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イメージトレーニング
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無事にミラとの入れ替わりを終えた私は屋敷に戻り、その日はとにかく眠った。
(はぁ~、良く寝た)
思う存分寝て起きて、ベッドの中で背伸びをする。
凝り固まった背中を特に伸ばすように。
このふかふかで大きなベッドの素晴らしさを、地下室の狭くて固いベッドで寝たことで初めて理解することができた。
久しぶりにぐっすりと時間を気にすることなく眠ると、かなり身体がすっきりした。
半身を起こしクリアな頭で考えるのは、これからのこと。
イザックの髪は手に入れられなかったものの、相手の侍女の名前が分かった。
ラーラとロザリー。
明後日は久しぶりにイザックに会いに行く日だ。
11時からの約束だけれど、もっと早く家を出て王宮で侍女2人と話をつけてからイザックに会うことにしようか。
そうすれば、イザックの恋の相手と目される候補全てを事前に潰すことができるはずだ。
予行演習をしてみよう。
『よぉ、リュシー。急で悪いが俺たちの婚約はなかったことにしてくれ』
『どうして!?』
『好きな人ができたんだ。その人と結婚する』
『そんな!一体その相手の人って誰なの?私には知る権利があるはずよ。教えて』
『それは…○○だ』
○○に入る名前は、きっとアデル・エマ・リナ・ラーラ・ロザリーのうちの誰かのはず。
『あぁら、残念だったわね。そのお相手の女性はイザックとは結婚しないそうよ。疑うなら相手の女性に確認してみて』
こんな風に計画通りになったら、高笑いしたくなってしまうだろうけれど、それは少し印象が悪いと思うからグッと我慢だ。
なるべく同情したような表情を作って、優しく言ってあげるのがいいと思う。
『なん…だと…』
ここでイザックは絶望して床に膝をつき、相手の女性に確認しに行くかもしれない。
私は心に余裕をもって待っていてあげよう。
そしてイザックが帰って来たら、『どう?私の言ったとおりだったでしょう?諦めて私と結婚なさい』と言ってイザックを優しく迎えてあげるのだ。
私の手のひらの上で転がされていたと知ったら、きっと最初はすねるだろう。
けれど、一緒に暮らして愛を伝えれば いつかきっと私のことを好きになってくれるはず。
時間はかかるかもしれないけれど、辛抱強く待とう。
(すごい!完璧すぎるわ。ここまで長かったけれど、これなら成功間違いなしね)
私は自分の才能が怖くなった。
「お嬢様、起きられました?」
天蓋の中でぐふふと笑いながら明後日の計画を練っていると、リナの声がした。
「起きてるわ」
私はリナに声をかけて、天蓋から出た。
「どうでした?王宮生活は?相手の女性の名前は分かったんですか?」
「生活はすっごくすっごく大変だったのだけど、無事に女性の名前は分かったわ」
私はラーラとロザリーのことを話し、リナに知恵を借りることにした。
「2人は男爵令嬢で、王族の侍女をしているようなの。イザックを諦めてくれるよう2人を説得するには、どう攻めればいいと思う?」
先ほどの予行演習は、ラーラともロザリーとも話をつけたことにして行ったけれど、実際はまだだ。
まずは2人と話をつけなければならない。
リナも我が家で侍女をしてくれている。
侍女ならではの視点から何か気づいていることがあるかもしれない。
「お相手も貴族の方なんですか。イザック殿下がその2人のどちらかと恋仲だとして、別れるように頼むんですよね?それは難しそうですねぇ。私には見当もつきません」
リナの言葉で、急にイザックが見知らぬ女性と口づけしている場面が頭に浮かんでしまった。
今までは具体的に考えたことが無かったけれど、なんだかとても生々しくて胸が重くなる。
『イザックと別れてくれないかしら?』
と私が頼んでも、相手の女性が『嫌です』と言ったらそれで終わりだ。
『お願いだから別れてちょうだい』と私が縋りつき、相手が『放してください』と言って私を突き飛ばす。
『何をするの!?』と立ち上がった私が相手の女性を突き飛ばすと、女性は転び、石に頭をぶつけて血を流し動かなくなった。
私は怖くなって逃げる…。
…って、あら?
これじゃあ殺人事件じゃない!?
推理小説だと、私は実は殺人犯ではない(傷害の犯人)というのがよくあるパターンだと思う。
実は相手の女性は少しして立ち上がるのだけれど、そこに現れた真犯人に再度倒され殺されるのだ。
「どうしましょう!このままじゃ、私は殺人事件の重要参考人になってしまうわ」
そんなことになれば、イザックと結婚することなんて永遠にできなくなる。
「殺人ですか!?落ち着いてください、お嬢様。話して分かってもらうようにすればきっと大丈夫です」
リナは取り乱す私の背中をさすり、落ち着かせてくれた。
「そうよね、話して分かってもらって。突き飛ばされても私は絶対に手を出さないように…」
けれど、相手が絶対に別れないと言った時、それでも考え直してもらうためにはどうしたらいいのだろうか?
(そうだ。あの時 大浴場で…)
私はお風呂場で話していた女性たちの会話を思い出していた。
王子の思い人になったら、一生お金の心配をすることなく暮らせるのでは!?
と言って女性たちは はしゃいでいた。
(お金。そうよ、お金なら…)
働くということは、とっても大変だった。
男爵家に生まれたのに働いているのは、お金のためかもしれない。
もちろん、王宮で働いて箔をつけるのが目的だったり、行儀見習いの一環かもしれないけれど…。
私が自由にできるお金は、毎年の衣装代くらいだ。
今年の分は全て使ってしまった。
けれど宝石はいくつか質のいいものがあるから、それを渡すという手もあると思う。
それにイザックと結婚してからなら、自由にできるお金は増えるはずだ。
だから後で渡すと約束することもできるかも…。
考え抜いた末、ようやく一筋の光明が見えた気がした。
(はぁ~、良く寝た)
思う存分寝て起きて、ベッドの中で背伸びをする。
凝り固まった背中を特に伸ばすように。
このふかふかで大きなベッドの素晴らしさを、地下室の狭くて固いベッドで寝たことで初めて理解することができた。
久しぶりにぐっすりと時間を気にすることなく眠ると、かなり身体がすっきりした。
半身を起こしクリアな頭で考えるのは、これからのこと。
イザックの髪は手に入れられなかったものの、相手の侍女の名前が分かった。
ラーラとロザリー。
明後日は久しぶりにイザックに会いに行く日だ。
11時からの約束だけれど、もっと早く家を出て王宮で侍女2人と話をつけてからイザックに会うことにしようか。
そうすれば、イザックの恋の相手と目される候補全てを事前に潰すことができるはずだ。
予行演習をしてみよう。
『よぉ、リュシー。急で悪いが俺たちの婚約はなかったことにしてくれ』
『どうして!?』
『好きな人ができたんだ。その人と結婚する』
『そんな!一体その相手の人って誰なの?私には知る権利があるはずよ。教えて』
『それは…○○だ』
○○に入る名前は、きっとアデル・エマ・リナ・ラーラ・ロザリーのうちの誰かのはず。
『あぁら、残念だったわね。そのお相手の女性はイザックとは結婚しないそうよ。疑うなら相手の女性に確認してみて』
こんな風に計画通りになったら、高笑いしたくなってしまうだろうけれど、それは少し印象が悪いと思うからグッと我慢だ。
なるべく同情したような表情を作って、優しく言ってあげるのがいいと思う。
『なん…だと…』
ここでイザックは絶望して床に膝をつき、相手の女性に確認しに行くかもしれない。
私は心に余裕をもって待っていてあげよう。
そしてイザックが帰って来たら、『どう?私の言ったとおりだったでしょう?諦めて私と結婚なさい』と言ってイザックを優しく迎えてあげるのだ。
私の手のひらの上で転がされていたと知ったら、きっと最初はすねるだろう。
けれど、一緒に暮らして愛を伝えれば いつかきっと私のことを好きになってくれるはず。
時間はかかるかもしれないけれど、辛抱強く待とう。
(すごい!完璧すぎるわ。ここまで長かったけれど、これなら成功間違いなしね)
私は自分の才能が怖くなった。
「お嬢様、起きられました?」
天蓋の中でぐふふと笑いながら明後日の計画を練っていると、リナの声がした。
「起きてるわ」
私はリナに声をかけて、天蓋から出た。
「どうでした?王宮生活は?相手の女性の名前は分かったんですか?」
「生活はすっごくすっごく大変だったのだけど、無事に女性の名前は分かったわ」
私はラーラとロザリーのことを話し、リナに知恵を借りることにした。
「2人は男爵令嬢で、王族の侍女をしているようなの。イザックを諦めてくれるよう2人を説得するには、どう攻めればいいと思う?」
先ほどの予行演習は、ラーラともロザリーとも話をつけたことにして行ったけれど、実際はまだだ。
まずは2人と話をつけなければならない。
リナも我が家で侍女をしてくれている。
侍女ならではの視点から何か気づいていることがあるかもしれない。
「お相手も貴族の方なんですか。イザック殿下がその2人のどちらかと恋仲だとして、別れるように頼むんですよね?それは難しそうですねぇ。私には見当もつきません」
リナの言葉で、急にイザックが見知らぬ女性と口づけしている場面が頭に浮かんでしまった。
今までは具体的に考えたことが無かったけれど、なんだかとても生々しくて胸が重くなる。
『イザックと別れてくれないかしら?』
と私が頼んでも、相手の女性が『嫌です』と言ったらそれで終わりだ。
『お願いだから別れてちょうだい』と私が縋りつき、相手が『放してください』と言って私を突き飛ばす。
『何をするの!?』と立ち上がった私が相手の女性を突き飛ばすと、女性は転び、石に頭をぶつけて血を流し動かなくなった。
私は怖くなって逃げる…。
…って、あら?
これじゃあ殺人事件じゃない!?
推理小説だと、私は実は殺人犯ではない(傷害の犯人)というのがよくあるパターンだと思う。
実は相手の女性は少しして立ち上がるのだけれど、そこに現れた真犯人に再度倒され殺されるのだ。
「どうしましょう!このままじゃ、私は殺人事件の重要参考人になってしまうわ」
そんなことになれば、イザックと結婚することなんて永遠にできなくなる。
「殺人ですか!?落ち着いてください、お嬢様。話して分かってもらうようにすればきっと大丈夫です」
リナは取り乱す私の背中をさすり、落ち着かせてくれた。
「そうよね、話して分かってもらって。突き飛ばされても私は絶対に手を出さないように…」
けれど、相手が絶対に別れないと言った時、それでも考え直してもらうためにはどうしたらいいのだろうか?
(そうだ。あの時 大浴場で…)
私はお風呂場で話していた女性たちの会話を思い出していた。
王子の思い人になったら、一生お金の心配をすることなく暮らせるのでは!?
と言って女性たちは はしゃいでいた。
(お金。そうよ、お金なら…)
働くということは、とっても大変だった。
男爵家に生まれたのに働いているのは、お金のためかもしれない。
もちろん、王宮で働いて箔をつけるのが目的だったり、行儀見習いの一環かもしれないけれど…。
私が自由にできるお金は、毎年の衣装代くらいだ。
今年の分は全て使ってしまった。
けれど宝石はいくつか質のいいものがあるから、それを渡すという手もあると思う。
それにイザックと結婚してからなら、自由にできるお金は増えるはずだ。
だから後で渡すと約束することもできるかも…。
考え抜いた末、ようやく一筋の光明が見えた気がした。
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