妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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11.待っていた人

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「はあ……」

 ウェリダンお兄様との話を終えて、私は自室の前まで戻って来ていた。
 なんというか二人のお兄様は、ひどく過激である。それだけ怒ってくれているというのは、私からすればありがたいことでもあるのだが、いくらなんでもあんまりだ。もう少し抑えてもらいたい。二人にはそれを実行できるだけの権力がある訳だし。

「とりあえず、休もう……」

 そのことで少々疲れた私は、自室にゆっくりと入っていた。
 すると、違和感を覚えた。なんだか気配を感じるのだ。部屋の中に、誰がいるような気がする。
 そう思って周囲を見渡してみると、窓際に一人の女性が立っていた。その姿には、見覚えがある。あれはヴェルード公爵家の長女であるイフェネア様だ。

「あら……戻って来たのね」
「イフェネア様……ど、どうしてこちらに?」
「あなたのことを待っていたのよ」
「ま、待っていたって……」
「あら、何か不満でもあるのかしら?」
「い、いえ、そういう訳では……」

 ここは私の部屋である。その言葉を私は飲み込んだ。
 そんな主張をすれば、きっと不満を買うだけだろう。ここはヴェルード公爵家から与えられたに過ぎないのだから。
 この部屋の所有権などを主張できる立場ではない。だから私は、口をつぐんだ。しかし、わからない。どうしてイフェネア様はこんな所にいるのだろうか。

「……私は、前々から気に入らないと思っていたのよね。あなたにこの部屋が与えられたということが」
「……え?」

 イフェネア様は、ゆっくりと言葉を呟いた。
 それに私は、震えてしまった。その声色が、とても冷たいものだったからだ。
 要するにイフェネア様は、私のことを快く思っていないということなのだろう。

 二人のお兄様が味方についてくれて安心しきっていたが、ここが安心できる場所ではないと、私は改めて認識することになった。
 ここでは常に気を引き締めておかなければならない。そう思って、私は体を少し強張らせる。

「お父様もお母様も、それからお兄様も何を考えているのだか、まったく持って理解できないわ」
「……」
「右も左もわからないあなたにこんな部屋を与えて、一体何になるというのかしら? もう少し物事というものを考えてもらいたいものね」

 イフェネア様は、かなり怒っているようだった。
 彼女は、ゆっくりとこちらに近づいて来る。しかし私の体は、動いてくれない。急に気を引き締めたからか、体が固まっていたのだ。

 そんなことを考えている内に、イフェネア様は私の間近まで来ていた。そこで彼女は腰を下ろして、私と目線を合わせてきた。
 その動作に、私は驚くことになった。なんというか、とてもイフェネア様の目がよく見える。ただそれだけのことなのに、なんだかとても安心することができたからだ。
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