婚約破棄されてから義兄が以前にも増して過保護になりました。

木山楽斗

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16.明るい未来へと

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「……俺の役目も、これで一区切りという訳か」
「カルードお義兄様……?」

 カルードお義兄様は、ゆっくりと天を仰いでいた。
 それはもしかしたら、アルリシアお姉様のことを思い出しているのかもしれない。お義兄様は、お姉様との約束で私を守ってきてくれたのだから。
 それが約束したからという理由だけではないことは、わかっている。しかしそれでも、そのことが深く関係していることは確かだろう。

「……セルーグ、イルネシアのことをどうかよろしく頼む」
「カルード兄様? 頭を上げてください」

 そこでカルードお義兄様は、セルーグ殿下にゆっくりと頭を下げた。
 その行動には、その場にいた誰もが驚いている。カルードお義兄様がそのようなことをするのは、とても珍しいことであるからだ。
 しかしそれは紛れもなく、カルードお義兄様がセルーグ殿下を認めてくれた証明である。私はそれを理解して、セルーグ殿下と視線を合わせた。

「カルードお義兄様、セルーグ殿下との婚約を認めてくださるのですね?」
「ああ、セルーグであるならば心配はないと俺も判断した」
「カルード兄様、そう言っていただけるのは光栄です」

 カルードお義兄様は、穏やかな表情をしていた。
 今まであった私を守るという意識が、少し薄らいだということなのだろう。
 その表情を見て、私はかなり安心していた。お義兄様がある種の呪縛から解放されたというなら、私としても嬉しいものである。

「……しかし、これで俺の役目が終わったとも思ってはいない」
「え?」

 そんなことを思っていると、カルードお義兄様の表情が元のように少し強張った。
 それに私とセルーグ殿下は、再び顔を見合わせた。周囲にいるクレリナ嬢やザベルス殿下、スヴェルツ殿下も動揺しているようだ。

「当然のことながら、アルリシアとの約束がこれで果たせたなどとは思っていない。例え誰と結婚しようと、イルネシアが俺の義妹であることは変わらないしな」
「あ、えっと、それはそうですけれど……」
「セルーグ、お前のことは俺がずっと見ている。それを忘れるなよ」
「も、もちろん、忘れはしませんが……」

 カルードお義兄様は、すっかりいつもの調子に戻っていた。先程までの殊勝な態度は、既に見る影もない。
 それはお義兄様らしいと言えば、お義兄様らしいことではあった。しかし、いくらなんでも過保護過ぎるのではないだろうか。私には、セルーグ殿下という守ってくれる人もできた訳だし。

「まあ、お兄様は変わりませんか……イルネシアお姉様も、セルーグ兄様も大変そうですね」
「そ、そうかもしれませんね……」
「まあ、僕としてはそうやって気を引き締めてくれる人がいることは、ありがたいことでもありますけれどね」
「セルーグ殿下……」

 セルーグ殿下は、私に対して笑みを向けてきた。
 それに私も、笑顔で応える。やはり彼は、とても頼りになる人だ。私はそれを改めて認識していた。
 そんな彼となら、きっと明るい未来を切り開いていける気がする。カルードお義兄様の介入などもあるかもしれないが、それでもそれは変わらないだろう。そう思いながら、私はセルーグ殿下と笑い合うのだった。


END
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