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有力情報と悪評
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それから私は毎日浴場でイザックについてのうわさ話を集めたけれど、これという情報を得られないまま。
ついに今日は王宮での勤務最終日だ。
早朝勤務を終えて食堂に向かう途中、窓の外にイザックの姿を見つけた。
しばし立ち止まり姿を追う。
どこかから帰って来たのか、イザックは側近と外を歩きながら王宮の中に入っていく。
シャツをまくり上げていたし、髪もぬれていたみたいなので、もしかしたら朝稽古の帰りなのかもしれない。
イザックは軍に在籍していて将来的には総帥になる予定だ。
幼い頃から毎朝剣の稽古を欠かさずに行っていると聞いた。
婚約して間もなく、訓練を見学しに行ったことがある。
真剣な眼差しで剣を振るイザックはとても素敵だった。
剣を振るたびキラキラと汗が輝いて、胸がときめいた。
汗はべとべとして気持ち悪いものだと思っていた。
けれどその日から、イザックの汗はとても尊いものになった。
すぐに姿は見えなくなってしまったけれど、久しぶりにイザックを見たことで愛しさが込み上げてきた。
頭に浮かぶのはイザックと過ごした楽しい思い出ばかり。
会えば婚約を白紙に戻したいと言われるのが分かっているのに、会いたくてたまらなくなる。
(会いたいなら、相手の女性を見つけ出し諦めてくれるよう直談判するしかないでしょう?)
自分に言い聞かせ、食堂に向かった。
◇◇◇◇◇◇◇
仕事に追われて働いていると時間が経つのはあっという間だ。
ついに王宮での最後の勤務を終えた。
明日は休日になっているので、そこで外に出てミラと入れ替わることになっている。
このまま何の収穫もなく帰ることになるのだろうか。
諦められない私は、最後の望みをかけて大浴場に向かった。
「イザック殿下に意中の侍女がいるみたいなんですけど、誰だか知っていますか?」
話しやすそうな人を見つけ、いつものように質問してみる。
すると、いつもと違う答えが返って来た。
「あぁ、その話なら、聞いたわ」
「本当ですか?」
初めて、知っているという人物を見つけた。
「もちろん本当よ」
「相手の女性について、何かご存知ですか?」
「正確に誰かは知らないけれど、ラーラさんかロザリーさんじゃないかっていう噂よ」
ラーラとロザリー。
心のメモ帳に名前を刻む。
「なぜその2人なのか、何か目撃情報とかあるんでしょうか?」
証拠や、証人があれば容疑は固まる。
「さぁ。でもあの2人なら殿下ともお似合いの美人だし、あの2人は男爵家の令嬢だから教養もあるしね」
「密会現場を目撃した、なんていう目撃情報なんかは知りませんか?」
「知らないわねぇ」
単なる推測のようだ。
けれど、今までは何も情報がなかったことを考えると、相手の名前まで得られたのはかなりの収穫だ。
「侍女の方たちも、この大浴場を使われるんでしょうか?」
ラーラとロザリーに会って話をしたい。
どこに行けば会えるだろうか。
「やぁだ。あなた何も知らないのね。もしかして新人さん?」
「はい」
「王族の近くに仕える侍女の方たちは、こんなウサギ小屋みたいなところには住まないのよ。あの方たちは王族の居住棟の方にちゃんとしたお部屋があるの。だからここの大浴場も使わないわ」
…ということは、リュシーとして会いに行かないと会えないだろう。
「それにしても、イザック殿下には幻滅したわ。婚約者がいるのに侍女に手を出すなんて」
わわわ。
なんだかイザックの悪評が立っている!?
「でもイザック殿下はお優しい方ですよね」
さりげなくフォローを入れた。
「まぁ、そう言われていたけどねぇ…。もしかしたら、相手の令嬢、確かカナルソル侯爵令嬢だったかしら?その令嬢がとんでもない性悪なのかもしれないわ。それか相手も浮気していてW浮気とか。今流行ってるんでしょう?貴族の間でそういうの」
「そ、そうなんですか?違うと思いますよ」
それだけ言って、私は湯船を出た。
イザックの悪評だけでなく、私の悪評、さらに貴族全体がおかしいと思われてしまっている!?
W浮気が流行る なんて、絶対にそんな世界嫌だ。
部屋に帰ると、パットさんが待っていた。
「リュシー様、ついに明日はお別れですね。今までよく頑張りました」
挨拶に来てくれたようだ。
よく頑張りました、なんて言ってもらえて凄く嬉しい。
パットさんの仕事振りには後輩として憧れていた。
そんな人に褒めてもらえるなんて思っていなかった。
「こちらこそお世話になりました。仕事を増やしてごめんなさい。ミラと無事に入れ替われるよう祈っていてください」
「もちろんです。ところでリュシー様、イザック殿下の噂をついにつかみました」
パットさんは集めた噂を教えてくれた。
パットさんの方からもラーラとロザリーという名前が出た。
「リュシー様、老婆心ながら申し上げます。この噂のせいで、イザック殿下の評判と、なぜかリュシー様の評判が下がっているようです。おそらくイザック殿下に今まで悪評がなかったので、こうなったのは相手の令嬢が悪いのではないか、という者が一定数いるようです。反対に、そうだとしても浮気はよくないとしてイザック殿下にも批判が集まっています。もちろん相手の侍女を批判する者もおります。この噂話をする者は、どういう訳か自分のことのように憤り議論しております。解決を急いだほうがよろしいかと」
パットさんは心配そうに忠告してくれた。
(早く解決しないと、大変なことになっちゃいそうだわ)
寝支度をしながら、私は早期解決を誓った。
ついに今日は王宮での勤務最終日だ。
早朝勤務を終えて食堂に向かう途中、窓の外にイザックの姿を見つけた。
しばし立ち止まり姿を追う。
どこかから帰って来たのか、イザックは側近と外を歩きながら王宮の中に入っていく。
シャツをまくり上げていたし、髪もぬれていたみたいなので、もしかしたら朝稽古の帰りなのかもしれない。
イザックは軍に在籍していて将来的には総帥になる予定だ。
幼い頃から毎朝剣の稽古を欠かさずに行っていると聞いた。
婚約して間もなく、訓練を見学しに行ったことがある。
真剣な眼差しで剣を振るイザックはとても素敵だった。
剣を振るたびキラキラと汗が輝いて、胸がときめいた。
汗はべとべとして気持ち悪いものだと思っていた。
けれどその日から、イザックの汗はとても尊いものになった。
すぐに姿は見えなくなってしまったけれど、久しぶりにイザックを見たことで愛しさが込み上げてきた。
頭に浮かぶのはイザックと過ごした楽しい思い出ばかり。
会えば婚約を白紙に戻したいと言われるのが分かっているのに、会いたくてたまらなくなる。
(会いたいなら、相手の女性を見つけ出し諦めてくれるよう直談判するしかないでしょう?)
自分に言い聞かせ、食堂に向かった。
◇◇◇◇◇◇◇
仕事に追われて働いていると時間が経つのはあっという間だ。
ついに王宮での最後の勤務を終えた。
明日は休日になっているので、そこで外に出てミラと入れ替わることになっている。
このまま何の収穫もなく帰ることになるのだろうか。
諦められない私は、最後の望みをかけて大浴場に向かった。
「イザック殿下に意中の侍女がいるみたいなんですけど、誰だか知っていますか?」
話しやすそうな人を見つけ、いつものように質問してみる。
すると、いつもと違う答えが返って来た。
「あぁ、その話なら、聞いたわ」
「本当ですか?」
初めて、知っているという人物を見つけた。
「もちろん本当よ」
「相手の女性について、何かご存知ですか?」
「正確に誰かは知らないけれど、ラーラさんかロザリーさんじゃないかっていう噂よ」
ラーラとロザリー。
心のメモ帳に名前を刻む。
「なぜその2人なのか、何か目撃情報とかあるんでしょうか?」
証拠や、証人があれば容疑は固まる。
「さぁ。でもあの2人なら殿下ともお似合いの美人だし、あの2人は男爵家の令嬢だから教養もあるしね」
「密会現場を目撃した、なんていう目撃情報なんかは知りませんか?」
「知らないわねぇ」
単なる推測のようだ。
けれど、今までは何も情報がなかったことを考えると、相手の名前まで得られたのはかなりの収穫だ。
「侍女の方たちも、この大浴場を使われるんでしょうか?」
ラーラとロザリーに会って話をしたい。
どこに行けば会えるだろうか。
「やぁだ。あなた何も知らないのね。もしかして新人さん?」
「はい」
「王族の近くに仕える侍女の方たちは、こんなウサギ小屋みたいなところには住まないのよ。あの方たちは王族の居住棟の方にちゃんとしたお部屋があるの。だからここの大浴場も使わないわ」
…ということは、リュシーとして会いに行かないと会えないだろう。
「それにしても、イザック殿下には幻滅したわ。婚約者がいるのに侍女に手を出すなんて」
わわわ。
なんだかイザックの悪評が立っている!?
「でもイザック殿下はお優しい方ですよね」
さりげなくフォローを入れた。
「まぁ、そう言われていたけどねぇ…。もしかしたら、相手の令嬢、確かカナルソル侯爵令嬢だったかしら?その令嬢がとんでもない性悪なのかもしれないわ。それか相手も浮気していてW浮気とか。今流行ってるんでしょう?貴族の間でそういうの」
「そ、そうなんですか?違うと思いますよ」
それだけ言って、私は湯船を出た。
イザックの悪評だけでなく、私の悪評、さらに貴族全体がおかしいと思われてしまっている!?
W浮気が流行る なんて、絶対にそんな世界嫌だ。
部屋に帰ると、パットさんが待っていた。
「リュシー様、ついに明日はお別れですね。今までよく頑張りました」
挨拶に来てくれたようだ。
よく頑張りました、なんて言ってもらえて凄く嬉しい。
パットさんの仕事振りには後輩として憧れていた。
そんな人に褒めてもらえるなんて思っていなかった。
「こちらこそお世話になりました。仕事を増やしてごめんなさい。ミラと無事に入れ替われるよう祈っていてください」
「もちろんです。ところでリュシー様、イザック殿下の噂をついにつかみました」
パットさんは集めた噂を教えてくれた。
パットさんの方からもラーラとロザリーという名前が出た。
「リュシー様、老婆心ながら申し上げます。この噂のせいで、イザック殿下の評判と、なぜかリュシー様の評判が下がっているようです。おそらくイザック殿下に今まで悪評がなかったので、こうなったのは相手の令嬢が悪いのではないか、という者が一定数いるようです。反対に、そうだとしても浮気はよくないとしてイザック殿下にも批判が集まっています。もちろん相手の侍女を批判する者もおります。この噂話をする者は、どういう訳か自分のことのように憤り議論しております。解決を急いだほうがよろしいかと」
パットさんは心配そうに忠告してくれた。
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