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46.狂気の魔族

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「ラムフェグという魔族は、俺達人間にとって最大級の脅威だった……いや、その表現は少し正しくないかもしれないが……奴は強大な力を持ち、狡猾でもあった。そして、何より人間と魔族の争いを望んでいた」
「人間と魔族の争いを望んでいた? それは、どういうことですか?」
「魔族が人間界に攻めて来たのは、領土の拡大などいった目的があった。当然のことかもしれないが、理由もなく攻めてきた訳ではない」
「それは……そうですよね?」
「その是非が問題という訳ではない。問題は、ラムフェグにはそんな理由がないということだ」
「理由がない……?」

 フレイグ様は、何か書類を作成しながらそんなことを言ってきた。
 ラムフェグという魔族には、理由がない。それは、どういうことなのだろうか。

「奴の目的は、争いそのものなんだ。たくさんの血が流れることを望んでいる。そんな奴なんだ」
「それは……」

 フレイグ様の言葉に、私はとても恐ろしくなった。
 争いそのものが目的。それは、正気の沙汰とは思えない。
 フレイグ様やラフード、クーリアがこれだけ彼のことを重要視している理由が理解できた。彼は、他のどんな者達よりも危険な思想を持っているのだ。

「蘇ったというなら、奴は必ずまた争いを起こすだろう。奴には目的などというものはない。無理やりにでも魔族を焚きつけて、争いを起こすはずだ。それは、なんとしても止めなければならない」
「……そうですね」

 ラムフェグのことを聞いて、私はフレイグ様の焦りがとても理解できるようになっていた。
 そんな危険な思想を持つ魔族だけは、野放しにしておく訳にはいかないだろう。なんとしても、止めなければならない。

「とりあえず、魔族側に連絡を取る必要があるな……」
『……俺の元について来ていた奴らとは、今でも繋がっているようだな』
「魔族にも、協力者がいるのですね?」
「ああ、ラフードの元に集っていた者達だ。人間と友好的にしたい魔族も、少なくはないんだ」
「そうですか……」

 どうやら、フレイグ様とラフードの元に集った魔族達は、繋がっているようだ。
 それなら、魔界にいるはずのラムフェグのこともわかるだろう。とりあえず、その部分は安心だ。

「……場合によっては、俺も魔界に乗り込む必要があるか。奴と戦えるのは、恐らく俺くらいだ」
「そうなんですね……」

 フレイグ様は、ゆっくりとそう呟いた。
 こうして、蘇ったラムフェグに対抗するために、様々なことが動き始めるのだった。
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