堅実に働いてきた私を無能と切り捨てたのはあなた達ではありませんか。

木山楽斗

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43.この旅を経て

「ともにここまで旅をして、思ったのです。あなたに妻になってもらいたいと……あなたは強く賢く理性的な人だ。そして何より家族想いの優しい人だ」

 ウルギア様は、一度お祖母様を見てから再度私の方を見た。
 その視線に、私は思い出す。ここに来るまでのことを。
 それ程長い旅ではなかったが、それでも色々なことがあった。その旅の中で、私のウルギア様に対する印象も変わっている。

「……ウルギア様の言葉、嬉しく思います。そのように思っていただけているなんて、考えてもいませんでした」
「そうですか?」
「ウルギア様は、勇敢で優しい人です。お祖母様の事情も気にしていませんし、私はあなたを素敵な人だと思っています」

 最初に会った時、私はウルギア様のことを少し苦手に思っていた。
 天然な所があり、頼りならないとさえ思っていたくらいである。
 しかし、彼に対してもうそのような印象はない。この旅の中で、彼の良い所がたくさん見えてきて、素敵な男性であると認識している。

「まず私が王族と認められるのかわかりません。二国間の和平のための婚約が成立するのかどうかも怪しい所です。しかしながら、それらの事情を排除して答えていいなら……」
「答えていいなら?」
「私は、あなたからの婚約を受け入れたいと思っています。私に、王子の妻なんて大役が務まるのかもわかりませんが……」
「……ありがとうございます。今はその言葉だけで充分です」

 私の言葉に、ウルギア様は笑顔を浮かべてくれた。
 彼との婚約が今後どうなるかは不明慮だ。様々な事情で、揉み消される可能性もある。
 しかしそれでも、私は彼と婚約したいと思った。それが今の私の素直な気持ちなのだ。

「……さて、そっちの話がまとまったなら、さっさと行動をした方が良さそうだね?」
「あっ……」
「大師匠……」
「なんだい? アタシのことを忘れて、お互いに夢中にでもなっていたのかい? 早速お熱いことだねぇ」

 そこで私とウルギア様は、顔を見合わせることになった。
 今までの会話は、お祖母様にしっかりと聞かれていたのだ。後から考えてみると、それは少し恥ずかしい。
 ただ、どの道お祖母様には伝えなければならないことだった。彼女にも認めてもらわなければ、ならないことだった訳だし。

「長い人生、もう楽しみなんてないと思っていたが、また一つ楽しみが増えたね……曾孫の顔、早く見せておくれよ」
「それは……」
「お祖母様、気が早すぎます」

 お祖母様は、私達をからかって楽しそうに笑っていた。
 それはつまり、私達の婚約を受け入れてくれているということなのだろう。
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