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 その後、普通に話しながらも滂沱の涙を流す私を、エリは近くのホテルにあるバーに連れて行った。
 エリの家が経営しているホテルだ。

 個室に案内され、ホットチョコレートワインを飲ませてくれた。

 その間、私は普通に話をしていた。
 つまり、全くしゃくりあげたりせずに。

 それなのに涙は止まらず流れ続けている。
 今まで一度も体験したことのない、非常におかしな状態だった。

 それまで涙が出るときは、涙が出るな、という予感があって、そして出るという感じだった。
 それが今日は全くそういう予感がなく、自動で涙を垂れ流している状態だ。
 一切自分でコントロールできない。

 そこで、エリからここ1週間で調べた結果を報告された。

 私から話を聞いた後、エリは即座に写真と名前を告げて、その人物について調べるように指示を出したという。

 ユリアちゃんの店を預かっているショウさんが、店に出入りしている客であると気づき、素性を調べてくれたらしい。

 そこで、私に告げていた名前が、そもそも偽名であることが判明した。
 店では、ユリアちゃんの太客で、金払いも良いという。

 つまり、最初から私をだます目的で私に近づいたのだった。
 もちろん妹もいなかった。

 エリは、警察に相談した方がいいと言ったけれど、私にその気はなかった。
 早く忘れてしまいたかったし、ただでさえ警察に目を付けられているエリの実家に迷惑をかけることになるかもしれない。

 他に被害にあっている人がいるかもしれない、ということだけが気がかりだった。

 私としては、被害はほぼないといっていいだろう。
 お金も渡していないし何度か食事に行ったくらいで、何もしていない。
 そう、キスすらしていないのだ。

 しいて言えば、25歳の貴重な3か月を詐欺師の相手をして棒に振ったというくらいだ。

 エリは、これまでも初めての私の恋の相談に付き合ってくれていた。
 相手が何もしてこないことに、いつも疑問を抱いていたようだった。

 エリがこれまで付き合ってきた100名を超える彼氏たちは、すぐにエリにキスをしようとしたり体を触ろうとしてきたらしい。
 そのたびにエリは別れて、新しい彼氏を作っていた。
 10代と20代の差かと分析していたけれど、きっと詐欺師と一般人の差だったのだ。

 ホテルのバーで泥酔するのがマナー違反ということは分かっていた。
 でもどうしても酔いたい気分だった。

 普段ほとんどお酒を飲まず、詳しくもなかったので、有名どころのウォッカ、テキーラをボトルで持ってきてもらった。

 エリのおかげでこんなわがままも、すんなり通った。

 どっちでもいいやとグラスに注ごうとすると、エリが大慌てでお猪口みたいな小さなグラスに、ほんの少し注いで渡してきた。

 そんなので酔えるはずがないと思ったけれど、テレビで外国人が飲んでいるように一気にグイッとショットグラスをあおった。
 のどが焼けるような感じがした。

 ……ところまでは覚えている。
 そのあとが全く思い出せなかった。
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