は、強力だ。終末を望む会などに負けはしない」
「そうですか……」
護衛については、騎士団長であるローディスが抜擢した確かな実力がある者をつけてくれるらしい。
それなら安心である。そう思えれば、それ程楽だっただろうか。
「……一つ聞かせてもらってもいいですか?」
「なんだ?」
「あなたは、何を考えているんですか?」
王城の中庭近くの廊下で、私はローディスに問いかけていた。
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なんとなくわかるのだが、この二人からは敵意のようなものを向けられている気がする。それが向けられているのが、私ではなくリルフであることもわかっている。
だが、国王様はあんな態度だった。リルフに敵意なんて、まずないだろう。
そこで結論はこうなる。王国の騎士団は、国王様と意見が違うのではないだろうか。
「ただの小娘という訳ではないようだな……」
「……案外、すぐに認めるんだね?」
「隠していても仕方ないことだ。恐らく、お前達はこの俺の指示通りに動くことはないだろう?」
「もちろん、あなたがつける護衛なんて、信頼できる訳がないからね」
私は、リルフを庇うように前に立った。そんな私を、ローディスはしっかりと睨みつけてくる。
その視線は、覇気に満ちていた。流石は騎士団長だ。正直言って、とても恐ろしい。
だが、私も怯んではいられない。リルフを守るためにも、私はこの男に負けられないのだ。
「おかしいとは思わないか? 我々の運命が、竜に握られているなど」
「……なんだって?」
「人間の運命は、人間が決めるべきだ。その竜の気分次第で国が揺るぐなどあってはならない。そうは思わないか?」
「竜によって、この国が繁栄したのに、そう思うの?」
「その竜が、この国を繁栄させたことは事実であるのだろう。だが、今後もずっとその竜に運命を握られているという事実に、俺は納得できない。繁栄も滅亡も、人間がもたらすべきものだろう。未来のためにも、その竜には消えてもらわなければならない」
ローディスは、私に対して堂々とそう宣言してきた。どうやら、彼はリルフがこの国の運命を握っているという事実が気に入らないらしい。
それは、わからない訳ではない。確かに、繁栄も滅亡も竜次第であるというのは、疑問を抱きたくなるものわかる気がする。
ただ、一つだけ気に入らないことがあった。それだけで彼の理論を否定する理由になる程、それは私にとって重要なことである。
「あなたの思想はわからない訳ではない」
「ならば……」
「でも、繁栄とか滅亡とか、そんなものは関係ない! あなたがリルフを傷つけるというなら、それが私の戦う理由になる!」
ローディスの言う通り、竜が人間の運命を握っているという現状はおかしいかもしれない。
だが、例えそうだったとしても、私はリルフを守る。私はただ目の前にある大切な存在を、守るだけなのだ。
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