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1.和平のために
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我が国カルノード王国と隣国のラフェイン王国は、長年争っていた。
今は休戦しており、その期間が長く続いてはいるが、それでも仲が良いとは言い難かったらしい。
しかし、そんな王国も国王の代替わりによって少しずつ変わってきていた。こちらの国の国王――私のお祖父様が亡くなったのは五年前だが、それから二国の関係は改善され始めている。
「兄上は、ラフェイン王国と和平を結ぼうとしている。それはカルノード王国の歴史に残る偉業であると、私は思っているよ」
アガート公爵家は、王の弟であるお父様が当主を務める公爵家だ。
その基本的な方針は、国王である伯父様を支えることである。お父様は伯父様のことを深く信頼しており、王国の発展のために協力を惜しまないのだ。
それは良いことであると、私は思っている。王家も貴族も、兄弟や姉妹で争うというのは珍しいことでもない。そうではなく支え合っている二人は、素晴らしい関係だといえるだろう。
「しかしながら、和平というものは簡単ではない。お互いの国家は、その印というものを用意しなければならないのだ」
「印、ですか……」
「ああ、印だ……今回の場合は、お互いの国から一人を嫁がせる。時期王妃としてな。言ってしまえばそれは、人質ということではあるが、必要なことだ」
お父様は、淡々とした口調で言葉を発していた。
そういう時のお父様が、公爵として非情な判断をしているということを、私はよく知っている。
それができるということは、公爵としては良いことだろう。家族だからと、情に惑わされないお父様のことを、私は尊敬している。
「イルフェリーナ、カルノード王国としてはお前を嫁がせたいと思っている」
「わ、私、ですか……」
お父様は、妹のイルフェリーナに声をかけた。
その言葉に、彼女は少し体を強張らせているように見える。それは当然だ。いきなりそんなことを言われて、動揺しないはずはない。
「人質なんですよね……」
「ああ、そういうことになる」
「い、嫌です。だって、争っていた国なのですよね? そんな所に行くなんて……」
イルフェリーナは、ゆっくりと首を振っていた。
それはまるで子供のような駄々だ。私達貴族は、家の決定に逆らうことは許されない。
ただ、気持ちがわからない訳でもなかった。争っていた隣国に嫁ぐのは、当然怖いだろう。そこには味方もいないのだから
「……イルフェリーナ、お前もアガート公爵家の一員として覚悟を決める時だ」
「か、覚悟なんて……そんな……」
「……私が行きます」
「……え?」
怖がる妹を見ていた私は、自然と手を上げていた。
しかし迷いなどはない。私はそれが自分の役目であるということを、確信していた。
今は休戦しており、その期間が長く続いてはいるが、それでも仲が良いとは言い難かったらしい。
しかし、そんな王国も国王の代替わりによって少しずつ変わってきていた。こちらの国の国王――私のお祖父様が亡くなったのは五年前だが、それから二国の関係は改善され始めている。
「兄上は、ラフェイン王国と和平を結ぼうとしている。それはカルノード王国の歴史に残る偉業であると、私は思っているよ」
アガート公爵家は、王の弟であるお父様が当主を務める公爵家だ。
その基本的な方針は、国王である伯父様を支えることである。お父様は伯父様のことを深く信頼しており、王国の発展のために協力を惜しまないのだ。
それは良いことであると、私は思っている。王家も貴族も、兄弟や姉妹で争うというのは珍しいことでもない。そうではなく支え合っている二人は、素晴らしい関係だといえるだろう。
「しかしながら、和平というものは簡単ではない。お互いの国家は、その印というものを用意しなければならないのだ」
「印、ですか……」
「ああ、印だ……今回の場合は、お互いの国から一人を嫁がせる。時期王妃としてな。言ってしまえばそれは、人質ということではあるが、必要なことだ」
お父様は、淡々とした口調で言葉を発していた。
そういう時のお父様が、公爵として非情な判断をしているということを、私はよく知っている。
それができるということは、公爵としては良いことだろう。家族だからと、情に惑わされないお父様のことを、私は尊敬している。
「イルフェリーナ、カルノード王国としてはお前を嫁がせたいと思っている」
「わ、私、ですか……」
お父様は、妹のイルフェリーナに声をかけた。
その言葉に、彼女は少し体を強張らせているように見える。それは当然だ。いきなりそんなことを言われて、動揺しないはずはない。
「人質なんですよね……」
「ああ、そういうことになる」
「い、嫌です。だって、争っていた国なのですよね? そんな所に行くなんて……」
イルフェリーナは、ゆっくりと首を振っていた。
それはまるで子供のような駄々だ。私達貴族は、家の決定に逆らうことは許されない。
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「か、覚悟なんて……そんな……」
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しかし迷いなどはない。私はそれが自分の役目であるということを、確信していた。
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