婚約を白紙に戻すそうですが、そんなの認めません!先回りさせていただきます。

国湖奈津

文字の大きさ
20 / 24

ラーラ

しおりを挟む
決戦の日、当日。
私は朝4時半に起床し、念入りに準備を整えた。

バッグの中には入るだけの宝石を入れた。
何度もラーラとロザリーとの決戦を頭の中で予行演習した。

その過程で、“イザックと結婚すれば私にもらうよりも多くのお金を手に入れられるのに、果たして私からのお金を受け取って別れてくれるだろうか”という疑問が浮かんでしまった。

リナに相談したところ、今すぐもらえるお金は将来もらえるお金よりも価値がある場合がある、と教えてくれた。

2人がそう考えてくれる人であると良いのだけれど…。

全ては会って直接交渉してみないと分からない。

(絶対に別れてもらう!イザックと結婚するのは私よ!)

何度も自分に言い聞かせるけれど、不安な気持ちを拭うことはできない。

緊張で震える足を動かし、私は馬車に乗り込んだ。




王宮に着いた私は、王宮の奥にある王族の居住棟に向かった。
今の所イザックの婚約者である私は、居住棟の中に部屋を賜っているのだ。

そこに向かう、と見せかけてラーラとロザリーを探し話をつけようと思っている。

今の時間イザックは仕事をしているので、こちらにはいない。
ここに居れば会わずに済むはずだ。

(ラーラとロザリーはどこかしら。まずは誰でもいいから侍女か侍従を探して、聞いてみればいいわよね)

きょろきょろと人を探しながら廊下を歩いていると、部屋の中から声が聞こえて、突然扉が開いた。

それは私の目の前の扉だったので、かなり驚いた。

出てきたのは男性で、男性は部屋の中に何か叫び、バタンと扉を力任せに閉めスタスタと歩き去った。

去っていく後姿から、男性が怒っているのが伝わって来た。
私が近くにいることには気づかなかったようだ。

(何があったのかしら?すっごく怒っていたみたいだけど。修羅場?)

立ち止まり考えていると、また扉が開いた。

出てきたのは女性で、侍女の格好をしていた。
その女性は、あの男性がどちらに行ったのか確認するように廊下を左右に見回した。

そして、ばっちり私と目が合った。
女性は泣いていたのか、目が真っ赤になっている。

お互いに気まずく、目が合ったまましばし見つめ合う。

私はどうにか愛想笑いをすることに成功した。

「ラーラとロザリーを探しているのだけれど、知らない?」
人を見つけたら聞こうと思っていた言葉が、とっさに出た。

「ラーラは私ですが…」
なんと、女性はラーラだった。

「まぁ、あなたがラーラ…さん」

ラーラは泣きはらした目をしていてさえ美しかった。
大浴場で聞いたように、イザックともお似合いかもしれない。

「あなた様は、リュシー様ですね?カナルソル侯爵令嬢でいらっしゃる。私にご用があるというのは、もしかして噂に関することでしょうか?」

すでに噂になっていることを、ラーラは知っているようだ。
それならば話が早い。

「ええ、あなたとイザックのことをお話ししたくて」

私が言うと、ラーラは「申し訳ありません」と言って勢いよく頭を下げた。

端から見ると、偉そうな高位貴族(私)が侍女に頭を下げさせている、という状況であまり人に見られたくない。

私はラーラを連れて、先ほどラーラが出てきた部屋に入った。

「えぇと、いったい何に対して謝罪したのかしら?私からイザックを奪ったこと?」

部屋に入り、私はラーラに尋ねてみた。

謝罪する、ということは私に対して悪いと思っているということで、話が通じるかもしれない。

「とんでもありません。私が謝罪したのは、リュシー様に不快な思いをさせてしまったことに対してです。嫌な噂をリュシー様が聞くことになってしまったことに対して謝罪いたしました。私はイザック殿下とほとんどお話ししたことがありません。お付き合いしている、なんて全くのデタラメです」

「あなたではないの?」
それならば、ロザリー?

「もちろん違います。どうしてそんな噂になっているのか…。私も困っているんです。お付き合いしている方に誤解されてしまって。もう、どうしたらいいのか…」

「もしかして、先ほどこの部屋から出て行った男性が、あなたの恋人?」

「はい。先週、結婚しようって言ってくれました。それなのに今週になってこんな噂が広まって。同僚にも腫れ物に触れるように扱われて…。彼に嫌われてしまったら、生きていけません」

ラーラの気持ちはよく分かる。
私はラーラの言葉を信じることにした。

「あなたでないなら、ロザリーね」

「いえ、それも絶対にないと思います。ロザリーと私は親友、と言えると思います。似たような境遇で同い年で、お互いに支え合って王宮で働いています。今、彼女は休暇を取ってお付き合いしている方の田舎に一緒に行っています。2人はお互いに想い合っていて、とても仲良しで、私の理想の恋人像なんです。ですから、イザック殿下とお付き合いしている、なんてことはあり得ません」

ロザリーでもないの?
では噂は全くのデマ?

けれど火のない所に煙は立たぬと言う。

もしかして第3の侍女がいるのだろうか?

けれど今から約束の11時までに第3の侍女を探るのはきっと無理だ。
それにラーラをこのまま放っておけない。

ラーラは私と同じ不安を抱えている。

「ねぇ、ラーラ。あなたの恋人の所に連れて行ってくれない?私が誤解を解いてあなたの話を聞いてくれるように頼んでみるわ」

イザックの婚約者である私が、ラーラはイザックの恋人ではないと言えば、きっと彼もラーラの話を聞いてくれるはずだ。

彼があれだけ怒っていたのも、ラーラを愛しているからだろう。

「よろしいんですか?」
「もちろん」

私はラーラの恋人を呼び出し、話をした。
彼は冷静さを取り戻し、ラーラと話しに行った。

(もうすぐ11時ね)

私はラーラ達が部屋に入っていくのを見守ってから、イザックの執務室に向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

頑張らない政略結婚

ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」 結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。 好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。 ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ! 五話完結、毎日更新

「では、ごきげんよう」と去った悪役令嬢は破滅すら置き去りにして

東雲れいな
恋愛
「悪役令嬢」と噂される伯爵令嬢・ローズ。王太子殿下の婚約者候補だというのに、ヒロインから王子を奪おうなんて野心はまるでありません。むしろ彼女は、“わたくしはわたくしらしく”と胸を張り、周囲の冷たい視線にも毅然と立ち向かいます。 破滅を甘受する覚悟すらあった彼女が、誇り高く戦い抜くとき、運命は大きく動きだす。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

処理中です...