妹のようなものだから浮気じゃないと言っておいて、彼女との間に子供ができているのはどういう了見でしょうか?

木山楽斗

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13.彼らの行き先(モブside)

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「……どういうつもりなんだ? この僕をこんな所に連れ出して、何をするつもりだというんだ?」

 暗い地下にて、ダルギスはペルルナに対して問いかけていた。
 彼は突如現れた彼女に、連れ出されたのだ。一緒に来てほしい、ペルルナのそんな願いを負い目やタルナート伯爵家にいることへの苦しさから受け入れたのである。

 しかしダルギスは困惑していた。彼が今いるのは、薄暗い地下である。そこでうつろな表情をしたペルルナと対峙することは、ダルギスにとって不安でしかなかった。

「ペルルナ、答えるんだ?」
「……ダルギス様、あなたは何を思っていらっしゃるのですか?」
「何?」
「お腹の子に関してです。この子は私とあなたの愛の結晶なのですよ?」
「いや、それは……」

 ダルギスは未だに、ペルルナとの間に子供ができたという事実を受け入れられていなかった。
 故に彼は目を離した。ペルルナから視線を外したのである。
 その直後、ダルギスは血の気が引くのを感じた。彼が再度ペルルナの方に視線を向けると、彼女が自分に対して何かを突き刺しているのが目に入ってきた。

「ペ、ペルルナ、何を……」
「ふふっ……」

 目を丸めて固まっていたダルギスは、痛みを感じていた。未だかつて経験したことがない激しい痛みに苦しむ彼は、それを見ながら笑みを浮かべるペルルナに対して混乱する。

「うぐっ……あがっ! ペルルナどうして……はがっ」
「ダルギスお兄様は私のものです。これで私達の愛は永遠のものとなるのです」
「……待て、落ち着けペルルナ。ペルルナ、頼む落ち着いてくれ……あぐっ、誰か人を呼ぶんだ。呼んでくれ……」

 ダルギスはペルルナに対して、必死に呼びかけた。
 着々と近づいてくる嫌な感覚に、彼はただ懇願することしかできない。ペルルナに正気に戻ってもらうしか、今の彼に助かる道はなかった。
 しかしダルギスは、薄々と感じていた。最早ペルルナに、自身の言葉が届かないであろうことを。

「……」
「ペ、ペルルナ……」

 ペルルナは刃を突き立てたまま、離れていく。力なく歩く彼女の後ろ姿を、ダルギスはただ見つめていることしかできない。
 彼はその場にうずくまっていた。激しい痛みで、とても動けそうにはない。しかしここはどこかもわからない地下だ。誰かに助けを求めても、その声が届くことはない。
 ダルギスはゆっくりと、今の状況を理解していった。押し寄せてくる絶望に、彼は目を瞑る。

「……」

 ダルギスの思考は、そこで止まった。
 絶望に押しつぶされた彼には、それ以上何も考えられなかったのである。
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