新米公爵令嬢の日常

国湖奈津

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翌日の昼食後、公爵家の所有する中では、比較的簡素な馬車に乗って屋敷を出た。


少し走ると御者であるレオンから、後をつけている者がいると報告が入った。
レオンは万が一のためにと選ばれた腕の立つ御者だ。

やはり私が目的だったらしい。
車内に緊張が走る。
この緊張感は久しぶりで、気分が高揚してくる。

「予定通りお願い」
リンダは計画していた通り、レオンに伝えた。

「エレノア様、相手の正体が分かりません。エレノア様は公爵令嬢らしくしていらしてください。腕の立つことは悟られぬように。相手が油断したところを仕留めましょう」

リンダは対面に座る私に、緊張した面持ちで伝えた。

「分かったわ。か弱いふりね」


馬車は街を外れ山道に入っていく。
この山道は国の南方につながる旧街道だが、使い勝手のいい街道が新しく整備されたため今はほとんど使われていない。

山道に入りしばらくすると、 ドドドッ ドドドッ という複数の馬の足音が近づいてきた。
馬のいななきが聞こえ、馬車が激しく揺れ止まった。

付けてきていた男たちが回り込み馬車を止めたのだろう。

はっきりとは聞こえないが、レオンが男たちと話している様子が伝わってくる。

(どうなっているのかしら)
小窓にかかったカーテンに指で隙間を作り、外の様子を伺った。
すぐ近くに男の後頭部があった。

『いるわ』
私は指で小窓を示し、リンダに伝えた。
2人で目を合わせ、来るべき時に備え心構えを作る。

馬車の扉がこじ開けられ、顔を布で覆った男がぬっと馬車の中に体を入れた。
おびえたふりでリンダと抱き合い震えながら、男の出方をうかがう。

手際の良さ、身のこなしはどうか、殺すつもりがあるのかないのか。
リンダも私も『殺すつもりはないようだし、事前情報通り相手は小物』と判断した。

「無礼者!お嬢様には指一本触れさせない」
リンダは普通の侍女なら言うだろう言葉を男に向かって叫んだ。

「おとなしくしてれば、すぐ終わるからよ。いい子にしててくれ」
賊はくぐもった声で話している。

「まずは馬車から降りてもらう。大声を出したり噛みついたりして手元が狂うといけねえからよ、静かにしててくれな」

私たちは抵抗せず、賊に従うことにした。

男たちの中で一番身軽そうな男が馬車の中に入ってきた。
手首を縄で拘束されて、馬車から連れ出される。

視界の隅に、木に縛り付けられたレオンの姿が見えた。

賊の中のリーダーと思われる男が、私たちに近づいてくる。

賊は男5人。皆顔を隠している。

「一体何が目的なの?」
リンダは私を背後にかばうようにしながら、リーダーの男を見つめた。

「顔に一生残る傷をつけてほしいと、さるお方に頼まれてな。お前たちに恨みはないが頼まれたからには仕方がない。ちょっとナイフで顔を傷つけさせてもらうだけだ。おとなしくしていてくれればすぐに済む。暴れると手先が狂ってどうなるか俺にも分からねぇ」

男は握ったナイフをチラつかせ、脅してくる。

「命を取る気はないのね?」
リンダはリーダーの男に確認した。

「あぁ、今のところはな」

男の答えを確認し、リンダは口笛を吹いた。

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