「50kg以上はデブ」と好きな人に言われ、こじらせた女のそれから

国湖奈津

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逆家庭訪問

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「そろそろ場所移動するか。夕食何食べたい?」

「お昼ご飯を遅くまで食べていたせいか、全くお腹が空きません。夕食はちょっとお野菜つまむくらいでいいかなと思ってます」

「同感。じゃあサラダでも買ってうち来る?お前の好きな日本酒もあるぞ」

「はい」

私は食い気味で返事をした。逆家庭訪問だ!

大学時代の私は、今と違って飲み会にもよく顔を出していた。

当時は特に日本酒が好きだった。

先輩は覚えていてくれたらしい。

言葉の端々から、先輩が私を気遣ってくれているのを感じて、そのたびに無価値だった自分に価値が生まれたような不思議な感覚があった。


地下鉄に乗って先輩に導かれるままついて行く。

下りた駅構内のスーパーで野菜やチーズ、加工肉とお酒を買った。

家でお酒を飲まない私は、今までお酒コーナーに寄らなかったけれど、ホストクラブで出されているお酒がすごく安く売っていてびっくりした。


先輩の部屋は夜景がきれいに見えるマンションの高層階にあった。

部屋は生活感がなく、必要最低限の物しか置かれてないようだ。

私はキッチンをお借りして、買ってきた野菜でサラダを作りはじめた。

「部屋もですけど、キッチンもすごくきれいですね」

私がちょっと苦手なのが潔癖症の人だ。

私がずぼらなので窓のサッシの埃チェックをされたりすると無理。

学生の頃の先輩の部屋は行ったことがあるけれど、大体お酒飲んでいたのでよく覚えていない。

キッチンの綺麗さに胸騒ぎがした私は、さりげなく探りを入れることにした。


「普段使わないからなぁ。3食外食やコンビニが当たり前の生活。この部屋も寝るためだけに借りてるようなものだし」

そういうことか。

「細井は自炊?」

「学生のころは出来合の物ばかりでしたけど、最近は自炊してます」

ホスト通いして唯一良かったのが自炊習慣がついたことだ。

ホストクラブに通うためには一生懸命働かなければならない。

そして働くためには体が健康でなければならない。

体が健康でいるためにはバランスの取れた食生活が重要。

…ということで自炊を始めた。

1人暮らしで自炊は高くつくかなぁと思っていたけれど、むしろ安く済んだので私は節約のためにも3食自炊している。

作り置きをすれば時間もそれほどかからない。



先輩に少し手伝ってもらってサラダとウィンナーが出来上がった。

先輩はつまみ食いしたウィンナーの焼き具合が最高と言ってすごく誉めてくれたけど、そこまで誉める料理じゃないです。

料理かどうかも怪しいです。



買ってきたビールを飲みながらサラダとウィンナーをつまんだ。

なんだろう。
私欲求不満なのかな。

どうしてもこの後のことを考えてドキドキしてしまう。

ドキドキしすぎて食事も喉を通らない。

でも残すのもったいないから食べるけど。

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