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20.険しい道でも
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「この婚約は、実質的にオーガル子爵家がドベルグ伯爵家を取り込むというものだ。簡単な婚約ではないということは、ティセリアもわかっているとは思うが……」
「ええ……」
今回の一件で、ドベルグ伯爵家は弱っていた。
当主が腑抜けたこともあって、私は矢面に立つことになった。ただ、まだ経験も何もない私だけで家を支え切れるかというと、微妙な所だ。悪意を持った誰かによって、良くないことが起きる可能性もある。
そう思った私は、人を頼ることに決めた。しかし頼れる人というのは限られている。私にはそこまで人脈というものもなかった。唯一頼れたのが、オーガル子爵家だったのだ。
幸いなことに、今回の件においてオーガル子爵家は被害者という見方もある。
よって恐らく、ドベルグ伯爵家が全てを明け渡すという構図も、そこまでおかしいものとは捉えられないだろう。代償を払ったと、思ってもらえるかもしれない。
「ですが、その辺りについてはオーガル子爵を信頼しています。彼は私にも良くしてくれていましたから。今回の件でも、私を責めることはありませんでした」
「ああ、父上も母上も、親への恨みを子にぶつけるような人ではないさ」
「オーガル子爵夫人も、私を慰めてくださいました。幼い頃から、お父様と交流があった夫人も色々と思う所はあるでしょうに……」
オーガル子爵家の人々は、お父様のことで私を責めたりはしなかった。
私としては、ありがたい限りである。これでなんとか、ドベルグ伯爵家の領民達が苦しむようなことにはならないだろう。
「真に重たい決断をしたのは、ティセリアの方だろう」
「いえ、そこまで重たい決断という訳ではありませんよ。私は別に、ドベルグ伯爵家がドベルグ伯爵家として存在していることを重視していませんから。重要なのは、領民に不自由させないことです。オーガル子爵なら悪いようにはしないでしょう。当然、アウェイン様も」
「立派な心掛けだな。しかし、父上も困っている部分もある。身に余るものだからな。その辺りは、俺達が支えていくしかないか……」
私達は、これからなんとかして二つの家の領民を守っていかなければならない。
それは決して、簡単なことではない。険しい道になるだろう。だが、それでもやり遂げてみせる。私は自分にそう言い聞かせながら、目の前にいるアウェイン様の方を見る。
「……そうだ。言っておかなければならないな」
「え? 何をですか?」
「こんな形の婚約であるが、俺は君を不幸にするつもりはない。必ず幸せにすると、約束しておこう」
「……ありがとうございます、アウェイン様」
アウェイン様からの言葉に、私は思わず笑みを浮かべた。
結果的にではあるが、憧れていた彼と結婚できるというのは嬉しいものである。
とはいえ、それに溺れ過ぎてはいけない。お父様やイルーネを反面教師として、適切に愛情を育んでいくべきだ。
そんなことを思いながら、私はアウェイン様と話を続けるのだった。
END
「ええ……」
今回の一件で、ドベルグ伯爵家は弱っていた。
当主が腑抜けたこともあって、私は矢面に立つことになった。ただ、まだ経験も何もない私だけで家を支え切れるかというと、微妙な所だ。悪意を持った誰かによって、良くないことが起きる可能性もある。
そう思った私は、人を頼ることに決めた。しかし頼れる人というのは限られている。私にはそこまで人脈というものもなかった。唯一頼れたのが、オーガル子爵家だったのだ。
幸いなことに、今回の件においてオーガル子爵家は被害者という見方もある。
よって恐らく、ドベルグ伯爵家が全てを明け渡すという構図も、そこまでおかしいものとは捉えられないだろう。代償を払ったと、思ってもらえるかもしれない。
「ですが、その辺りについてはオーガル子爵を信頼しています。彼は私にも良くしてくれていましたから。今回の件でも、私を責めることはありませんでした」
「ああ、父上も母上も、親への恨みを子にぶつけるような人ではないさ」
「オーガル子爵夫人も、私を慰めてくださいました。幼い頃から、お父様と交流があった夫人も色々と思う所はあるでしょうに……」
オーガル子爵家の人々は、お父様のことで私を責めたりはしなかった。
私としては、ありがたい限りである。これでなんとか、ドベルグ伯爵家の領民達が苦しむようなことにはならないだろう。
「真に重たい決断をしたのは、ティセリアの方だろう」
「いえ、そこまで重たい決断という訳ではありませんよ。私は別に、ドベルグ伯爵家がドベルグ伯爵家として存在していることを重視していませんから。重要なのは、領民に不自由させないことです。オーガル子爵なら悪いようにはしないでしょう。当然、アウェイン様も」
「立派な心掛けだな。しかし、父上も困っている部分もある。身に余るものだからな。その辺りは、俺達が支えていくしかないか……」
私達は、これからなんとかして二つの家の領民を守っていかなければならない。
それは決して、簡単なことではない。険しい道になるだろう。だが、それでもやり遂げてみせる。私は自分にそう言い聞かせながら、目の前にいるアウェイン様の方を見る。
「……そうだ。言っておかなければならないな」
「え? 何をですか?」
「こんな形の婚約であるが、俺は君を不幸にするつもりはない。必ず幸せにすると、約束しておこう」
「……ありがとうございます、アウェイン様」
アウェイン様からの言葉に、私は思わず笑みを浮かべた。
結果的にではあるが、憧れていた彼と結婚できるというのは嬉しいものである。
とはいえ、それに溺れ過ぎてはいけない。お父様やイルーネを反面教師として、適切に愛情を育んでいくべきだ。
そんなことを思いながら、私はアウェイン様と話を続けるのだった。
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