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証言
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すぐにリナは来てくれた。
(ハッ!私は毎日リナを朝から晩まで働かせている…。そしてリナは笑顔で毎日働いてくれている…。私のやっていることって、本の中の悪辣令嬢がやっていることと大して変わらないんだわ…!!)
気づいてしまい、どんどん心が重くなっていく。
「お嬢様、何か御用があったんですよね?」
呼びつけた私が黙り込んでいるので、リナが声をかけてきた。
「あの、えっと、リナ。リナ様。呼びつけて申し訳ありません。実はお聞きしたいことがあって…」
リナは隣国の王女かもしれないという可能性を考慮し、私は言葉を選んだ。
「何ですか?お嬢様。すっごく気持ち悪いんですけど。何かの遊びですか?…分かりました!また本の影響ですね?」
リナは震える真似をして両腕をさすった。
「まぁ、そんな感じです。実は、もしかしたらリナは高貴な身の上なんじゃないかって思って。あなたには出生の秘密ってあったりする?」
本人は知らされていないかもしれないけれど、とにかく確かめたい。
「出生の秘密ですか?母のお腹にいる時逆子だったとか、それくらいしか知りませんねぇ。それも秘密ではないですし」
リナは斜め上を見るようにして、記憶を思い起こしながら答えてくれた。
「例えばだけど、あなたのお母様が大国の王女だとか、お父様が貴族だってことはある?」
「あら?私ってそういう風に見えます?」
リナは少しうれしそうで、瞳を輝かせている。
「あなたは美人だし、ドレスを着れば貴族に見えると思うわ」
「それは嬉しいですけど、残念ながら父も母も高貴とは無縁の人間ですねぇ」
「その、あなたのお母様にたいして本当に失礼な話だと思うから聞きにくいのだけれど、どうしても気になっているので聞いてしまいます。あなたのお父様って本当のお父様なのかしら?もしかして本当はどこかの貴族があなたのお父様ということはある?」
こんな失礼な質問をするなんて、リナに対して、リナのご両親に対して申し訳ないという気持ちがある。
けれど、どうしても気になった。
申し訳ないという気持ちを抱え答えを待っていると、笑い声が聞こえてきた。
顔を上げると、リナが声を上げて笑っていた。
「残念ながら、それはないですね。そりゃあ私だって、子供の頃は大人になったらお金持ちの親が自分を迎えに来てお姫様のような生活を送る、なんて想像をしたこともあります。でも残念ながら両親とも出身がはっきりしてますし、何より私の顔が父親にそっくりなんですよ。夢は潰えました」
「そうなのね。リナはイザックのことをどう思う?」
どうやら物語とは違うようなので、最終確認をさせてもらうことにした。
「どう、と申されましても…。この国の第二王子だな、と思います」
「もしも、イザックがリナを好きだって言ったらどうする?」
「はいぃいい?何ですか、それは」
想定外の質問だったようで、リナは声を裏返らせた。
「いいから答えて」
「はぁ。まぁ、ありがたい話だとは思いますけれど、身分が違いますし、自分に王子妃が務まるとは全く思いませんね。それにイザック殿下はお嬢様の旦那様になる方ですから、お嬢様と結婚してくださいと申し上げます」
「本当!?本当に私と結婚するようにって言ってくれるの?」
リナの答えは完璧だ。
私が言ってほしいと思っていた通り。
「はぁ、まぁ。それにイザック殿下は美しい方だとは思うのですが、私はもうちょっとこう男らしいと申しますか、がっちりした感じの方の方がタイプと申しますか…」
言いながら、リナの顔はだんだん赤くなっていった。
どうしたのだろうか。
「がっちりか。庭師のヴァンサンみたいな感じ?」
ヴァンサンは背も高くてがっちりしている。
身長はイザックの1.2倍くらいで、横幅は倍くらいあるかもしれない。
筋肉に覆われた見事な体躯をしている。
思い浮かんだ名前を言ってみると、リナの顔は真っ赤になった。
(なるほど。リナはヴァンサンのことが好きなのね)
そう言われてみれば、リナはヴァンサンが薪割りしている姿をよく見ている。
あれは仕事をきちんとしているかチェックしていたわけじゃなくて、うっとり見つめていたのね。
第3容疑者、リナの問題が解決した。
私はリナを帰し、再び本を開いた。
(ハッ!私は毎日リナを朝から晩まで働かせている…。そしてリナは笑顔で毎日働いてくれている…。私のやっていることって、本の中の悪辣令嬢がやっていることと大して変わらないんだわ…!!)
気づいてしまい、どんどん心が重くなっていく。
「お嬢様、何か御用があったんですよね?」
呼びつけた私が黙り込んでいるので、リナが声をかけてきた。
「あの、えっと、リナ。リナ様。呼びつけて申し訳ありません。実はお聞きしたいことがあって…」
リナは隣国の王女かもしれないという可能性を考慮し、私は言葉を選んだ。
「何ですか?お嬢様。すっごく気持ち悪いんですけど。何かの遊びですか?…分かりました!また本の影響ですね?」
リナは震える真似をして両腕をさすった。
「まぁ、そんな感じです。実は、もしかしたらリナは高貴な身の上なんじゃないかって思って。あなたには出生の秘密ってあったりする?」
本人は知らされていないかもしれないけれど、とにかく確かめたい。
「出生の秘密ですか?母のお腹にいる時逆子だったとか、それくらいしか知りませんねぇ。それも秘密ではないですし」
リナは斜め上を見るようにして、記憶を思い起こしながら答えてくれた。
「例えばだけど、あなたのお母様が大国の王女だとか、お父様が貴族だってことはある?」
「あら?私ってそういう風に見えます?」
リナは少しうれしそうで、瞳を輝かせている。
「あなたは美人だし、ドレスを着れば貴族に見えると思うわ」
「それは嬉しいですけど、残念ながら父も母も高貴とは無縁の人間ですねぇ」
「その、あなたのお母様にたいして本当に失礼な話だと思うから聞きにくいのだけれど、どうしても気になっているので聞いてしまいます。あなたのお父様って本当のお父様なのかしら?もしかして本当はどこかの貴族があなたのお父様ということはある?」
こんな失礼な質問をするなんて、リナに対して、リナのご両親に対して申し訳ないという気持ちがある。
けれど、どうしても気になった。
申し訳ないという気持ちを抱え答えを待っていると、笑い声が聞こえてきた。
顔を上げると、リナが声を上げて笑っていた。
「残念ながら、それはないですね。そりゃあ私だって、子供の頃は大人になったらお金持ちの親が自分を迎えに来てお姫様のような生活を送る、なんて想像をしたこともあります。でも残念ながら両親とも出身がはっきりしてますし、何より私の顔が父親にそっくりなんですよ。夢は潰えました」
「そうなのね。リナはイザックのことをどう思う?」
どうやら物語とは違うようなので、最終確認をさせてもらうことにした。
「どう、と申されましても…。この国の第二王子だな、と思います」
「もしも、イザックがリナを好きだって言ったらどうする?」
「はいぃいい?何ですか、それは」
想定外の質問だったようで、リナは声を裏返らせた。
「いいから答えて」
「はぁ。まぁ、ありがたい話だとは思いますけれど、身分が違いますし、自分に王子妃が務まるとは全く思いませんね。それにイザック殿下はお嬢様の旦那様になる方ですから、お嬢様と結婚してくださいと申し上げます」
「本当!?本当に私と結婚するようにって言ってくれるの?」
リナの答えは完璧だ。
私が言ってほしいと思っていた通り。
「はぁ、まぁ。それにイザック殿下は美しい方だとは思うのですが、私はもうちょっとこう男らしいと申しますか、がっちりした感じの方の方がタイプと申しますか…」
言いながら、リナの顔はだんだん赤くなっていった。
どうしたのだろうか。
「がっちりか。庭師のヴァンサンみたいな感じ?」
ヴァンサンは背も高くてがっちりしている。
身長はイザックの1.2倍くらいで、横幅は倍くらいあるかもしれない。
筋肉に覆われた見事な体躯をしている。
思い浮かんだ名前を言ってみると、リナの顔は真っ赤になった。
(なるほど。リナはヴァンサンのことが好きなのね)
そう言われてみれば、リナはヴァンサンが薪割りしている姿をよく見ている。
あれは仕事をきちんとしているかチェックしていたわけじゃなくて、うっとり見つめていたのね。
第3容疑者、リナの問題が解決した。
私はリナを帰し、再び本を開いた。
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