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親子
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「エレノア様、ライバル出現ですね」
今まで気配を消していたリンダが、一歩後ろを歩きながら話しかけてくる。
「なんのこと?」
「またまたぁ。ハロルド様ですよ。若い子におモテになるんですねぇ。今は余裕で構えているかもしれませんが、あと10年後は分かりませんよ?」
「別に」
「まぁ、今となってはエレノア様は公爵令嬢、ハロルド様はしがない庶民と身分違いになってしまいましたから諦めなくてはいけませんもんね。泣いてもいいんですよ」
リンダの言葉は続いている。
私はリンダを軽くにらみ、校長室に入っていった。
リリー先生は書き物をしていたけれど、私たちが入ると顔を上げた。
「まぁ、エレノア様、リンダ、おひさしぶりです。どうぞおかけください」
導かれるまま椅子に座ると、リリー先生は私の対面に座った。
「本当にお久しぶりですねぇ。どうですか?貴族の生活は」
「どうにかやっています。リリー先生に教わった”沈黙は美徳”作戦が今の所上手くいっていると思います」
"沈黙は美徳"作戦とは、なるべく話さない作戦だ。
話しかけられたら、「そうですわね」「素敵ですわ」などと笑顔で相槌をうち、こちらからは話さないのがポイント。
「それは良かったです。そうだわ、お茶を淹れますね。庶民的な茶葉しかないのですが」
「16まで庶民だったのですもの、気にしません」
「ストラット家を庶民とは言いませんよ」
リリー先生は微笑むと、お茶の用意をして戻ってきた。
「今日は、どうなさいました?」
「バーバラ・ストナン伯爵令嬢について知っていることがあれば教えて頂きたいと思って参りました」
私は単刀直入に話を切り出し、リリー先生を見つめる。
しばし沈黙が落ちた。
「リリー先生の娘だという噂を聞いたのですが…」
意を決して私が言うと、リリー先生は視線を落とした。
「ご存知でしたか。確かに私が産んだ娘のはずです。当時、私はストナン伯爵家で幼い令嬢の家庭教師をしておりました。そこで嫡男のロジャー様に見初められて…」
「ロジャー様と言うのは、現・ストナン伯爵ですね?」
「はい。結ばれないと分かっていながらも、私たちは恋をし、バーバラを授かりました。でも由緒正しいストナン家に実家を失った元男爵令嬢などふさわしくありません。ロジャー様はお腹の大きくなった私を別荘にかくまいました。私はバーバラを出産し、束の間親子3人で過ごしました。しかしすぐに伯爵に見つかってしまい、私はストナン家を追い出されました。街でさまよっていた私を拾ってくださったのが、ポール様です」
「父が?」
「はい。ポール様は私に住む場所や仕事を与えて下さり、今の私があります」
「そうだったんですね。その後、バーバラやストナン伯爵とは?」
私が尋ねると、リリー先生は首を横に振った。
「元々身分違いだと、身を引かなければならないと分かっていました。でも私の心が弱く…。別れてから一度も会っていません。あの、なぜ急に?バーバラの身に何かあったのですか?」
リリー先生は不安そうに私を見ている。
バーバラのことを心配しているのだろう。
「いいえ。たまたま夜会でお話しする機会があって、それで。リンダに話したら、バーバラはリリー先生の娘ではないかと言うものですから…。リリー先生にも会いたかったし訪ねてきました」
「リンダに…。そうですか。あのころアマンダさんにはお世話になりました」
「あ、その、アマンダもリンダも悪くないんです。私が無理やり リリー先生の過去を2人から聞き出しました」
あずかり知らぬところで他人に過去のことを知られるなど不快なはずだ。
リンダたちが悪く思われないようにしないと。
「いいんです。アマンダさんやエレノア様が私の過去の話をむやみに言いふらす方たちではないと分かっています」
「つらい過去の話をさせてしまってごめんなさい」
私はリリー先生に頭を下げた。
「まぁ、エレノア様。頭をお上げください。過去のことですから、お気になさらず。どうか、バーバラと仲良くしてあげてください」
リリー先生は母親の顔をしていた。
「もちろん」
私は微笑んだ。
今まで気配を消していたリンダが、一歩後ろを歩きながら話しかけてくる。
「なんのこと?」
「またまたぁ。ハロルド様ですよ。若い子におモテになるんですねぇ。今は余裕で構えているかもしれませんが、あと10年後は分かりませんよ?」
「別に」
「まぁ、今となってはエレノア様は公爵令嬢、ハロルド様はしがない庶民と身分違いになってしまいましたから諦めなくてはいけませんもんね。泣いてもいいんですよ」
リンダの言葉は続いている。
私はリンダを軽くにらみ、校長室に入っていった。
リリー先生は書き物をしていたけれど、私たちが入ると顔を上げた。
「まぁ、エレノア様、リンダ、おひさしぶりです。どうぞおかけください」
導かれるまま椅子に座ると、リリー先生は私の対面に座った。
「本当にお久しぶりですねぇ。どうですか?貴族の生活は」
「どうにかやっています。リリー先生に教わった”沈黙は美徳”作戦が今の所上手くいっていると思います」
"沈黙は美徳"作戦とは、なるべく話さない作戦だ。
話しかけられたら、「そうですわね」「素敵ですわ」などと笑顔で相槌をうち、こちらからは話さないのがポイント。
「それは良かったです。そうだわ、お茶を淹れますね。庶民的な茶葉しかないのですが」
「16まで庶民だったのですもの、気にしません」
「ストラット家を庶民とは言いませんよ」
リリー先生は微笑むと、お茶の用意をして戻ってきた。
「今日は、どうなさいました?」
「バーバラ・ストナン伯爵令嬢について知っていることがあれば教えて頂きたいと思って参りました」
私は単刀直入に話を切り出し、リリー先生を見つめる。
しばし沈黙が落ちた。
「リリー先生の娘だという噂を聞いたのですが…」
意を決して私が言うと、リリー先生は視線を落とした。
「ご存知でしたか。確かに私が産んだ娘のはずです。当時、私はストナン伯爵家で幼い令嬢の家庭教師をしておりました。そこで嫡男のロジャー様に見初められて…」
「ロジャー様と言うのは、現・ストナン伯爵ですね?」
「はい。結ばれないと分かっていながらも、私たちは恋をし、バーバラを授かりました。でも由緒正しいストナン家に実家を失った元男爵令嬢などふさわしくありません。ロジャー様はお腹の大きくなった私を別荘にかくまいました。私はバーバラを出産し、束の間親子3人で過ごしました。しかしすぐに伯爵に見つかってしまい、私はストナン家を追い出されました。街でさまよっていた私を拾ってくださったのが、ポール様です」
「父が?」
「はい。ポール様は私に住む場所や仕事を与えて下さり、今の私があります」
「そうだったんですね。その後、バーバラやストナン伯爵とは?」
私が尋ねると、リリー先生は首を横に振った。
「元々身分違いだと、身を引かなければならないと分かっていました。でも私の心が弱く…。別れてから一度も会っていません。あの、なぜ急に?バーバラの身に何かあったのですか?」
リリー先生は不安そうに私を見ている。
バーバラのことを心配しているのだろう。
「いいえ。たまたま夜会でお話しする機会があって、それで。リンダに話したら、バーバラはリリー先生の娘ではないかと言うものですから…。リリー先生にも会いたかったし訪ねてきました」
「リンダに…。そうですか。あのころアマンダさんにはお世話になりました」
「あ、その、アマンダもリンダも悪くないんです。私が無理やり リリー先生の過去を2人から聞き出しました」
あずかり知らぬところで他人に過去のことを知られるなど不快なはずだ。
リンダたちが悪く思われないようにしないと。
「いいんです。アマンダさんやエレノア様が私の過去の話をむやみに言いふらす方たちではないと分かっています」
「つらい過去の話をさせてしまってごめんなさい」
私はリリー先生に頭を下げた。
「まぁ、エレノア様。頭をお上げください。過去のことですから、お気になさらず。どうか、バーバラと仲良くしてあげてください」
リリー先生は母親の顔をしていた。
「もちろん」
私は微笑んだ。
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