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7.社交界での評価
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ラナクト伯爵家の屋敷に戻った私は、お父様に事情を説明した。
ラルークお兄様とネリーお義姉様が味方になってくれたこともあって、お父様はその重い腰をすぐに上げてくれた。ダルギス様及びタルナート伯爵家の行いを糾弾し始めたのだ。
根も葉もない噂が立つこともある社交界ではあるが、結局の所一番強いのは事実である。
ダルギス様とペルルナ嬢の関係はすぐに周知のものとなり、二人の怪しい行動などに関する証言はいくつも出てきた。
結果として、ダルギス様の浮気は事実として受け止められている。タルナート伯爵家は、最早社交界の論調を覆せない程に追い詰められていた。
「迅速な行動が良かったのでしょうね。レネシア嬢のあの場での婚約破棄は正しかったといえます」
「まあ、少し大胆な行動かとも思いましたが、結果的には功を奏したといえますね」
一度関わったということもあって、イルヴァン様には逐次状況を伝えている。基本的には文書だが、今日は彼がラナクト伯爵家の屋敷を訪ねて来ていた。
一応、ネリーお義姉様の親族ではある彼だが、本来であればこのような訪問はしないだろう。二人は本当に、真っ当ないとこ関係であるようだし。
「父上はいつも少し行動が遅い所があるからね。だからこそレネシアもそういった判断を下したのだろうけれど……」
「お義父様はお優しい方ではあるのだけれど……」
「その優しさが仇となりものさ。特に社交界ではね。まあ尊敬できる点は見習い、そうではない点は反面教師にするだけさ」
お兄様とお義姉様は、次期ラナクト伯爵夫妻として現当主について評価をしていた。
私のお父様に対する考えも、概ねそれと同じである。お父様はどうにも、一手遅いことがあるのだ。良く言えば慎重な性格なのである。
「でも、イルヴァン様が例の情報をもたらしてくれたことには、本当に感謝しています。お陰でこちらはすぐに行動ができましたから」
「ああ、あれについては偶然の産物ですよ。ペルルナ嬢が頼った医者が、当家の領地の医者でしてね……まあ、評判が良い医者ではありません。少なくとも口は堅くなかった。最近貴族の令嬢を秘密裏に診たと漏らしていましたよ」
ペルルナ嬢は、良くない医者を頼ってしまったらしい。事実を隠すために、敢えて真っ当な医者は頼らなかったのだろうが、それが裏目に出たといえる。
いやそれすらも意図的だったと考えられるだろうか。彼女はなんというか、ばれても構わないというような雰囲気だった。
ダルギス様を手に入れるために、噂を流すような医者を選んだのかもしれない。いやそれは私の考え過ぎだろうか。
ラルークお兄様とネリーお義姉様が味方になってくれたこともあって、お父様はその重い腰をすぐに上げてくれた。ダルギス様及びタルナート伯爵家の行いを糾弾し始めたのだ。
根も葉もない噂が立つこともある社交界ではあるが、結局の所一番強いのは事実である。
ダルギス様とペルルナ嬢の関係はすぐに周知のものとなり、二人の怪しい行動などに関する証言はいくつも出てきた。
結果として、ダルギス様の浮気は事実として受け止められている。タルナート伯爵家は、最早社交界の論調を覆せない程に追い詰められていた。
「迅速な行動が良かったのでしょうね。レネシア嬢のあの場での婚約破棄は正しかったといえます」
「まあ、少し大胆な行動かとも思いましたが、結果的には功を奏したといえますね」
一度関わったということもあって、イルヴァン様には逐次状況を伝えている。基本的には文書だが、今日は彼がラナクト伯爵家の屋敷を訪ねて来ていた。
一応、ネリーお義姉様の親族ではある彼だが、本来であればこのような訪問はしないだろう。二人は本当に、真っ当ないとこ関係であるようだし。
「父上はいつも少し行動が遅い所があるからね。だからこそレネシアもそういった判断を下したのだろうけれど……」
「お義父様はお優しい方ではあるのだけれど……」
「その優しさが仇となりものさ。特に社交界ではね。まあ尊敬できる点は見習い、そうではない点は反面教師にするだけさ」
お兄様とお義姉様は、次期ラナクト伯爵夫妻として現当主について評価をしていた。
私のお父様に対する考えも、概ねそれと同じである。お父様はどうにも、一手遅いことがあるのだ。良く言えば慎重な性格なのである。
「でも、イルヴァン様が例の情報をもたらしてくれたことには、本当に感謝しています。お陰でこちらはすぐに行動ができましたから」
「ああ、あれについては偶然の産物ですよ。ペルルナ嬢が頼った医者が、当家の領地の医者でしてね……まあ、評判が良い医者ではありません。少なくとも口は堅くなかった。最近貴族の令嬢を秘密裏に診たと漏らしていましたよ」
ペルルナ嬢は、良くない医者を頼ってしまったらしい。事実を隠すために、敢えて真っ当な医者は頼らなかったのだろうが、それが裏目に出たといえる。
いやそれすらも意図的だったと考えられるだろうか。彼女はなんというか、ばれても構わないというような雰囲気だった。
ダルギス様を手に入れるために、噂を流すような医者を選んだのかもしれない。いやそれは私の考え過ぎだろうか。
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