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お姉様
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お姉様に会うことも、お義兄様から連絡を受けることもなく手持無沙汰に時を過ごしていた私は、翌日の夜、お姉様から呼び出された。
部屋を訪ねると、侍女が私を寝室に連れて行った。
お姉様は弱弱しい姿で、ベッドに横になっていた。
「ごめんなさいね、こんな姿で」
お姉様の声はかすれていた。
「お姉様、夏風邪ですか?大丈夫なんですか?まずは体調を優先して頂いて、私との話は後回しでも大丈夫ですよ」
病人に無理をさせたくない。
「いえ、話は早い方がいと思うわ。きっと、あなたはとんでもない勘違いをしていると思うから」
「勘違い、ですか?」
どんな勘違いだろうか。
「ねぇ、ジャンから、あなたがおかしなことを言っていたって聞いたのだけど、それは本当?」
「おかしなこと、ですか?」
「イザック殿下が私を好きで、私とジャンを別れさせようとしているとかいう話よ」
「はい、言いました」
私が言うと、お姉様は盛大なため息をついた。
「あなたは直接イザック殿下からその話を聞いたの?」
「聞いたのは、私との結婚をイザックが白紙に戻そうとしているということだけです。お姉様のことをイザックが好きだというのは、本に書いてあったので、それで…」
この話をするのは悲しくて、お姉様を見ることができない。
うつむいてしまう。
「ちょっと待って。あなたたちの結婚を白紙に戻すって、殿下が?それ、本当なの?」
そんなことになればカナルソル侯爵家にとっても一大事だ。
お姉様は事の重大さに気づいたらしい。
「イザックがそう言っているのを、たまたま立ち聞きしてしまいました」
「なんてことなの。それで、殿下とはきちんと話をしたの?」
「いえ。ショックで逃げてきてしまいました。そしてお姉様と話をつけようと思って帰ってきました」
私が言うと、お姉様は頭を抱えてしまった。
「なぜ、私を殿下がお好きだと?確か本がどうとか言っていたわね?」
「本に書いてあったんです。姉や妹というのは、私のものをなんでもほしがる泥棒猫、いえ、略奪者だと」
「……はぁ~~~」
お姉様はまた、大きなため息をついた。
「お姉様、ため息をつくと幸せが逃げますよ」
「ため息もつきたくなるわ。あなたのせいで、私は大変な目に遭ったんだから…。まぁ、そのことは置いておいて、ねぇ、リュシー、確かにあなたが言うように、妹の物や姉の物を奪おうとする姉妹もいるかもしれない。だけど、私が今までそんなことをしたかしら?よく思い出してみて」
今まで17年間、共に育ってきた日々を思い出す。
お姉様から何かをもらったことはあっても、奪われたことは一度もない。
…デザートのケーキを1口奪われたことはあったけれど、あんなのは幼い日の微笑ましい思い出だ。
「どう?無いでしょう?だから、安心して」
優しい声で、お姉様は言った。
「では、イザックから求婚されても断ってくれますか?諦めて私と結婚するようにって言ってくれますか?」
「そのことなんだけど、絶対に何かがおかしいと思うわ。もちろん、もしもそんなことがあったら、あなたの望み通りにするわ。けれど、殿下はあなたのことを愛していらっしゃるはずよ。それなのに白紙に戻すだなんて…。きちんと殿下と話してみるべきだと思うわ」
ごほごほ、とお姉様は咳込んだ。
「お姉様と話せてよかったわ。私は明日帰ります。お姉様は良く寝て、早く元気になってね」
私は具合の悪そうなお姉様が休めるよう、早めに部屋を出た。
自分の部屋に戻った私は、お姉様の言葉が気になっていた。
『私があなたの物を奪おうとしたことがあった?無かったわよね。だからイザック殿下を奪うこともないわ』
お姉様の言っていたことは、ざっとまとめるとこうなると思う。
それを言われて頭にチラついているのが、エマの顔だ。
エマは私の妹で、9歳。
エマは私の真似をするのが好きで、先日も私が新しく仕立てたドレスを着てみたいと言って、私よりも先にドレスに袖を通していた。
残念ながらぶかぶかだったのだけれど、エマは満足そうにしていた。
リナから借りた本でも、妹に婚約者を奪われるお話の方が姉に奪われるお話よりも多かったと思う。
…でも、エマはまだ9歳なのだし、さすがにイザックの相手がエマ、ということはないわよね…。
「ねぇ、リナ。例えばなんだけど、大人の男性が9歳の女の子を好きになって結婚したいって思うことってあるかしら?」
リナならば、私よりも広い世界を知っていると思い、リナに意見を求めた。
「たまに、その手の犯罪はありますから、そういう大人もいるんじゃないですか?」
「犯罪!?」
「まともな大人なら、9歳の子が結婚できる年齢になるまで、待つでしょうね」
(!!!!!!!)
イザックは、エマが大人になるまで待とうとしている、ということ?
(大変だわ、急いで帰らなくちゃ)
とは言っても、今はもうすでに夜。
今から出発するわけにはいかない。
私は明日の早朝に出発すると伝えて、今晩は早めに眠ることにした。
部屋を訪ねると、侍女が私を寝室に連れて行った。
お姉様は弱弱しい姿で、ベッドに横になっていた。
「ごめんなさいね、こんな姿で」
お姉様の声はかすれていた。
「お姉様、夏風邪ですか?大丈夫なんですか?まずは体調を優先して頂いて、私との話は後回しでも大丈夫ですよ」
病人に無理をさせたくない。
「いえ、話は早い方がいと思うわ。きっと、あなたはとんでもない勘違いをしていると思うから」
「勘違い、ですか?」
どんな勘違いだろうか。
「ねぇ、ジャンから、あなたがおかしなことを言っていたって聞いたのだけど、それは本当?」
「おかしなこと、ですか?」
「イザック殿下が私を好きで、私とジャンを別れさせようとしているとかいう話よ」
「はい、言いました」
私が言うと、お姉様は盛大なため息をついた。
「あなたは直接イザック殿下からその話を聞いたの?」
「聞いたのは、私との結婚をイザックが白紙に戻そうとしているということだけです。お姉様のことをイザックが好きだというのは、本に書いてあったので、それで…」
この話をするのは悲しくて、お姉様を見ることができない。
うつむいてしまう。
「ちょっと待って。あなたたちの結婚を白紙に戻すって、殿下が?それ、本当なの?」
そんなことになればカナルソル侯爵家にとっても一大事だ。
お姉様は事の重大さに気づいたらしい。
「イザックがそう言っているのを、たまたま立ち聞きしてしまいました」
「なんてことなの。それで、殿下とはきちんと話をしたの?」
「いえ。ショックで逃げてきてしまいました。そしてお姉様と話をつけようと思って帰ってきました」
私が言うと、お姉様は頭を抱えてしまった。
「なぜ、私を殿下がお好きだと?確か本がどうとか言っていたわね?」
「本に書いてあったんです。姉や妹というのは、私のものをなんでもほしがる泥棒猫、いえ、略奪者だと」
「……はぁ~~~」
お姉様はまた、大きなため息をついた。
「お姉様、ため息をつくと幸せが逃げますよ」
「ため息もつきたくなるわ。あなたのせいで、私は大変な目に遭ったんだから…。まぁ、そのことは置いておいて、ねぇ、リュシー、確かにあなたが言うように、妹の物や姉の物を奪おうとする姉妹もいるかもしれない。だけど、私が今までそんなことをしたかしら?よく思い出してみて」
今まで17年間、共に育ってきた日々を思い出す。
お姉様から何かをもらったことはあっても、奪われたことは一度もない。
…デザートのケーキを1口奪われたことはあったけれど、あんなのは幼い日の微笑ましい思い出だ。
「どう?無いでしょう?だから、安心して」
優しい声で、お姉様は言った。
「では、イザックから求婚されても断ってくれますか?諦めて私と結婚するようにって言ってくれますか?」
「そのことなんだけど、絶対に何かがおかしいと思うわ。もちろん、もしもそんなことがあったら、あなたの望み通りにするわ。けれど、殿下はあなたのことを愛していらっしゃるはずよ。それなのに白紙に戻すだなんて…。きちんと殿下と話してみるべきだと思うわ」
ごほごほ、とお姉様は咳込んだ。
「お姉様と話せてよかったわ。私は明日帰ります。お姉様は良く寝て、早く元気になってね」
私は具合の悪そうなお姉様が休めるよう、早めに部屋を出た。
自分の部屋に戻った私は、お姉様の言葉が気になっていた。
『私があなたの物を奪おうとしたことがあった?無かったわよね。だからイザック殿下を奪うこともないわ』
お姉様の言っていたことは、ざっとまとめるとこうなると思う。
それを言われて頭にチラついているのが、エマの顔だ。
エマは私の妹で、9歳。
エマは私の真似をするのが好きで、先日も私が新しく仕立てたドレスを着てみたいと言って、私よりも先にドレスに袖を通していた。
残念ながらぶかぶかだったのだけれど、エマは満足そうにしていた。
リナから借りた本でも、妹に婚約者を奪われるお話の方が姉に奪われるお話よりも多かったと思う。
…でも、エマはまだ9歳なのだし、さすがにイザックの相手がエマ、ということはないわよね…。
「ねぇ、リナ。例えばなんだけど、大人の男性が9歳の女の子を好きになって結婚したいって思うことってあるかしら?」
リナならば、私よりも広い世界を知っていると思い、リナに意見を求めた。
「たまに、その手の犯罪はありますから、そういう大人もいるんじゃないですか?」
「犯罪!?」
「まともな大人なら、9歳の子が結婚できる年齢になるまで、待つでしょうね」
(!!!!!!!)
イザックは、エマが大人になるまで待とうとしている、ということ?
(大変だわ、急いで帰らなくちゃ)
とは言っても、今はもうすでに夜。
今から出発するわけにはいかない。
私は明日の早朝に出発すると伝えて、今晩は早めに眠ることにした。
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