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18.言葉は響き
しおりを挟む「……一介の騎士が、僕に偉そうな態度を取るものだな?」
「……」
「どうなるか、わかっているんだろうな? 理解していないのか?」
バルキス様は、セディルスさんのことを睨みつけていた。
ただ彼の表情からは怯えが伺える。どこまでも小心者ということだろう。セディルスさんのことが、バルキス様は怖いのだ。
「私からしれみれば、あなたの行動の方が理解できませんね。理解しようとも思いませんが……」
「な、なんだと?」
「貴族の令息であるならば、誇り高く気高くあるべきです。あなたのように自分勝手で他者を見下すような者を、私は認めたくありません」
「お、お前のような木っ端に認められる必要などない!」
セディルスさんの言葉に、バルキス様は大きな声で言い返した。
それは彼にとって、悪手といえる。今は辺りに人はいないが、その声を聞けば流石に人が集まってくるだろう。
それがわからないくらい、バルキス様は冷静さを失っているらしい。それは私達にとっては、都合が良いことだ
セディルスさんも、それを狙って煽っているということだろうか。いやこの場合は、単純に本心を述べただけの可能性もあるかもしれない。
「僕は、フェルクス伯爵家の長男だぞ? 何れは伯爵を継ぐ男なんだ。それに逆らうなんて――」
「……弱い犬程、よく吠えるものだな」
「――え?」
バルキス様のセディルスさんへの威嚇の言葉は、途中で途切れた。それは別の人物の声が挟まったからだ。
その低い声を発した女性は、ゆっくりとこちらに歩いてきている。その人のことは、私も知っていた。彼女は王女であるウルティナ姫だ。
「ウ、ウルティナ姫……」
「随分と間抜けな表情だな、バルキス。貴様とはそれなりの付き合いだが、そのような表情を見るのは初めてだ。いつものように取り繕ってみせてみろ」
「あ、いや、僕は別に……」
ウルティナ姫の来訪に、バルキス様はかなり焦っているようだった。
私も、少し驚いている。人が集まってくるとは思っていたが、まさか王女殿下が来るとは思っていなかったからだ。
「情けない奴め。これが私の婚約者候補など聞いて呆れるものだ」
「ウルティナ姫、焦るようなことなど僕にはありません。僕はただ、こちらの使用人と騎士見習いと談笑していただけなのですから」
「談笑か。そんな雰囲気ではなさそうだがな……さて」
バルキス様の言葉を聞き流しながら、ウルティナ姫は視線を私の方に向けてきた。
彼女が私のことを知らない訳もない。やはり彼女も、私のことは快く思っていないのか、ゆっくりとため息をついていた。
ただそれは一瞬のことで、ウルティナ姫はすぐにバルキス様の方を向いた。とりあえずこの場において、彼女は味方と考えても良さそうだ。
「……」
「どうなるか、わかっているんだろうな? 理解していないのか?」
バルキス様は、セディルスさんのことを睨みつけていた。
ただ彼の表情からは怯えが伺える。どこまでも小心者ということだろう。セディルスさんのことが、バルキス様は怖いのだ。
「私からしれみれば、あなたの行動の方が理解できませんね。理解しようとも思いませんが……」
「な、なんだと?」
「貴族の令息であるならば、誇り高く気高くあるべきです。あなたのように自分勝手で他者を見下すような者を、私は認めたくありません」
「お、お前のような木っ端に認められる必要などない!」
セディルスさんの言葉に、バルキス様は大きな声で言い返した。
それは彼にとって、悪手といえる。今は辺りに人はいないが、その声を聞けば流石に人が集まってくるだろう。
それがわからないくらい、バルキス様は冷静さを失っているらしい。それは私達にとっては、都合が良いことだ
セディルスさんも、それを狙って煽っているということだろうか。いやこの場合は、単純に本心を述べただけの可能性もあるかもしれない。
「僕は、フェルクス伯爵家の長男だぞ? 何れは伯爵を継ぐ男なんだ。それに逆らうなんて――」
「……弱い犬程、よく吠えるものだな」
「――え?」
バルキス様のセディルスさんへの威嚇の言葉は、途中で途切れた。それは別の人物の声が挟まったからだ。
その低い声を発した女性は、ゆっくりとこちらに歩いてきている。その人のことは、私も知っていた。彼女は王女であるウルティナ姫だ。
「ウ、ウルティナ姫……」
「随分と間抜けな表情だな、バルキス。貴様とはそれなりの付き合いだが、そのような表情を見るのは初めてだ。いつものように取り繕ってみせてみろ」
「あ、いや、僕は別に……」
ウルティナ姫の来訪に、バルキス様はかなり焦っているようだった。
私も、少し驚いている。人が集まってくるとは思っていたが、まさか王女殿下が来るとは思っていなかったからだ。
「情けない奴め。これが私の婚約者候補など聞いて呆れるものだ」
「ウルティナ姫、焦るようなことなど僕にはありません。僕はただ、こちらの使用人と騎士見習いと談笑していただけなのですから」
「談笑か。そんな雰囲気ではなさそうだがな……さて」
バルキス様の言葉を聞き流しながら、ウルティナ姫は視線を私の方に向けてきた。
彼女が私のことを知らない訳もない。やはり彼女も、私のことは快く思っていないのか、ゆっくりとため息をついていた。
ただそれは一瞬のことで、ウルティナ姫はすぐにバルキス様の方を向いた。とりあえずこの場において、彼女は味方と考えても良さそうだ。
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