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セルマ
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約束の日、私は爽やかなレモンイエローのデイドレス姿で公園に向かった。
セルマは先に到着していたようで、私に合図を送ってくれた。
この公園は貴族の昼の社交場になっている。
ここで昼の社交を楽しみ、夜は夜で夜会に向かうのだ。
中央に大噴水を配し、シンメトリーに整えられた公園には多くの人が集まっている。
木陰で本を読む紳士、私たちのようにピクニックを楽しむ集団、連れ立って歩く男女の姿。
「エレノア、どう?最近ケネス様の様子は?」
セルマは雰囲気の良い木陰にピクニックセットを用意し待っていた。
「私を誘ったのは、ケネスの情報が目的?」
「そんなこと、なくもない…かな?でもエレノアと話したかったのも本当」
セルマは、ハートマン侯爵家の4女で社交的な性格。
社交界の事情にも通じている。
今季初めて社交界デビューした私は、デビューの日、遠巻きからひそひそと噂される時間に耐えていた。
それは決して居心地の良いものではなく、うんざりしていたところに話しかけてきたのが、セルマだった。
セルマの目的はケネスだとすぐに気づいたけれど、悪い気はしなかった。
セルマは私に家族だけが知っているケネスの情報をねだり、私は知っていることを教えた。
普通、貴族は家の内情を軽々しく教えないそうだ。
けれどそんなことを知らなかった私は、ケネスについて知っていること(ほとんど悪口だ)を話した。
セルマは何でも話す私のことを気に入ったらしく、それ以来 少人数のお茶会やピクニックに誘ってくる。
セルマは私の陰口を言うような令嬢たちとは群れないし、気遣いもしてくれる。
セルマの誘いには積極的に乗るようにしていた。
「今日はストナン伯爵家のバーバラ様も誘ったのだけど、良かった?」
「お友達ができたの?あなたがいいなら私は大歓迎」
セルマは私に友達ができたことを意外だと言いながらも祝福してくれた。
「エレノア、私の視線の先の木陰に4人連れがいるでしょう?女性が3人と男性が1人」
「ええ」
「あちらは、コールソン伯爵家のご家族なんだけど、あの男性というか、男の子、あの方はチェックしておいた方がいいわ。お名前はラインハルト様。まだデビューしてないけれど、見目麗しい若手の注目株として期待されてるの。コールソン伯爵の領地は南方の暖かい地域にあって、おいしい果物が採れるのよ。港もあって貿易も盛んに行っている豊かなお家だから将来性も抜群。来年か再来年にはデビューするでしょうから出遅れないようにね」
“出遅れないように”と人には言うけれど、セルマが特定の男性と一緒にいるところは見たことがなかった。
(セルマって不思議よね。イケメン男子が好きみたいだけど近づかずに遠くで見て情報収集しているだけみたいだし)
セルマは社交界の情報を色々と教えてくれる。
多くの場合、今のように注目株のイケメン男子を教えてくれていた。
貴族が当たり前のように行っていることに、顔と名前・家柄・領地を一致させるというものがある。
私も貴族の名前と領地、どんな子女がいるかを貴族年鑑を手に覚えようと日々奮闘しているのだが、字面を眺めていてもなかなか覚えられなかった。
その点、セルマにちょっとした小話を交えて教えられた方が、記憶に残って勉強になる。
「あちらの方は、どなた?」
ひときわ衆目を集め園内を歩いている男女を、私はさりげなく示した。
「あれはバークラ伯爵未亡人とブロディンガー子爵よ」
話の続きを待っていたけれど、セルマの説明はひと言で終わったようだ。
「それだけ?」
「それだけって?」
「いつもは、領地はどことか、誰と婚約してるとかいろいろ話が続くじゃない?」
「そんなことないけど…。ブロディンガー子爵は有名な遊び人だから、泣きたくないなら近づかない方がいいわ。もっとも相手にするのは妖艶な年上の美女が多いから…」
セルマの視線が私の体に向かう。
「ちょっと、今私の胸を見たでしょ、どういう意味よ?」
少し怖い顔を作り、セルマをにらみつけてやる。
「あなたは年下だから、安心して大丈夫よ」
セルマは言葉を選び、愛想笑いをした。
セルマは先に到着していたようで、私に合図を送ってくれた。
この公園は貴族の昼の社交場になっている。
ここで昼の社交を楽しみ、夜は夜で夜会に向かうのだ。
中央に大噴水を配し、シンメトリーに整えられた公園には多くの人が集まっている。
木陰で本を読む紳士、私たちのようにピクニックを楽しむ集団、連れ立って歩く男女の姿。
「エレノア、どう?最近ケネス様の様子は?」
セルマは雰囲気の良い木陰にピクニックセットを用意し待っていた。
「私を誘ったのは、ケネスの情報が目的?」
「そんなこと、なくもない…かな?でもエレノアと話したかったのも本当」
セルマは、ハートマン侯爵家の4女で社交的な性格。
社交界の事情にも通じている。
今季初めて社交界デビューした私は、デビューの日、遠巻きからひそひそと噂される時間に耐えていた。
それは決して居心地の良いものではなく、うんざりしていたところに話しかけてきたのが、セルマだった。
セルマの目的はケネスだとすぐに気づいたけれど、悪い気はしなかった。
セルマは私に家族だけが知っているケネスの情報をねだり、私は知っていることを教えた。
普通、貴族は家の内情を軽々しく教えないそうだ。
けれどそんなことを知らなかった私は、ケネスについて知っていること(ほとんど悪口だ)を話した。
セルマは何でも話す私のことを気に入ったらしく、それ以来 少人数のお茶会やピクニックに誘ってくる。
セルマは私の陰口を言うような令嬢たちとは群れないし、気遣いもしてくれる。
セルマの誘いには積極的に乗るようにしていた。
「今日はストナン伯爵家のバーバラ様も誘ったのだけど、良かった?」
「お友達ができたの?あなたがいいなら私は大歓迎」
セルマは私に友達ができたことを意外だと言いながらも祝福してくれた。
「エレノア、私の視線の先の木陰に4人連れがいるでしょう?女性が3人と男性が1人」
「ええ」
「あちらは、コールソン伯爵家のご家族なんだけど、あの男性というか、男の子、あの方はチェックしておいた方がいいわ。お名前はラインハルト様。まだデビューしてないけれど、見目麗しい若手の注目株として期待されてるの。コールソン伯爵の領地は南方の暖かい地域にあって、おいしい果物が採れるのよ。港もあって貿易も盛んに行っている豊かなお家だから将来性も抜群。来年か再来年にはデビューするでしょうから出遅れないようにね」
“出遅れないように”と人には言うけれど、セルマが特定の男性と一緒にいるところは見たことがなかった。
(セルマって不思議よね。イケメン男子が好きみたいだけど近づかずに遠くで見て情報収集しているだけみたいだし)
セルマは社交界の情報を色々と教えてくれる。
多くの場合、今のように注目株のイケメン男子を教えてくれていた。
貴族が当たり前のように行っていることに、顔と名前・家柄・領地を一致させるというものがある。
私も貴族の名前と領地、どんな子女がいるかを貴族年鑑を手に覚えようと日々奮闘しているのだが、字面を眺めていてもなかなか覚えられなかった。
その点、セルマにちょっとした小話を交えて教えられた方が、記憶に残って勉強になる。
「あちらの方は、どなた?」
ひときわ衆目を集め園内を歩いている男女を、私はさりげなく示した。
「あれはバークラ伯爵未亡人とブロディンガー子爵よ」
話の続きを待っていたけれど、セルマの説明はひと言で終わったようだ。
「それだけ?」
「それだけって?」
「いつもは、領地はどことか、誰と婚約してるとかいろいろ話が続くじゃない?」
「そんなことないけど…。ブロディンガー子爵は有名な遊び人だから、泣きたくないなら近づかない方がいいわ。もっとも相手にするのは妖艶な年上の美女が多いから…」
セルマの視線が私の体に向かう。
「ちょっと、今私の胸を見たでしょ、どういう意味よ?」
少し怖い顔を作り、セルマをにらみつけてやる。
「あなたは年下だから、安心して大丈夫よ」
セルマは言葉を選び、愛想笑いをした。
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