「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗

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72.戦う覚悟

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「マルギアスさん、この近くに騎士と連絡できる場所はありますか?」
「ええ、最寄りの村まで行けば、なんとかなります」
「それなら、あなたと御者をしている騎士で、そこに向かってください。増援を読んで欲しいのです……私は、グーゼス様と戦いますから」
「なっ……!」

 私の言葉に、マルギアスさんは驚いていた。それは、そうだろう。追いかけて来る者の元にわざわざ行くなんて、普通はあり得ないことだ。
 だが、私は元聖女である。あれくらいの化け物に恐れることはない。もちろん、多少恐怖はあるが、それでも立ち向かうことはできるのだ。

「それでは」
「え?」

 私は、短くそう言ってから馬車の窓から飛び出した。風の魔法で、体を操りながら、ゆっくりとその場に立つ。

「……ルルメア!」

 すると、グーゼス様は獣が叫ぶように私の名前を呼びながら、その場に制止した。やはり、彼の狙いは私であるようだ。
 近くで見てみると、彼の体の細部が変わっていた。恐らく、ルミーネが改造を施したのだろう。
 具体的には、剣を携えていた右手と左手が巨大なかぎ爪になっている。より、近接戦闘に特化したといった所だろうか。

「……お前の方から来てくれるとは思っていなかったぞ? あはは、これでやっとお前を引き裂ける」
「相変わらず、私に逆恨みを向けているようですね?」
「逆恨み? 僕がこんな姿になったのは、お前のせいじゃないか」

 グーゼス様は、私の言葉にはっきりと返答してきた。どうやら、今回は会話できるくらいには正気のようだ。

「まあ、その姿になったのが私のせいかはともかくとして……あなたには、引導を渡してあげます。これ以上、その体を彼女に弄ばれないように……」
「引導? その言葉は、そのままお前に返してやる!」

 私の言葉に、グーゼス様はその腕を掲げた。そのかぎ爪が太陽の光を受けて、輝く。中々、鋭利な爪であるようだ。
 正直、あの爪は受けたくない。流石の私でも、あれで何度も切られたら一たまりもないからだ。
 よって、彼に近づかれるのは避けた方がいいだろう。有利な遠距離からの戦いを意識するべきだ。

「ルルメアさん!」
「え? マルギアスさん?」

 そんな私の横に、マルギアスさんが現れた。
 馬車に置いて来たはずの彼が、ここに来たことに私は少し驚いた。だが、すぐに理解する。よく考えたら、護衛対象を置いて逃げるはずがないと。

「まったく、急に飛び出されたら困ります」
「そうですね……それは、すみませんでした」
「まあ、どの道追いつかれていましたから、仕方ありませんね。御者の騎士には、言われた通り、最寄りの村に向かわせました。これで、増援も来ると思います」
「ありがとうございます」

 私とマルギアスさんは、ゆっくりと構えた。戦力が増えたのはありがたい。これで、勝てる可能性も高くなりそうだ。
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