新米公爵令嬢の日常

国湖奈津

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尋問

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リンダと共にリリー先生の執務室を出ると、応接室になっている隣室で私の兄ピーターとその側近ハロルドが待っていた。

「リリー先生、忙しいのね。ごめんなさい、時間を気にしてなかったわ」

待っている人がいるとは思わず、長居してしまった自覚がある。

もうすぐ卒業の季節なので、ピーターは子供たちの配属を決めるため各校と打ち合わせを繰り返しているのだろう。

兄の仕事を邪魔しないように、すぐに帰ろうと2人の脇を通り抜けた。

「エレノア、待ちなさい」
応接室から出ようとすると、ハロルドの鋭い声が飛んできて私は立ち止まった。

声の様子からハロルドが怒っているのは明白だ。
何について怒られるのか、心当たりを探しながらおっかなびっくり振り返る。

「あまりいじめるなよ。俺はリリー先生と打ち合わせしてくるから」
ピーターはハロルドに声をかけると、リリー先生のの執務室に入っていった。

「座りなさい」

ハロルドに命じられ、恐る恐るハロルドの対面に座った。
私から少し離れてリンダが立ったまま控えている。

「どうしました?それは」
ハロルドの視線は私の膝のあたりに注がれている。

ハロルドの視線を追いかけて自分の服装を確かめるように つま先の方まで体を乗り出し確認してみたけれど、特に変わったところはない。

私は首を傾げた。

「裾が切れています」

言われてもう1度スカートの裾を確認してみると、スカートの裾にあしらわれた襞が切れていた。
切れていると言われてようやく気付くような、小さなほころびだ。

スカートとしての機能は全く損なわれていない。

気づかず着ていた私がおかしいのではなく、気づいたハロルドの観察力が異常なのだと思う。

おそらくここへ来る途中襲われた時に、何かの拍子で切れたのだろう。

(怖い声出すからビビっちゃったじゃない。裾が切れてるなら普通に指摘してくれればいいのに。怒ってるのかと思っちゃったわ)

「気づかなかったわ。屋敷に帰ったら直してもらうわね。ありがとう」

私は席を立ち、帰ろうとした。

「話は終わっていません。座りなさい」

やはりハロルドは怒っているようだ。
これ以上怒りの火に油を注がないよう、私はおとなしく座りなおした。

「なぜそんなところが切れるのですか?見たところ真新しいように見えます」

尋問されている、という表現が一番しっくりくる。
ハロルドの鋭い視線が、嘘を許さないとばかりに私に注がれている。

「どこかに引っ掛けたのかもしれないわね。次からは注意して歩くことにするわ」
私は笑ってごまかすことに決め、固い笑顔をハロルドに向けた。

「発言してもよろしいでしょうか」
控えていたリンダが発言許可を求めて一歩前に出た。

「許す」

ハロルドは怒りのオーラを発し、場を制していた。

「エレノア様はここへ来る途中、賊に襲われました。しかも襲われるのを分かっているのに出かけたいと言い出し、私がいくら止めても無駄でした。昨日は鼻歌を歌いながらナイフを用意していました」

(リンダ、何言ってくれちゃってるのよ!?誤魔化そうとしているのに、そんなことを言ったらすべてが水の泡じゃない!)

私は慌ててリンダの方を向き、口に人差し指を当て目配せした。

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