不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

木山楽斗

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68.刺激された記憶

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 私は泊っている客室にて、エムリーとともに就寝の準備をしていた。
 例の件が判明してから、夕食などもそれ程楽しいものではなかった。ブライト殿下も含めて、気分が下がっていたのだ。

「……」
「……エムリー、少しいいかしら?」
「え? な、なんでしょうか?」

 そこで私は、エムリーのことが少し気になった。
 彼女は、浮かない顔をしている。それはなんというか、私達が落ち込んでいたからという訳ではないような気がする。
 もしかしたら、何かあったのではないか。そう考えて、一応話しかけてみることにしたのだ。反応から考えても、恐らくそれは間違いないだろう。

「あなたは今、何かを抱えているのではないかしら? もしもよかったら、それを聞かせてもらいたいのだけれど」
「えっと……」
「まあ、話したくないというなら、それでも構わないわ」
「いえ、話したくないことではないんです。ただ、とても曖昧なことでして……」
「曖昧……」

 エムリーは、苦い顔をしていた。
 本当に話しにくそうだ。曖昧なことという言葉に、間違いはなさそうだ。

「少しずつでもいいから、話してもらえないかしら」
「よくわからないんです。記憶の中にある何かが、ぼんやりと頭の中を漂っていて……」
「まさか、記憶が戻ろうとしているの?」
「そうなのかもしれません。そのきっかけは多分、この事件だと思うのですが……」

 エムリーの言葉に、私は少し驚くことになった。
 何のきっかけで記憶が戻るかなんて、わからない。それは理解していたつもりだ。
 ただ、それが今回の事件というのは意外である。彼女は、ムドラス伯爵令息やヴォルダン伯爵令息とも関わりなんてないはずなのだが。

「言っておくけれど、無理に思い出す必要はないのよ?」
「ええ、わかっています。ただ、このことはお姉様に関わることかもしれないので、少し気になって……」
「私のために思い出そうとしてくれているのは嬉しいわ。でも、無理は禁物なのよ。それはお医者様からも言われているでしょう?」
「そ、そうですね……」

 エムリーが一体何を思い出そうとしていたかは、すごく気になる。
 それはもしかしたら、私が今回の件に感じている不安を拭ってくれるものかもしれないからだ。
 ただ、無理をさせ過ぎて彼女の心が壊れてしまう方が問題である。私は彼女に思考させることをやめさせた。

 代わりに、私は考えることにする。
 今回の件とエムリー、それを結びつける何かがあるのだろうか。
 しかしいくら考えても、答えは出てこない。もしかして、単にタイミングが重なっただけで、関わりなんてものはないということだろうか。
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