妹のようなものだから浮気じゃないと言っておいて、彼女との間に子供ができているのはどういう了見でしょうか?

木山楽斗

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1.心で繋がった妹

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 婚約者であるダルギス様が女性と一緒にいるのを見て、私は目を丸めていた。
 彼はその女性と親しそうに話している。知らない女性だ。身なりからして恐らく令嬢なのだろうが、一体何者だろうか。

「そういえば、婚約おめでとうございます」
「ああ、そうか。君とは婚約が決まってから初めて会うのか……」
「ええ、そうですよ。最近のダルギスお兄様は色々とお忙しそうでしたから」

 令嬢はダルギス様のことを兄と呼んでいた。しかしそれはおかしな話だ。
 私が知っている限り、彼には妹なんていない。いやもしかしたら、腹違いの妹などという可能性はあるのだろうか。

 何はともあれ、それを確かめるためには二人の前に出て行くしかないだろう。私は勇気を出して一歩を踏み出す。

「……ダルギス様?」
「レネシア? どうしたんだい? そんな怖い顔をして…」
「あら……」

 私が出て行くと、二人は目を丸くして驚いていた。
 屋敷の裏でこそこそと話していたのが見つかったのだ。それはもう気まずいことだろう。
 しかし二人はすぐに笑顔を浮かべた。その変遷の意味がわからず、私は困惑する。

「ダルギスお兄様、きっとレネシア嬢は私がダルギスお兄様の浮気相手などと思ったのでしょう」
「ああ、なるほど、そういうことか。すまなかったね、レネシア。どうやら僕は君を勘違いさせてしまったようだ……」
「勘違い?」

 勘違いも何も、二人はこうして秘密裏に親密にしていた訳だ。それはもう浮気以外の何物でもないだろう。
 ただ先程考えた通り、兄妹という可能性はある。それを考慮して、私はとりあえず話を聞くことにする。

「彼女は僕の妹なんだ」
「妹……その可能性は考えていました。しかしダルギス様に妹はいらっしゃいませんよね? 申し上げにくいことではありますが……腹違いであるとか?」
「いや、父上は浮気なんてしないさ」
「それなら夫人が?」
「母上もそうだ。二人の仲は良好だよ」

 ダルギス様の言葉に、私は首を傾げることになった。
 二人の仲が良好で、それなのに存在しないはずの妹がいる。それはおかしな話だ。まさか認知されていない妹だとでも言い出すのだろうか。

「……それなら、彼女はなんなのですか?」
「僕達は心で繋がった兄妹なんだよ」
「はい?」
「幼い頃から、ともに過ごす機会が多くてね。いつしかそう思うようになったんだ」
「はい。私とダルギスお兄様は兄妹です。ダルギスお兄様が恋愛対象なんて……そんなのあり得ませんよ」
「まあ要するに、ペルルナは妹のようなものだから、これは浮気ではないんだよ。レネシア嬢なら、わかってくれるね?」

 二人の主張に、私は固まることになった。
 心で繋がった兄妹、その主張に私はただただ困惑するのだった。
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