「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗

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18.素直な気持ち

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「ただね、話はもっと複雑な方向に進んでいるんだ」
「え?」

 サルドンさんは、私に対してさらにそんなことを言ってきた。
 どうやら、ズウェール王国は思っていた以上に大変なことになっているようだ。王城の乱心に加えて、まだ何かあるとはどういうことなのだろうか。

「王城は、退職を願い出る者達の家族の者達に兵を遣わせたそうだ。これが、どういう意味か、君にもわかるだろう?」
「まさか……人質ということですか?」
「ああ、そういうことのようだ。働かなければ、家族がどうなるかわからない。そういう状況に、労働者達は追い込まれたようだよ」

 私は、絶句していた。腐っていたとは思っていたが、まさかそこまで王国が腐り切っていたとは。
 家族を人質に取る。それは、なんとも残酷な手法だ。ここまで非道なことができるなんて、あの国の重鎮達には、人の心というものがないのだろうか。

「しかしね、これは流石にまずかった。君の部下には、色々な身分の者がいたのだろう? 貴族もいれば、平民もいたはずだ」
「ええ、それはそうですけど……」
「兵の派遣は、全ての身分を刺激することになった。王族への不信感を生み出すことになったのだよ。今までは、隠匿されていた部分が、明るみになったということなのかもしれないが……」
「……あの国の王族は、ひどいものでした」
「なるほど……やはり、そういうことなのか」

 王城内のことは、基本的には口外することが許されない。王国内で、もっと重要な場所でのことだからだ。
 だからこそ、今までは人々にあの現状は知らされていなかった。外面だけは辛うじて王族も保てていたので、問題はなかった。
 だが、それが外部に出てしまったのである。すると、どうなるか。それは、なんとなく予想できることだ。

「今、ズウェール王国は燃えている最中だ。二人が戻って来て、私は正直安心しているよ。タイミングが良かった。一歩間違えていれば、暴動に巻き込まれていたかもしれない」
「……それは」

 サルドンさんの言葉に、私だけではなく、スライグさんもセレリアさんも驚いていた。そこまでは、流石に二人も知らなかったようだ。

「さて……それで、君はどうするつもりかな?」
「え?」
「今、君の故郷は燃えている……戻りたいと思うかい? 王国を救うために、聖女として帰還する気はあるかな?」

 そこで、サルドンさんはそんな質問をしてきた。
 聖女として、私があの王国に戻る。それは、確かにいいことかもしれない。
 私には影響力があった。それは、結果として残っていることだ。そんな私が戻れば、現状を何か変えられるかもしれない。

「……いいえ、私には関係がないことです」
「……そうか」

 だが、私はあの王国に戻る気はなかった。
 私が戻って、意味があるとは思えない。もし私が戻ったとしても、それは王族の方に利益があるように思えてしまう。
 これからのことを考えると、私は悲劇のヒロインとして消えている方がいいはずである。大義名分や御旗として掲げられている方が、物事はいい方向に行くのではないだろうか。

「……私は、もう疲れてしまったんです」
「……うむ、そうかもしれないね」

 色々と考えたが、私はそんな一言を発していた。
 無責任かもしれないが、結局の所、それが私の一番素直な気持ちなのかもしれない。
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