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87.訪ねて来た人は
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「あれ?」
そこで、私は少し驚いた。戸を叩く音が、聞こえてきたからだ。
寮の部屋を訪ねられることは、珍しいことではない。大方、メルティナ辺りが何か話したいことがあって、訪ねて来たのだろう。
「えっと……誰ですか?」
「アルフィアよ。入ってもいいかしら?」
「え? あ、うん。大丈夫だよ」
予想が外れて、私は少々驚くことになった。
まさか、アルフィアが訪ねてくるとは思っていなかった。なんだか、少しだけ緊張してしまう。
「とりあえず、そこにでも座って」
「ええ」
「……それで、どうしたの?」
「……あなたと話したかったのよ」
アルフィアは、恐る恐るそう言ってきた。それは、もしかして私に断られるかもしれないと思っているのだろうか。
なんというか、とてもしおらしい。あまり、彼女らしくない態度である。
「えっと、何を話したいの?」
「……まずは、改めてお礼を言わせてもらうわ。あなたのおかげで、私はこうやっていられる……だから、ありがとう」
「別に、私は特に何かをしたという訳ではないよ。メルティナや他の皆が頑張ってくれたから、あなたは助かった訳だし……」
アルフィアからお礼を言われて、私は思わずそんなことを言っていた。
先程まで色々と考えたせいで、この会話でもそれを引きずってしまったようだ。ここは、卑屈になるような場面ではないはずなのに。
「そういうことではないわ。私が言っているのは、私にしてくれた説教のことよ」
「え? 説教?」
「あの時、あなたがああ言ってくれなければ、私は変われなかったと思っているのよ」
アルフィアは、少し恥ずかしそうにしていた。こうやって、面と向かって素直な気持ちを伝えるのに慣れていないからだろう。
それはなんだか少し可愛らしいような気がしたが、今重要なのはそこではない。彼女が話している内容の方である。
つまり、彼女は元の体に戻れたことに対するお礼ではなく、あの時の言葉に対するお礼を言っているのだ。
「ええっと……あの時は、偉そうなことを言って、ごめんね」
「……なんで謝るのよ?」
「いや……ちょっと、思い返してみるとなんか上から目線というか、変にテンションが上がっているというか……」
「ど、どうしたのよ?」
アルフィアに言われて、私はあの時のことを鮮明に思い出していた。
あの時は、これでもう最期だと思って、少し格好つけていた。それが、今となっては結構恥ずかしいのである。
多分、あの時はハイになっていたのだろう。なんというか、むずむずしてくる。
「べ、別に恥ずかしがらなくてもいいじゃない。そんな風に言われると、それで変わろうと思った私の方も、恥ずかしくなってくるわ」
「え? あ、そ、そうかなあ……」
「そうよ、まったく……はあ、まあ、確かにあなたはあんな感じの人ではないみたいだけれど……」
「……あ、でも、あの時のは説教ではないんだよ?」
「……ああ、そうだったわね」
アルフィアは、少し呆れたように笑っていた。
もしかしたら、彼女の中でも私は神秘的な人だったのかもしれない。そうだったとしたら、それを今覆せたのは、幸いなことなのではないだろうか。
そこで、私は少し驚いた。戸を叩く音が、聞こえてきたからだ。
寮の部屋を訪ねられることは、珍しいことではない。大方、メルティナ辺りが何か話したいことがあって、訪ねて来たのだろう。
「えっと……誰ですか?」
「アルフィアよ。入ってもいいかしら?」
「え? あ、うん。大丈夫だよ」
予想が外れて、私は少々驚くことになった。
まさか、アルフィアが訪ねてくるとは思っていなかった。なんだか、少しだけ緊張してしまう。
「とりあえず、そこにでも座って」
「ええ」
「……それで、どうしたの?」
「……あなたと話したかったのよ」
アルフィアは、恐る恐るそう言ってきた。それは、もしかして私に断られるかもしれないと思っているのだろうか。
なんというか、とてもしおらしい。あまり、彼女らしくない態度である。
「えっと、何を話したいの?」
「……まずは、改めてお礼を言わせてもらうわ。あなたのおかげで、私はこうやっていられる……だから、ありがとう」
「別に、私は特に何かをしたという訳ではないよ。メルティナや他の皆が頑張ってくれたから、あなたは助かった訳だし……」
アルフィアからお礼を言われて、私は思わずそんなことを言っていた。
先程まで色々と考えたせいで、この会話でもそれを引きずってしまったようだ。ここは、卑屈になるような場面ではないはずなのに。
「そういうことではないわ。私が言っているのは、私にしてくれた説教のことよ」
「え? 説教?」
「あの時、あなたがああ言ってくれなければ、私は変われなかったと思っているのよ」
アルフィアは、少し恥ずかしそうにしていた。こうやって、面と向かって素直な気持ちを伝えるのに慣れていないからだろう。
それはなんだか少し可愛らしいような気がしたが、今重要なのはそこではない。彼女が話している内容の方である。
つまり、彼女は元の体に戻れたことに対するお礼ではなく、あの時の言葉に対するお礼を言っているのだ。
「ええっと……あの時は、偉そうなことを言って、ごめんね」
「……なんで謝るのよ?」
「いや……ちょっと、思い返してみるとなんか上から目線というか、変にテンションが上がっているというか……」
「ど、どうしたのよ?」
アルフィアに言われて、私はあの時のことを鮮明に思い出していた。
あの時は、これでもう最期だと思って、少し格好つけていた。それが、今となっては結構恥ずかしいのである。
多分、あの時はハイになっていたのだろう。なんというか、むずむずしてくる。
「べ、別に恥ずかしがらなくてもいいじゃない。そんな風に言われると、それで変わろうと思った私の方も、恥ずかしくなってくるわ」
「え? あ、そ、そうかなあ……」
「そうよ、まったく……はあ、まあ、確かにあなたはあんな感じの人ではないみたいだけれど……」
「……あ、でも、あの時のは説教ではないんだよ?」
「……ああ、そうだったわね」
アルフィアは、少し呆れたように笑っていた。
もしかしたら、彼女の中でも私は神秘的な人だったのかもしれない。そうだったとしたら、それを今覆せたのは、幸いなことなのではないだろうか。
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