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ラーラ
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決戦の日、当日。
私は朝4時半に起床し、念入りに準備を整えた。
バッグの中には入るだけの宝石を入れた。
何度もラーラとロザリーとの決戦を頭の中で予行演習した。
その過程で、“イザックと結婚すれば私にもらうよりも多くのお金を手に入れられるのに、果たして私からのお金を受け取って別れてくれるだろうか”という疑問が浮かんでしまった。
リナに相談したところ、今すぐもらえるお金は将来もらえるお金よりも価値がある場合がある、と教えてくれた。
2人がそう考えてくれる人であると良いのだけれど…。
全ては会って直接交渉してみないと分からない。
(絶対に別れてもらう!イザックと結婚するのは私よ!)
何度も自分に言い聞かせるけれど、不安な気持ちを拭うことはできない。
緊張で震える足を動かし、私は馬車に乗り込んだ。
王宮に着いた私は、王宮の奥にある王族の居住棟に向かった。
今の所イザックの婚約者である私は、居住棟の中に部屋を賜っているのだ。
そこに向かう、と見せかけてラーラとロザリーを探し話をつけようと思っている。
今の時間イザックは仕事をしているので、こちらにはいない。
ここに居れば会わずに済むはずだ。
(ラーラとロザリーはどこかしら。まずは誰でもいいから侍女か侍従を探して、聞いてみればいいわよね)
きょろきょろと人を探しながら廊下を歩いていると、部屋の中から声が聞こえて、突然扉が開いた。
それは私の目の前の扉だったので、かなり驚いた。
出てきたのは男性で、男性は部屋の中に何か叫び、バタンと扉を力任せに閉めスタスタと歩き去った。
去っていく後姿から、男性が怒っているのが伝わって来た。
私が近くにいることには気づかなかったようだ。
(何があったのかしら?すっごく怒っていたみたいだけど。修羅場?)
立ち止まり考えていると、また扉が開いた。
出てきたのは女性で、侍女の格好をしていた。
その女性は、あの男性がどちらに行ったのか確認するように廊下を左右に見回した。
そして、ばっちり私と目が合った。
女性は泣いていたのか、目が真っ赤になっている。
お互いに気まずく、目が合ったまましばし見つめ合う。
私はどうにか愛想笑いをすることに成功した。
「ラーラとロザリーを探しているのだけれど、知らない?」
人を見つけたら聞こうと思っていた言葉が、とっさに出た。
「ラーラは私ですが…」
なんと、女性はラーラだった。
「まぁ、あなたがラーラ…さん」
ラーラは泣きはらした目をしていてさえ美しかった。
大浴場で聞いたように、イザックともお似合いかもしれない。
「あなた様は、リュシー様ですね?カナルソル侯爵令嬢でいらっしゃる。私にご用があるというのは、もしかして噂に関することでしょうか?」
すでに噂になっていることを、ラーラは知っているようだ。
それならば話が早い。
「ええ、あなたとイザックのことをお話ししたくて」
私が言うと、ラーラは「申し訳ありません」と言って勢いよく頭を下げた。
端から見ると、偉そうな高位貴族(私)が侍女に頭を下げさせている、という状況であまり人に見られたくない。
私はラーラを連れて、先ほどラーラが出てきた部屋に入った。
「えぇと、いったい何に対して謝罪したのかしら?私からイザックを奪ったこと?」
部屋に入り、私はラーラに尋ねてみた。
謝罪する、ということは私に対して悪いと思っているということで、話が通じるかもしれない。
「とんでもありません。私が謝罪したのは、リュシー様に不快な思いをさせてしまったことに対してです。嫌な噂をリュシー様が聞くことになってしまったことに対して謝罪いたしました。私はイザック殿下とほとんどお話ししたことがありません。お付き合いしている、なんて全くのデタラメです」
「あなたではないの?」
それならば、ロザリー?
「もちろん違います。どうしてそんな噂になっているのか…。私も困っているんです。お付き合いしている方に誤解されてしまって。もう、どうしたらいいのか…」
「もしかして、先ほどこの部屋から出て行った男性が、あなたの恋人?」
「はい。先週、結婚しようって言ってくれました。それなのに今週になってこんな噂が広まって。同僚にも腫れ物に触れるように扱われて…。彼に嫌われてしまったら、生きていけません」
ラーラの気持ちはよく分かる。
私はラーラの言葉を信じることにした。
「あなたでないなら、ロザリーね」
「いえ、それも絶対にないと思います。ロザリーと私は親友、と言えると思います。似たような境遇で同い年で、お互いに支え合って王宮で働いています。今、彼女は休暇を取ってお付き合いしている方の田舎に一緒に行っています。2人はお互いに想い合っていて、とても仲良しで、私の理想の恋人像なんです。ですから、イザック殿下とお付き合いしている、なんてことはあり得ません」
ロザリーでもないの?
では噂は全くのデマ?
けれど火のない所に煙は立たぬと言う。
もしかして第3の侍女がいるのだろうか?
けれど今から約束の11時までに第3の侍女を探るのはきっと無理だ。
それにラーラをこのまま放っておけない。
ラーラは私と同じ不安を抱えている。
「ねぇ、ラーラ。あなたの恋人の所に連れて行ってくれない?私が誤解を解いてあなたの話を聞いてくれるように頼んでみるわ」
イザックの婚約者である私が、ラーラはイザックの恋人ではないと言えば、きっと彼もラーラの話を聞いてくれるはずだ。
彼があれだけ怒っていたのも、ラーラを愛しているからだろう。
「よろしいんですか?」
「もちろん」
私はラーラの恋人を呼び出し、話をした。
彼は冷静さを取り戻し、ラーラと話しに行った。
(もうすぐ11時ね)
私はラーラ達が部屋に入っていくのを見守ってから、イザックの執務室に向かった。
私は朝4時半に起床し、念入りに準備を整えた。
バッグの中には入るだけの宝石を入れた。
何度もラーラとロザリーとの決戦を頭の中で予行演習した。
その過程で、“イザックと結婚すれば私にもらうよりも多くのお金を手に入れられるのに、果たして私からのお金を受け取って別れてくれるだろうか”という疑問が浮かんでしまった。
リナに相談したところ、今すぐもらえるお金は将来もらえるお金よりも価値がある場合がある、と教えてくれた。
2人がそう考えてくれる人であると良いのだけれど…。
全ては会って直接交渉してみないと分からない。
(絶対に別れてもらう!イザックと結婚するのは私よ!)
何度も自分に言い聞かせるけれど、不安な気持ちを拭うことはできない。
緊張で震える足を動かし、私は馬車に乗り込んだ。
王宮に着いた私は、王宮の奥にある王族の居住棟に向かった。
今の所イザックの婚約者である私は、居住棟の中に部屋を賜っているのだ。
そこに向かう、と見せかけてラーラとロザリーを探し話をつけようと思っている。
今の時間イザックは仕事をしているので、こちらにはいない。
ここに居れば会わずに済むはずだ。
(ラーラとロザリーはどこかしら。まずは誰でもいいから侍女か侍従を探して、聞いてみればいいわよね)
きょろきょろと人を探しながら廊下を歩いていると、部屋の中から声が聞こえて、突然扉が開いた。
それは私の目の前の扉だったので、かなり驚いた。
出てきたのは男性で、男性は部屋の中に何か叫び、バタンと扉を力任せに閉めスタスタと歩き去った。
去っていく後姿から、男性が怒っているのが伝わって来た。
私が近くにいることには気づかなかったようだ。
(何があったのかしら?すっごく怒っていたみたいだけど。修羅場?)
立ち止まり考えていると、また扉が開いた。
出てきたのは女性で、侍女の格好をしていた。
その女性は、あの男性がどちらに行ったのか確認するように廊下を左右に見回した。
そして、ばっちり私と目が合った。
女性は泣いていたのか、目が真っ赤になっている。
お互いに気まずく、目が合ったまましばし見つめ合う。
私はどうにか愛想笑いをすることに成功した。
「ラーラとロザリーを探しているのだけれど、知らない?」
人を見つけたら聞こうと思っていた言葉が、とっさに出た。
「ラーラは私ですが…」
なんと、女性はラーラだった。
「まぁ、あなたがラーラ…さん」
ラーラは泣きはらした目をしていてさえ美しかった。
大浴場で聞いたように、イザックともお似合いかもしれない。
「あなた様は、リュシー様ですね?カナルソル侯爵令嬢でいらっしゃる。私にご用があるというのは、もしかして噂に関することでしょうか?」
すでに噂になっていることを、ラーラは知っているようだ。
それならば話が早い。
「ええ、あなたとイザックのことをお話ししたくて」
私が言うと、ラーラは「申し訳ありません」と言って勢いよく頭を下げた。
端から見ると、偉そうな高位貴族(私)が侍女に頭を下げさせている、という状況であまり人に見られたくない。
私はラーラを連れて、先ほどラーラが出てきた部屋に入った。
「えぇと、いったい何に対して謝罪したのかしら?私からイザックを奪ったこと?」
部屋に入り、私はラーラに尋ねてみた。
謝罪する、ということは私に対して悪いと思っているということで、話が通じるかもしれない。
「とんでもありません。私が謝罪したのは、リュシー様に不快な思いをさせてしまったことに対してです。嫌な噂をリュシー様が聞くことになってしまったことに対して謝罪いたしました。私はイザック殿下とほとんどお話ししたことがありません。お付き合いしている、なんて全くのデタラメです」
「あなたではないの?」
それならば、ロザリー?
「もちろん違います。どうしてそんな噂になっているのか…。私も困っているんです。お付き合いしている方に誤解されてしまって。もう、どうしたらいいのか…」
「もしかして、先ほどこの部屋から出て行った男性が、あなたの恋人?」
「はい。先週、結婚しようって言ってくれました。それなのに今週になってこんな噂が広まって。同僚にも腫れ物に触れるように扱われて…。彼に嫌われてしまったら、生きていけません」
ラーラの気持ちはよく分かる。
私はラーラの言葉を信じることにした。
「あなたでないなら、ロザリーね」
「いえ、それも絶対にないと思います。ロザリーと私は親友、と言えると思います。似たような境遇で同い年で、お互いに支え合って王宮で働いています。今、彼女は休暇を取ってお付き合いしている方の田舎に一緒に行っています。2人はお互いに想い合っていて、とても仲良しで、私の理想の恋人像なんです。ですから、イザック殿下とお付き合いしている、なんてことはあり得ません」
ロザリーでもないの?
では噂は全くのデマ?
けれど火のない所に煙は立たぬと言う。
もしかして第3の侍女がいるのだろうか?
けれど今から約束の11時までに第3の侍女を探るのはきっと無理だ。
それにラーラをこのまま放っておけない。
ラーラは私と同じ不安を抱えている。
「ねぇ、ラーラ。あなたの恋人の所に連れて行ってくれない?私が誤解を解いてあなたの話を聞いてくれるように頼んでみるわ」
イザックの婚約者である私が、ラーラはイザックの恋人ではないと言えば、きっと彼もラーラの話を聞いてくれるはずだ。
彼があれだけ怒っていたのも、ラーラを愛しているからだろう。
「よろしいんですか?」
「もちろん」
私はラーラの恋人を呼び出し、話をした。
彼は冷静さを取り戻し、ラーラと話しに行った。
(もうすぐ11時ね)
私はラーラ達が部屋に入っていくのを見守ってから、イザックの執務室に向かった。
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