「50kg以上はデブ」と好きな人に言われ、こじらせた女のそれから

国湖奈津

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話術

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ところでこの後どうするんだろう?

同伴ならこの後時間を見てお店に行く感じになるけど、今日の予定ってどうなってるの?

何も話し合ってないからわからない。

こういう場合って聞いていいのかな?

そもそも今日って何時まで一緒にいられるんだろう?



「この後どこか行くか?地下がデパートに繋がってるらしいが」

よかった。
先輩が先に聞いてくれた。



「特に買い物ないですが、腹ごなしにウィンドウショッピングしますか?」

3時間くらいかけたゆっくりした食事だったため、お腹が結構いっぱいだった。

「あいよ」


う~ん。

これは何か欲しいものがある流れかな?

さりげなくどこかに誘導されておねだりされる流れかな?

今無駄に貯金があるから高いものねだられても買ってしまいいそうで怖い。

遺産相続するまでは買えないものは買えないって断ってたけど、今はほとんどの物買えちゃうから逆に怖い。

なるべく遺産には手を出したくないし、今は今まで使っちゃった分を稼いで老後のために貯蓄中なんだけど…。



「そろそろ冬物のコート欲しいと思ってたんだよ。ちょっと見ていい?」

私がうなずくと、先輩はスタスタとお店に入っていってしまった。



うわぁ。
そのお店で、しかもコート買うつもりですか?

ハンカチでよくない?

デパートの中に入っている海外のハイブランド。

冬物のコートって言ったら絶対お高いよ。

おじいちゃんごめんなさい。遺産使うかも。

私は両手を合わせ、天国のおじいちゃんに向かって拝んだ。


先輩は早速試着している。

身長が高いしスタイルもいいため無駄に似合う。

店員さんも先輩をほめちぎっていた。

拙い私の話術では良くないところを指摘して買わない流れに持って行けそうにない。

多分仕立てがいいのだろう。さらにスタイルよく見えてしまう。



「どう?」

「ものすごく似合ってます」

素直な私は本当のことを言ってしまった。

だってカッコいいんだもん。これは買う流れだわ。



「じゃあ、これお願いします」

やっぱり。
そして決断早っ。

お店に入って3分も経ってないんじゃない?

まさかこんなに早く買い物を終えると予想していなかった私は、お財布を出すのにもたもたしてしまっていた。

すると、先輩がカードを店員さんに渡していた。

あれ?先輩自分で買うの?



「細井も何か買う?悪い。自分の買い物だけ終えて帰ろうとしてた。ここ女性物もあるもんな。待ってるからゆっくり見てきて」

お財布を取り出している私を見た先輩は言った。



「私が支払おうかなと思っただけで、私は買い物はないです」

「なんで細井が支払うんだよ。意味わかんねー。俺誕生日まだだし」

先輩は「細井ずれてんなー」と言って笑っていた。

その後私たちはバラエティショップや本屋さんのフロアでそれぞれ少し買い物をした。

時刻は午後5時、そろそろこの後の予定が気になってしまう私である。



「あの、今日って何時まで一緒にいられるんですか?今5時です。そろそろ帰りますか?」

「何時まででも。もう帰りたい?」

「私も何時まででも大丈夫です」

何時まででもって何時?

ドキドキしてきた。
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