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抱き枕
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(?????え???????)
思考が停止し、私の身体はされるがままになった。
気が付いた時には、私はベッドの中で抱き枕のようにされていた。
ハロルドの手は私の背中から腰に回され、足も絡められている。
ベッドの中で抱きつかれてような格好だ。
(看病、万歳)
こんなにいいことばかり起こって、大丈夫なのだろうか?
帳尻を合わせるために、近々殺されるのではないかと不安がよぎる。
(殺されてもいい、今を思いっきり楽しみましょう)
私はハロルドの胸に頬をすり寄せた。
心臓の鼓動が聞こえる。
うっとりと目を閉じると人肌の温かさも相まって眠気が襲ってくる…。
(…って、さすがにこのまま寝てしまうのはダメよ。もったいない!…じゃなくて、ハロルドはこれから高熱が出るのだから、やっぱり誰か呼んだ方が…。…あれ?ちょっと待って。高熱が出る前って寒くて体がガクガク震えて、鳥肌が立って…)
ハロルドが震えている感じは全くしない。
鳥肌はどうだろうか?
私は体をくるりと回した。
すると、ちょうど背中から抱きしめられているような格好になった。
ハロルドのシャツの袖をまくり上げ、腕に直に触れてみたけれど、鳥肌が立っている様子はなかった。
「ねぇ、ハロルド。寒いって言ったのは嘘よね?」
私の勘が確かなら、ハロルドは起きていると思う。
「どうして分かりました?」
耳元で気だるげな声が聞こえる。
なぜか背筋にぞくぞくとした震えが走る。
「寒いのが熱が上がるサインなら、体の震えや鳥肌が出るはず。それなのにあなたはまるで震えていない。鳥肌も立っていない」
私は名探偵のように指摘した。
「あぁ、そうでしたか。高熱など10年以上出していないから、そんなことには思い至りませんでした」
「どうして嘘をついたの?本気で心配していたのに。もしも心配する私をからかって面白がっていたなら、悪趣味だわ」
断固抗議する。
本気で心配していたのだ。
…ちょっと、いやかなり この状況を楽しんでしまっていたけれど…。
「こっちを向いてください」
言われて、私はまたハロルドの腕の中でくるりと回り、向かい合った。
「うっすらとクマが出来ていますよ、疲れがたまっているんです」
ハロルドは私の下瞼に親指で触れた。
「私が疲れているから寝かせようとした、ということ?」
確かに疲れている自覚はある。
特に最近は上達速度が鈍って来た自分にいら立って、睡眠時間を削ってピアノに向かっていた。
「私も疲れています。知っていますか?1人で寝るよりも2人で寝たほうがよく眠れるんですよ」
それはそうかもしれない。
まだ夜も早い時間なのに、さきほどから少し気を抜くと眠ってしまいそうになっている。
「ねぇ、1つだけ教えて。あなたが怪我をすると悲しむ人って誰なの?もしかして恋人がいるの?」
ずっとずっと聞けずに気になっていた。
今を逃したら、もう一生聞くことはできない気がした。
もしも肯定の答えが返って来たら、すぐにベッドから出るつもりだ。
「恋人?そんなものはいませんよ。私が大切に思うのはあなただけです。私が怪我をすると悲しむ人ですか…。そうですね、近くで働いている人たちやお世話になっている人たち、もっと多くの存在、概念。そういった人でしょうか?以前より増えた気がします」
「…ふぅん」
ハロルドが説明しようとしているのは伝わるけれど、内容が曖昧過ぎて全く伝わってこなかった。
けれどハロルドが私を大切に思うと言ってくれたのは、すごくうれしかった。
どういう意味で大切なのか、妹や家族のような存在としてなのか、もっと特別に思ってくれているのかはわからない。
聞く勇気もまだない。
だけど、今はまだそれでいいと思った。
私は目を閉じた。
思考が停止し、私の身体はされるがままになった。
気が付いた時には、私はベッドの中で抱き枕のようにされていた。
ハロルドの手は私の背中から腰に回され、足も絡められている。
ベッドの中で抱きつかれてような格好だ。
(看病、万歳)
こんなにいいことばかり起こって、大丈夫なのだろうか?
帳尻を合わせるために、近々殺されるのではないかと不安がよぎる。
(殺されてもいい、今を思いっきり楽しみましょう)
私はハロルドの胸に頬をすり寄せた。
心臓の鼓動が聞こえる。
うっとりと目を閉じると人肌の温かさも相まって眠気が襲ってくる…。
(…って、さすがにこのまま寝てしまうのはダメよ。もったいない!…じゃなくて、ハロルドはこれから高熱が出るのだから、やっぱり誰か呼んだ方が…。…あれ?ちょっと待って。高熱が出る前って寒くて体がガクガク震えて、鳥肌が立って…)
ハロルドが震えている感じは全くしない。
鳥肌はどうだろうか?
私は体をくるりと回した。
すると、ちょうど背中から抱きしめられているような格好になった。
ハロルドのシャツの袖をまくり上げ、腕に直に触れてみたけれど、鳥肌が立っている様子はなかった。
「ねぇ、ハロルド。寒いって言ったのは嘘よね?」
私の勘が確かなら、ハロルドは起きていると思う。
「どうして分かりました?」
耳元で気だるげな声が聞こえる。
なぜか背筋にぞくぞくとした震えが走る。
「寒いのが熱が上がるサインなら、体の震えや鳥肌が出るはず。それなのにあなたはまるで震えていない。鳥肌も立っていない」
私は名探偵のように指摘した。
「あぁ、そうでしたか。高熱など10年以上出していないから、そんなことには思い至りませんでした」
「どうして嘘をついたの?本気で心配していたのに。もしも心配する私をからかって面白がっていたなら、悪趣味だわ」
断固抗議する。
本気で心配していたのだ。
…ちょっと、いやかなり この状況を楽しんでしまっていたけれど…。
「こっちを向いてください」
言われて、私はまたハロルドの腕の中でくるりと回り、向かい合った。
「うっすらとクマが出来ていますよ、疲れがたまっているんです」
ハロルドは私の下瞼に親指で触れた。
「私が疲れているから寝かせようとした、ということ?」
確かに疲れている自覚はある。
特に最近は上達速度が鈍って来た自分にいら立って、睡眠時間を削ってピアノに向かっていた。
「私も疲れています。知っていますか?1人で寝るよりも2人で寝たほうがよく眠れるんですよ」
それはそうかもしれない。
まだ夜も早い時間なのに、さきほどから少し気を抜くと眠ってしまいそうになっている。
「ねぇ、1つだけ教えて。あなたが怪我をすると悲しむ人って誰なの?もしかして恋人がいるの?」
ずっとずっと聞けずに気になっていた。
今を逃したら、もう一生聞くことはできない気がした。
もしも肯定の答えが返って来たら、すぐにベッドから出るつもりだ。
「恋人?そんなものはいませんよ。私が大切に思うのはあなただけです。私が怪我をすると悲しむ人ですか…。そうですね、近くで働いている人たちやお世話になっている人たち、もっと多くの存在、概念。そういった人でしょうか?以前より増えた気がします」
「…ふぅん」
ハロルドが説明しようとしているのは伝わるけれど、内容が曖昧過ぎて全く伝わってこなかった。
けれどハロルドが私を大切に思うと言ってくれたのは、すごくうれしかった。
どういう意味で大切なのか、妹や家族のような存在としてなのか、もっと特別に思ってくれているのかはわからない。
聞く勇気もまだない。
だけど、今はまだそれでいいと思った。
私は目を閉じた。
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