生まれたことが間違いとまで言っておいて、今更擦り寄ろうなんて許される訳ないではありませんか。

木山楽斗

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19.隠されていたこと

 私はロナード様とともに、とある屋敷に来ていた。
 その客室で椅子に腰かける一人の女性には、ぼんやりと見覚えがある。
 それ程までに、記憶から母が消えていたことは、私にとっては悲しいことであった。しかし彼女は、確かに私の目の前にいる。

「大きくなったわね、ルシェーラ……」
「そ、そうなのでしょうか……」
「私があなたを最後に見たのは、五歳の時……あれから十余年、随分と長い時が流れたものだわ。私も年を取って……」

 国王様から事実を聞かされた時は、とても驚いた。
 いや、驚くなんてものではなかったかもしれない。あの時の私は、それはもう大変だった。
 私はずっと、母は亡くなったものだと聞かされてきた。母が生きているなんて、そんなことは考えたことがない。

「叔母上……いえ、僕は父上と血が繋がっていません。ですからそう呼ぶべきではありませんか」
「ロナード、そのようなことはないわ」
「……生きていらっしゃったのですね。父上は叔母上をこの屋敷に閉じ込めていた」
「ええ、お兄様は私をここに幽閉したわ。ルシェーラのことを人質に取って、ここから出そうとしなかった。それはきっと、愛の形ではあったのでしょうけれど」

 母の死について、私は伯父様が関わっていると思っていた。
 特に証拠はなかったが、そんな気がしたのだ。それはきっと、伯父様が母をここに閉じ込めていた張本人だからなのだろう。私の予測は、半分くらい当たっていたといえる。

「愛の形……伯父様はお母様のことを、嫌っていたのではありませんか?」
「お兄様は、私のことを愛してくださっていたと思っているわ。私の婚約や結婚について、お兄様はとても気にしていたから」
「それは……」
「ヴェルキス殿下との関係に関して、私は褒められたものではなかった。お兄様は私がそういったことを二度とできないように、閉じ込めておきたかったのかもしれない」

 お母様が語る伯父様は、私が知っているものとは少し異なっているようだった。
 彼も妹に対しては、ある意味において甘かったということなのだろうか。それにしても、歪んだ愛の形であるような気もするが。

「だけど、レヴィトン子爵家はこれから変わっていくはずだわ。二人の手によってきっと……」
「二人……叔母上、それはルシェーラと誰のことですか?」
「それは当然、あなたよ、ロナード。ルシェーラのことをお願いできないかしら?」
「そ、それは……」

 お母様が笑顔で発した言葉に、ロナード様は私の方に視線を向けてきた。
 随分と久し振りに現れた母だが、いきなりなんということを言うのだろうか。その意味深な笑顔に、私は苦笑いを浮かべるのだった。
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